FRB高官のタカ派的な発言から長期金利が上昇

2022/01/17 6:40 JST投稿
 
 

【今週の見通し】(1月17日-1月21日)

先週は米連邦準備制度理事会(FRB)高官による3月の利上げ開始や夏ごろに保有資産の縮小を開始に関する発言が相次ぎ、左右された。今週から、1月25、26日の連邦公開市場委員会(FOMC)を控え発言が規制される「ブラックアウト」期間に入るため、経済指標やコロナウイルス、ウクライナ問題の行方を見ながら、方向性が定まる見込みだ。おそらく、様子見の姿勢が強く、上がりづらい状況となるだろう。
 
一方、日銀は1月17、18日に金融政策決定会合を開催するが、先週、金曜日に物価目標2%達成前に利上げが可能か否かを議論しているとの報道が出ており、行方を注視したい。
 
予想レートは米ドル・円が113円前半から114円後半。ユーロ・米ドルが1.13ドル前半から1.14ドル後半。
 
 

【米国】

  • 為替(1月17日6時00分)

 米ドル円(USDJPY)    114.14-114.22 (円)
 ユーロ円(EURJPY)    130.33-130.37 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 1.1414-1.1415 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY)    156.09-156.27 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.3670-1.3680 (米ドル)
 
1月14日のニューヨーク外国為替市場の主なトピックスは、12月米小売売上高の前月比(結果:-1.9%、予想:0.0%、前回:0.3%)が予想を大幅に下回った。通常12月はクリスマスシーズンのため堅調な数字になるのだが、供給網(サプライチェーン)問題による配送の遅延から例年より早めに買い物をして商品を確保したことが影響した。
 
さらに1月ミシガン大学消費者態度指数の速報値(結果:68.8、予想:70.0、前回:70.6)が予想を下回り、10年ぶりの低水準となった2021年11月(67.4)に次ぐ低さとなり、強い物価上昇が消費者景況感を冷え込ませたようだ。
 
また、ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁は、外交問題評議会(CFR)が主催する講演で「緩和縮小の次のステップは、政策金利(フェデラルファンド・FF金利)を現在の極めて低い水準からより正常な水準へと漸進的に戻していくことだ」と発言。「非常に力強い労働市場の兆候を踏まえた上で、そのプロセス開始の決定に近づきつつある」と言明している。最近のFRB高官による金融政策の正常化に向けたタカ派的な発言から長期金利が上昇し、一時1.775%まで高くなっている。
 
合わせて、ウクライナ問題では緊張が高まり、ウクライナ政府機関の複数のウェブサイトが13日遅く大規模なサイバー攻撃を受けた。さらに、ロシアのプーチン政権はウクライナ侵攻を正当化するためにロシア人の役者を使って自国軍に対する妨害行為を仕立て上げ、挑発行為があったかのようにソーシャルメディアで見せかける計画を準備していると、バイデン政権はみているとブルームバーグが報じている。
 
米ドル・円(USDJPY)は、113円前半から114円前半での取引となった。米小売売上高の弱い結果を受け、12月20日以来の安値113.49円となったが、長期金利が上昇し始めると徐々に米ドルが買い戻され、この日の高値114.27円まで買われた。その後は3連休前の持高調整から小幅に売られ、終値は114.19円だった。
 
ユーロ・米ドル(EURUSD)は、1.14ドル後半から前半に値を下げた。日本時間に昨年11月11日以来の高値1.1483ドルを付けた影響から利益を得るためのユーロ売りの強まりや米ドル・円の上昇、さらにウクライナ問題の懸念も加わり、この日の安値1.1399ドルまで安くなった。その後は少し持ち直し、1.1411ドルで終えた。
 
ユーロ・円(EURJPY)は130円前半で取引された。ウクライナ問題の懸念からユーロが売られ、この日の安値129.78円に値を下げた。その後は、ユーロ・円の上昇につられ少し持ち直し終値は130.35円となった。
 

  • 株式

 NYダウ平均  USD 35,911.81 -201.81 (-0.55%)
 NASDAQ総合  USD 14,893.753   +86.941 (+0.58%)
 S&P500      USD 4,662.85  +3.82(+0.08%) 
 
1月14日の米株式市場のダウ工業株30種平均は、連日で前日の終値を下回った。米小売売上高が予想を下回り、ホームセンターのホーム・デポなどの消費関連株が売られた。取引開始前に決算を発表したJPモルガン・チェースが倒引当金の取り崩しによる懸念から大幅に売られ、金融株全般が売られた。前日、大幅に値を下げたハイテク株は、決算発表前に好調な業績が見込まれる銘柄が中心に買われた。17日はキング牧師記念日のため休場となっている。
 

  • 債券

 米国債10年 1.772(+3.57%)
 

  • 商品

 NY原油(WTI) 1バレル=USD 83.82 +1.70(+2.07%)(2月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,816.50  -4.90(-0.26%)(2月渡し)
 
 

【日本】リスクオフの姿勢の強まりから円買い進む

  • 為替(17時)

1月14日の東京外国為替市場は、コロナウイルスの感染拡大の懸念から株価が値を下げ、リスク回避の姿勢が強まりから安全資産の円を買う動きが強まった。また、1月17、18日の金融政策決定会合を前に日本銀行が、物価目標2%達成前に利上げが可能か否かを議論しているとの報道から、日本での物価上昇懸念の強まりもリスク回避の要因となった。
 
米ドル・円は113円後半で取引された。リスク回避のリスクオフの姿勢の強まりから円が買われ、12月21日ぶりの安値113.64円まで安くなった。その後、小幅に持ち直し17時時点では113.79円だった。
 
ユーロ・米ドルは1.14ドル半ばから後半に値を上げた。米ドル・円につられ、昨年11月11日以来の高値1.1483ドルまで上昇し、その後は小幅に値を下げ17時時点では1.1465ドルとなった。
 
ユーロ・円は130.5円付近で小幅に推移した。安全資産の円買いが強まった影響から、この日の安値130.37円まで安くなったが、小幅に値を戻し17時時点では130.47円だった。
 

  • 日本株式

 日経平均株価     28,124.28円  -364.85(-1.28%)
  安値27,889.21円  -  高値 28,252.96円
 東証出来高 1,408,15万株
 東証売買代金 3兆4410.34億円
 
1月14日の日経平均株価は連日で終値を下回った。米国市場で主要3指数が揃って値を下げた流れを受け、終日マイナス圏で推移した。国内のコロナウイルス感染拡大や米連邦準備理事会(FRB)の金融政策の正常化に向けた動きを受け、成長株が中心に売られ一時、境目の28,000円を下回った。また、日本の長期金利が一時0.155%と約10カ月ぶりの高水準となった影響も大きかった。東証1部の73%の銘柄が安くなり、海運業、水産・農林業、小売業以外の30業種で値を下げ終えた。
 

  • 短期金融市場

 無担保コール翌日物金利  -0.020%
 

  • 債券

 国債先物・22年3月限  150.80 (-0.26)
 10年長期金利  0.145%(+0.020)

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アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


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