経済指標の強弱から売買が交錯

2022/05/02 7:12 JST投稿

【今週の見通し】(5月2日-5月6日)
先週は、米ドル・円が連日で20年ぶりの高値を更新した。特に、4月28日に日本銀行が金融政策決定会合を終了後、金融緩和を継続するハト派的な姿勢を示し東京市場で2002年4月17日以来の高値131.25円を付けた。

今週は、各国で金融政策会合が行われ、米国が5月4日、英国が5日、豪州が3日に利上げを行なう見込みだ。この利上げによって日本との更なる金利の開きが出て、これらの通貨では円安になる見込みが強い。ポンドは、景気回復への懸念があるものの、欧州中央銀行(ECB)の利上げが7月の見込みで、それまでは金利差が縮小しないことから対ユーロで上昇を拡大させる可能性が強い。

また、5月2日の米ISM製造業、4日のISM非製造業景況指数、3、4日に開かれる米連邦公開市場委員会(FOMC)、6日の4月米雇用統計の発表など金融イベントが目白押しとなっている。FOMCでは金融緩和の縮小と利上げが見込まれている。さらに雇用統計で予想通りの堅調な数字が示されると高インフレの懸念が高まっている米国経済に対する安心感が出て、米ドル買いが加速する可能性が高い。

ウクライナ情勢ではロシアがドイツ戦の勝利記念日の5月9日にロシアが勝利宣言を行うとの思惑が出ており、今週はロシアの情報や戦況の悪化する可能性が大きい。その場合、有事の米ドル買いが進む可能性も高い。これらの状況から鑑みても円安が進む環境が整っており、米ドルの次のターゲットは135円だろう。

予想レートは米ドル・円が126円前半から132円前半。ユーロ・米ドルが1.03ドル前半から1.07ドル前半。
 

【米国】

為替(5月2日6時00分)
 米ドル円(USDJPY)    129.72-129.79 (円)
 ユーロ円(EURJPY)    137.04-137.13 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 1.0542-1.0547 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY)    163.19-163.37 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.2572-1.2580 (米ドル)

4月29日のニューヨーク外国為替市場の主なトピックスは、様々な経済指標が発表された。1-3月期 四半期雇用コスト指数(前期比、結果:1.4%、予想:1.1%、前回:1.0%)は、2001年の統計開始以降で最大を記録。賃金インフレの高まりを示唆し、米連邦準備理事会(FRB)による積極的な金融引き締め姿勢を裏付ける内容となった。

また、3月 個人消費支出(PCEデフレーター、前年同月比、結果:6.6%、予想:6.7%、前回:6.4%)が発表され、1982年1月以降で最も高い伸びを記録した。FRBが物価の目安とする変動の大きい食品とエネルギーを除くPCEコアデフレーターは前年同月比(結果:5.2%、予想:5.3%、前回:5.4%)で、上昇し力強い内容を示した。

さらに、4月 シカゴ購買部協会景気指数(結果:56.4、予想:62.0、前回:62.9)では、特に新規受注が低下し、2カ月ぶりの低下となった。4月 ミシガン大学消費者態度指数・確報値(結果:65.2予想:65.7、前回:65.7)は、市場予想には届かなかったが4カ月ぶりに上昇した。これらの結果から長期金利が堅調に値を上げ寄与した。

米ドル・円(USDJPY)は、朝方に発表されたPCEが好調な結果となり130.38円に値を上げた。その後、シカゴ購買部協会景気指数やミシガン大学消費者態度指数の弱い結果から米ドルが売られた。さらに、月末の金の取引価格を決定するロンドンフィキシングに向けた米ドル売りも出て、この日の安値129.32円まで売られた。しかし、その後は売買が交錯し、終値は129.70円となった。

ユーロ・米ドル(EURUSD)は、米雇用コスト指数が統計開始以来最大を記録し、米ドル買いが優勢となり1.0510ドルまで値を下げた。その後はシカゴ購買部協会景気指数が2カ月ぶりの低下となったことを受け、1.0579ドルまで買い戻された。しかし、高インフレによる欧州経済への影響が懸念され徐々に値を下げ終値は1.0545ドルだった。

