黒田総裁の金融緩和発言から米ドル買い優勢に

2022/04/25 6:53 JST投稿
 
 

【今週の見通し】(4月25日-4月29日)
先週、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が5月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.5%の利上げを示唆し、早期の利上げ観測が強まっている。足元では4月23日から米金融当局者が沈黙機関に入った。円安が続き、20年ぶりの高値129.43円を更新した中、日本は4月29日(金)からゴールデンウィークの休みに突入する。今週は米金利の上昇や日銀の4月27、28日に行われる日銀金融政策決定会合で緩和が強調された場合に、米ドル・円が130円台に乗せる可能性もあり28日は要注意だ。
 
なお、フランス大統領選 決選投票が本日の午前3時(日本時間)に締め切られ、マクロン大統領が再選を果たした。行方が注目されていたが、ロシア寄りのルペン氏が敗れたことはユーロにとって波乱材料が取り除かれ安堵が拡がっている。公共放送「フランス2」が報じた午前5時時点(日本時間)の予想得票率は、マクロン大統領が58.2%、ルペン氏が41.8%だった。
 
また、イングランド銀行(英中央銀行)のベイリー総裁は先週、英中銀がインフレ対応とリセッション(景気後退)回避の間で難しいかじ取りを迫られているとの認識を示した。3月にインフレ抑制のため政策金利を0.50%から0.75%に引き上げ、5月4、5日開催の英中銀金融政策委員会で追加の利上げが見込まれている。利上げによって日本との金利差が意識されポンド・円の買いは続く見込みだが、その後の利上げは不透明感が強くその状況によりポンドが値を下げる可能性もある。
 
今週の主なイベントは以下の通り。
・4月26日:米消費者信頼感指数(4月)
・4月27日:日銀金融政策決定会合(28日終了)
・4月28日:日銀、黒田総裁会見、米新規失業保険申請件数(4月23日終了週)、 米GDP統計(2022年1-3月期、速報値) ユーロ圏消費者信頼感指数(4月、確報値)
・4月29日:東京市場休場(昭和の日)5月3日、4日、5日も祝日により休場、 米個人所得・個人消費支出(3月)
 
予想レートは米ドル・円が126円後半から131円前半。ユーロ・米ドルが1.05ドル後半から1.10ドル前半。

【米国】

為替(4月25日6時00分)
 米ドル円(USDJPY)    128.41-128.50 (円)
 ユーロ円(EURJPY)    138.71-138.90 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 1.0796-1.0802 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY)    164.85-165.04 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.2835-1.2843 (米ドル)
 
4月22日のニューヨーク外国為替市場の主なトピックスは、4月米総合購買担当者景気指数(PMI、速報値、結果:55.1、予想:57.9、前回:57.7)が発表された。原材料や原油高、人手不足を補うための人件費の上昇によりコストが過去最高となった影響を受け、景況感の悪化が示された。
 
また、米財務省は鈴木俊一財務相とイエレン米財務長官の会談に関する声明を発表し、双方が為替レートに関して従来のG7とG20の公約を維持すると明記した。為替相場は市場において決定され、過度の変動や無秩序な動きは経済や金融の安定に悪影響を与えるとのG7の合意を意識した内容となった。一方で、日銀の黒田東彦総裁はコロンビア大学で講演し、長短金利操作を軸とした金融緩和を粘り強く継続すると述べ、現行の金融政策を維持する姿勢を示した。
 
なお、 イングランド銀行(英中央銀行)のベイリー総裁は、英中銀は経済に悪影響を及ぼすことなく急激なインフレの上昇に対応できるが、その道のりは狭いと述べた。
 
米ドル・円(USDJPY)は、PMIの弱い結果から128.15円まで売られた。しかし、黒田総裁の金融緩和の継続に関する発言が伝わると、この日の高値129.11円まで値を上げた。その後、小幅に値を下げ128.41円まで売られると、小幅に横ばいで推移し128.50円で終えた。
 
ユーロ・米ドル(EURUSD)は、株価の下落や米ドル・円の動きにつられ1.0831円まで値を上げた。しかし、週末を控えフランス大統領選やウクライナ情勢を鑑みユーロ売りが優勢となると、この日の安値1.0771ドルまで売られた。その後持ち直し、終値は1.0790ドルとなった。
 
ユーロ・円(EURJPY)は、ユーロ・米ドルの動きにつられた。ユーロが売られ徐々に値を下げると138.37円まで安くなった。その後は、安値圏が意識され持ち直し139.10円まで値を上げたが、再び値を下げ、終値は138.79円だった。
 

