日銀のハト派的な姿勢から円売り続く

【米国】

為替(4月29日6時00分)
 米ドル円(USDJPY) 130.82-130.84 (円)
 ユーロ円(EURJPY) 137.36-137.39 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 1.0495-1.0500 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY) 162.83-163.02 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.2454-1.2462 (米ドル)

4月28日のニューヨーク外国為替市場の主なトピックスは、日本銀行が金融政策決定会合を終え、金融緩和を継続するハト派的な姿勢を示し東京市場で20年ぶりの高値を更新した。この流れを受け継ぎ、日米金利差の更なる拡大が意識され円売りが強まっている。

また、1-3月期 米四半期実質国内総生産の前期比年率、速報値(GDP、結果:-1.4%、予想:1.1%、前回6.9%)は、高成長を記録した前回2021年10-12月期から一転して、大幅に減少した。2020年4-6月期以来、7四半期ぶりのマイナス成長となっており、個人消費は堅調だったが、貿易赤字の拡大がGDPを押し下げた。

米ドル・円(USDJPY)は、朝方にGDPがマイナス成長となった影響から小幅に値を下げた。しかし、日米金利差が意識された円売りが入ると2002年4月以来の高値を更新し、131.25円まで上昇した。その後は、来週5月3、4日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を控え、様子見の姿勢が強まり終値は130.85円となった。

ユーロ・円(EURJPY)は、東京市場で円売りが強まった影響を受けた後は、ウクライナ情勢への懸念から小幅に売られた。その後、137.95円までユーロが買い戻されたが東京市場の高値138.00円が意識されると買いが弱まった。そして、利益確定売りが出て、小幅に値を下げ終値は137.39円だった。

ユーロ・米ドル(EURUSD)は、東京市場の高値1.0565ドルから、利益確定売るが出て徐々に値を下げ、朝方に2017年1月以来、5年3カ月ぶりの安値1.0472ドルを付けた。その後は、買戻しが入り1.0523ドルまで上昇したが、再び値を下げた後は横ばいで推移し、1.0499ドルで終えた。

株式
 NYダウ平均 USD 33,916.39 +614.46 (+1.84%)
 NASDAQ総合  USD 12,871.528 +382.595 (+0.06%)
 S&P500     USD  4,287.50 +103.54(+2.47%)

4月28日の米株式市場のダウ工業株30種平均は、前日の終値を連日で上回った。前日に2022年1-3月期の決算を発表した交流サイトのメタプラットフォームズの1株利益が市場予想を上回り買われ、ハイテク株が上昇した。その他の好調な決算を発表した銘柄にも買いが入ったことが好感され、幅広い銘柄が買われ3指数揃って値を上げ終えた。

債券
 米国債10年 2.810(-0.024%)

商品
 NY原油(WTI) 1バレル=USD 105.36 +3.34(+3.27%)(6月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,891.3 +2.6(+0.14%)(6月渡し)
 

【日本】日銀の緩和継続から円安が加速

為替(17時)
4月28日の東京外国為替市場の主なトピックスは、日銀金融政策決定会合を終え、黒田総裁の会見に注目が高まった。世界各国が金融引き締めに進んでいる中、物価目標2%実現に向け粘り強く緩和を続けることを示唆した。また、必要に応じ指値オペを毎日実施すると述べた。欧米との金利差がさらに開くことになり円売りの動きが加速することはやむを得ない状況だ。

日本は4月29日、5月3、4、5日に祝日を控えており、欧州勢参加が重なる時間以外は個人の取引が中心となるため値幅が少ないながらも、値動きが荒くなるだろう。

米ドル・円は、朝方は連休前の決済に向けた需要による買いで小幅に値を上げていた。その後、黒田総裁の会見により金融緩和を継続するタカ派的な姿勢が示されると急激に円売りが強まった。2002年4月18日以来の高値130.76円を更新した。日本銀行が国債を一定の条件で無制限に買い入れる指し値オペの運用を原則として毎営業日実施する方針も示された影響も大きかった。次のテクニカルポイントは2002年1月の135.15円が意識される。17時時点で130.59円となった。

ユーロ・円は、黒田総裁の会見後に円売りが強まり138.00円まで値を上げた。その後小幅に値を下げ、17時時点では137.85円だった。

ユーロ・米ドルは、ユーロ・円の上昇や時間外の米長期金利の上昇から米ドル買いが優勢となり、徐々に値を下げた。欧州勢が参加後、投資家心理が上向き1.0565ドルまで買い戻され、17時時点では1.0554ドルで取引された。


債券
 国債先物・22年6月限 149.62(+0.31)
 10年長期金利 0.215%(-0.030) 
 

【マーケットアナリティクス】米ドル円は制御不能になりつつある(4月28日)

米ドル・円で投資家が最も速いペースで円を売り、上昇基調となり前日比で2%跳ね上がった。

■日銀が日本円を奈落の底に突き落とす
日銀が金融政策決定会合を終え、黒田東彦総裁がハト派的な立場を改めて表明した後、円に大きな圧力がかかり、米ドル・円は131円台を超え20年ぶりの高値を更新した。

日銀は金融引き締めが日本の基礎的な経済に悪影響を及ぼすとの考えから、超金融政策を維持し、「ゼロに近い」10年債利回り目標を維持するために国債買い入れを実施すると表明した。黒田総裁は会合後の記者会見で、経済リスクは現在下方に傾いていると述べ、必要ならさらに政策を緩和する用意があると表明した。

■悲惨な米国データ
米商務省が発表した数字によると、2022年第1四半期の米国の実質GDP成長率(年率)は、実際には1.4%減少した。これは、第1四半期の年率換算成長率1.4%という予測に比べ厳しい状況となっている。2021年第4四半期は年率換算成長率6.9%の堅調な推移だったが、ウクライナ情勢や高インフレなどの影響が色濃く反映された。

一方、第1四半期のGDP価格指数は、予想の7.3%上昇に対し、第4四半期の7.1%から8.0%へと予想以上に上昇した。データを受けて米ドルはやや下落したが、下落分はすぐに買い戻された。米国の成長率の低下と物価上昇圧力は、まもなくスタグフレーション(成長率の低下と高インフレという最悪の経済状態)を引き起こすだろう。

強気(ブル)の次のターゲットは、おそらく2002年の高値がある135円になるだろう。この水準で強気が止まらなければ、米ドルは1998年の高値145円付近を目指し続けるかもしれない。
 米ドル・円デイリーチャート 4月28日(CET・中央ヨーロッパ時間)

引用元: “USDJPY Is Getting Out of Control” (2022年4月28日, AXIORY Global Market News)

追記:4月29日、日本時間6:00の米ドル・円は130.82-130.84円で取引されている

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アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


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