ユーロ・円(EURJPY)は、米ドル・円での円安が高値圏で推移した反動や高インフレによる欧州経済への影響が懸念され徐々に値を下げ終値は136.95円となった。

株式
 NYダウ平均  USD 32,977.21 -939.18 (-2.76%)
 NASDAQ総合  USD 12,334.640  -536.888 (-4.17%)
 S&P500      USD  4,131.93  -155.57(-3.62%) 

4月29日の米株式市場のダウ工業株30種平均は、3日ぶりに前日の終値を下回った。2022年1-3月期の決算を発表したアマゾン・ドット・コムが倉庫の運営費と配送費の増加による影響から7年ぶりに最終赤字に転落した。さらに、第2四半期の業績見通しが予想を下回り、投資家心理が冷え込んだ。これが引き金で中国の都市封鎖による供給網への懸念やウクライナ情勢の長期化による世界的な景気の冷え込みが懸念され3指数揃って値を下げ終えた。

債券
 米国債10年 2.939(+0.113%)

商品
 NY原油(WTI) 1バレル=USD 104.69 -0.67(-0.64%)(6月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,911.7  +20.4(+1.08%)(6月渡し)
 

【日本】祝日やFOMCを控え大きな動き無く

為替(17時)
4月29日の東京外国為替市場の主なトピックスは、昭和の日の休日により国内の機関投資家の参加が限られ大きな動きが出なかった。個人投資家もFOMCを控え、積極的な取引を控えているようだった。

米ドル・円は、前日に2002年4月17日以来の高値131.25円を付けた反動から米ドル売りが優勢だった。徐々に値を下げ、欧州勢参加後にさらに値を下げ17時時点で130.01円となった。その後もさらに値を下げ、この日の安値129.77円まで値を下げた。

ユーロ・米ドルは、ニューヨークの朝方に2017年1月以来、5年3カ月ぶりの安値1.0472ドルを付けた反動から値を上げ、昨日の高値1.0565ドルを超え1.0579ドルまで値を上げた。17時時点では1.0561ドルとなった。

ユーロ・円は、日中、ほぼ値動きが出なかったが、欧州経済への懸念の強まりからこの日の安値137.04円まで値を下げた。その後徐々に値を戻し17時時点では137.33円だった。

*昭和の日の祝日のため債券は休場

【マーケットアナリティクス】ユーロ・円は高値周期に戻る(4月29日)

木曜日と金曜日は投資家心理が急激に改善し、ユーロ・円や株式などのリスク資産の堅調な上昇につながった。
本稿執筆時点では、ユーロは対円で0.4%上昇し、金曜日の米国時間の前に137.70円付近で推移している。

■EUと米国のデータが議題に
金曜日に発表された1-3月期 四半期欧州域内総生産速報値によると、2022年3月までの3カ月間のユーロ圏の経済成長率は0.2%となり、予想の0.3%および前回の0.3%を下回る結果となった。年率換算では前回(2021年第4四半期)の4.7%に対し、第1四半期は5.0%増加し、予想通り(5.0%)となった。

さらに、欧州連合(EU)の統計局ユーロスタットが金曜日に4月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)を発表した。年率換算で7.5%上昇し、3月の7.4%を上回った。予想通りの結果となった。

4月の季節的な影響で価格が変動しやすい生鮮食品を除いたコア指数は、前年同月比3.5%増で、3月の予想値3.2%、予約値2.9%に対し増加した。

米国時間には、個人消費支出、4月のミシガン大学消費者態度指数・確報値が発表される。さらに、シカゴ購買部協会景気指数も発表される。

134.60円付近(緑の水平線)が中期的な下値支持線(サポート)となる可能性があるようだ。この上で取引される限り、中期的な見通しは強気(ブル)であると思われる。

短期的なサポートと上値抵抗線(レジスタンス)は137.20円台にあると思われ、ユーロがこの上に飛び出せば、短期的なトレンドは強気を維持できる可能性がある。

最も注目すべきレジスタンスは、現在サイクルハイの139.90円にある。これを飛び越えられないと、利益確定売りに押される可能性がある。一方、140円を強く上回った場合、次の週には145円に向かう可能性がある。

EURJPY Returns to Cycle Highs

ユーロ・円デイリーチャート 4月29日(CET・中央ヨーロッパ時間)

引用元: “EURJPY Returns to Cycle Highs” (2022年4月29日, AXIORY Global Market News)     

追記:5月2日、日本時間6:00のユーロ・円は137.04-137.13円で取引されている

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アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


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