株式

 NYダウ平均  USD 33,811.40 -981.36 (-2.82%)
 NASDAQ総合  USD 12,839.293  -335.359 (-2.54%)
 S&P500      USD  4,271.78  -121.88(-2.77%) 
 
4月22日の米株式市場のダウ工業株30種平均は、前日の終値を連日で下回った。前日にパウエル議長の利上げ発言が出て、引き続き早期の利上げへの懸念から高い株価収益率(PER)を中心に幅広い銘柄に売りが出た。徐々に値を下げ終了間際に前日の終値を1,000ドル以上下回り、微かに値を戻し終えた。前日比の下落率で2020年10月以来の大きさとなっている。

 

債券

 米国債10年 2.903(-0.34%)

 

商品

 NY原油(WTI) 1バレル=USD 102.07 -1.72(-1.66%)(6月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,934.3  -13.9(-0.71%)(6月渡し)

 

【日本】日米協調介入検討報道から徐々に値を下げる

為替(17時)
4月22日の東京外国為替市場の主なトピックスは、日米財務相会談で、米ドル売り、円買い介入について協議するとともに、米国が前向きに検討しているとTBSが独自の報道として報じたことが話題となった。また、松野博一官房長官は、午後の会見で日米財務相会談について、為替問題における日米通貨当局間での緊密な意思疎通を確認したという表現にとどめた。
 
なお、4月24日にロイターは財務省幹部が匿名を条件に事実でないと語っていると報じている。日銀の指値オペが続いている状況では米国が共同介入に応じることは考えにくいだろう。
 
米ドル・円は、正午過ぎまで日米金利差による米ドル買いが優位だった。しかし、日米財務相会談で日米による協調介入の検討が話し合われたとの報道が出ると徐々に値を下げ、この日の安値127.74円まで米ドルが売られた。その後は長期金利が上向き、米ドルが買い戻され17時時点で128.07円となった。
 
ユーロ・米ドルは、前日のデギンドス欧州中央銀行(ECB)副総裁のタカ派的な発言を受け、小幅にユーロが買われた。その後は、米長期金利が上昇しユーロが売られると、この日の安値1.0802ドルまで売られ、17時時点では1.0806ドルだった。
 
ユーロ・円は、前日のデギンドス欧州中央銀行(ECB)副総裁のタカ派的な発言を受け、昼過ぎまで堅調に値を上げたが、米ドル・円の下落につられるとユーロ売りが強まり徐々に値を下げた。この日の安値138.26円を付けたが、再び値を戻し17時時点だった。
 
債券
 国債先物・22年6月限  149.09(-0.06)
 10年長期金利  0.245%(変化なし)
 
 

【マーケットアナリティクス】英国経済の見通しが悪化し、ポンド・円が下落(4月22日)

かなり低調な経済指標の発表を受けポンドをトレーダーが売り、日本円に対しては1%以上下落し165円台に低下した。
 
本日未明に発表された、英国の3月小売売上高は前年同月比で予想の2.8%を下回り、0.9%を記録。2月の7.2%から減少し、投資家を著しく失望させた。前月比ではさらに低下し-0.5%から-1.4%となった。
 
燃料油外小売売上高も予想を下回り、前年同月比-0.6%、前月比-1.1%であった。両数値とも、2月の水準から大きく落ち込んだ。このデータを受け、ポンド・円(GBPJPY)は約200pips下落した。
 
また、市場調査会社GfKが発表した英国消費者信頼感指数は、世界金融危機中の2008年7月以来、過去2番目の低い水準まで下がったことが明らかになった。3月の-31.0から4月は-38.0に低下した。アナリスト予想は、-33.0だった。
 
テクニカル面では、3月高値の164.50-60円付近が次の下値支持線(サポート)となるようだ。このレベルより上で取引される限り、中期的な見通しは強気(ブル)であり、底値で買われる可能性がある。
 
しかしながら、弱気(ベア)に下落した場合、ロング(買い)ポジションの損切り(ストップロス)が大きくなり、162.70円に向けさらに下落する可能性があります。
 
一方、168円付近のサイクル高値付近が上値抵抗線(レジスタンス)となることが予想される。また、この価格を上に抜けると心理的な高値の170円を目指し、長期的な上昇トレンドが継続することが予想される。
 
  
ポンド・円、デイリーチャート 4月22日(CET・中央ヨーロッパ時間)
 
引用元: “GBPJPY Slides as UK Economy Outlook Worsens” (2022年4月22日, AXIORY Global Market News)        
 
追記:4月25日、日本時間6:00のポンド・円は164.85-165.04円で取引されている

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アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


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