【今週の見通し】(5月9日-5月13日)
先週は、5月2日の米ISM製造業、4日のISM非製造業景況指数、3、4日に開かれる米連邦公開市場委員会(FOMC)、6日の4月米雇用統計の発表など金融イベントが目白押しだった。特に、FOMCでは予想通り0.5%の利上げと保有資産の引き締めの決定を行なった。今回、パウエル米連邦準備制度(FRB)議長が0.75%の利上げを否定したことは好感が持たれたが、数カ月先の予定まで明らかにしたことで、不安定な動きが出ている。
米長期金利が2018年11月以来の高水準となり日米金利差がさらに拡大した。今後も円安基調はは継続する見込みだ。米ドル・円では、135円が一つの目安と考えられているが、直近では境目の132円が意識されている。今週は、5月11日発表の4月の米消費者物価指数(CPI)や12日の4月の米卸売物価指数(PPI)の強い結果やFRB高官の大幅な利上げに関する発言が出ると、更なる円安が進むことになるため、注視したい。
また、本日(5月9日)、ロシアが対独戦勝記念日を迎え、ウクライナ情勢に関する発言や行動を示すか否かに注目が高まる。今後、ウクライナ情勢の悪化が懸念される出来事が起これば、ユーロ売りが強まり、有事のドル買いにもつながるだろう。
予想レートは米ドル・円が128円後半から132円前半。ユーロ・米ドルが1.03ドル前半から1.07ドル前半。
【米国】
為替(5月9日6時01分)
米ドル円(USDJPY) 130.51-130.58 (円)
ユーロ円(EURJPY) 137.58-137.75 (円)
ユーロ米ドル(EURUSD) 1.0545-1.0547 (米ドル)
ポンド円(GBPJPY) 160.94-161.13 (円)
ポンド米ドル(GBPUSD) 1.2346-1.2354 (米ドル)
5月6日のニューヨーク外国為替市場の主なトピックスは、朝方に雇用統計が発表された。4月 非農業部門雇用者数変化(前月比、結果:42.8万人、予想:39.1万人、前回:43.1万人)は、予想を上回る雇用者数だったが前月の水準にとどまった。さらに、平均時給(前月比、結果:0.3%、予想:0.4%、前回:0.4%)が、予想を下回り鈍化した。失業率(結果:3.6%、予想:3.5%、前回:3.6%)は、前月と同じでコロナウイルス感染拡大前の50年ぶりの低水準にほぼ並び、堅調な労働市場であることが示された。
この結果を受け、高インフレと米連邦準備制度(FRB)の金融引き締めが加速するとの思惑から、長期金利が2018年11月以来となる3.144%まで上昇した。
また、米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が、ミネソタ大学で開かれたイベントでの質疑応答に注目が高まった。「現在は雇用市場が非常に力強いと大半の基準が示している。かつインフレが非常に高い時期でもある。インフレを2%に戻さなくてはならない。雇用市場がやや軟化したとしても、大したトレードオフ(両立できない関係)ではない」と述べた。カシュカリ総裁はFRBで最もハト派的とされている。
米ドル・円(USDJPY)は、朝方の雇用統計を受け130.16円まで米ドルが売られたが、長期金利が3年半ぶりの高水準になると130.64円まで値を戻した。その後は、利益確定売りに押されたが、徐々に値を戻し、130.56円で終えた。
ユーロ・米ドル(EURUSD)は、欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーから早期の利上げを押す声が出て徐々に値を上げ、この日の高値1.0599ドルまでユーロが買われた。その後、米雇用統計後に米長期金利が上昇すると、次第に値を下げ終値は1.0551ドルとなった。
ユーロ・円(EURJPY)は、小幅な動きにとどまり大きな動きは出なかった。ECB高官の発言を受け、この日の高値138.16円まで上昇したが、小幅に値を下げ終値は137.71円だった。
株式
NYダウ平均 USD 32,899.37 -98.60 (-0.29%)
NASDAQ総合 USD 12,144.662 -173.029 (-1.40%)
S&P500 USD 4,123.34 -23.53(-0.56%)
5月6日の米株式市場のダウ工業株30種平均は、連日で前日の終値を下回った。雇用統計で失業率が低水準となりFRBの金融緩和に向けた姿勢が継続するとの見方が強まり、ほぼ終日で前日の終値を下回っていた。長期金利の上昇も影響が強く、3指数揃って値を下げ終えた。
債券
米国債10年 3.142%(+0.074)
商品
NY原油(WTI) 1バレル=USD 109.77 +1.51(+1.39%)(6月渡し)
NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,882.8 +7.10(+0.38%)(6月渡し)
【日本】米雇用統計の発表控え、様子見の姿勢強く
為替(17時)
5月6日の東京外国為替市場の主なトピックスは、朝方は3連休明けの月初の決済に向けた外貨を買う動きが優勢となった。その後は、米雇用統計の発表を控え様子見の姿勢が強まった。米長期金利が3%を超えたこともプラスとなっている。
また、欧州中央銀行(ECB)政策委員会メンバーのビルロワドガロー・フランス中銀総裁は、「ユーロ圏経済に一段の打撃がない限り、中銀預金金利を年内にゼロ以上に引き上げる可能性がある」と述べた。なお、前日にレーン・フィンランド中銀総裁も7月の利上げを示唆し、ウンシュ・ベルギー中銀総裁も年内に政策金利がプラスとなる可能性があると述べている。
米ドル・円は、連休明けの月初の決済に向けた米ドル買いが入り、この日の高値130.80円まで値を上げた。その後は利益を確定させる売りや米雇用統計の発表を控え様子見の姿勢が強まり徐々に値を下げた。17時時点では130.52円だった。
ユーロ・米ドルは、朝方は、ほぼ横ばいで推移したが、ウクライナ情勢への長期化や欧州経済への懸念が強まり徐々に値を下げ、前日の安値1.0493ドルを超え1.0483ドルまで安くなった。その後、ビルロワドガロー・フランス中銀総裁の発言を受け上昇し、17時時点では1.0520ドルとなった。その後も上昇が続き、17時30分過ぎに1.0560ドルまで値を上げている。
ユーロ・円は、朝方に決済に向けたユーロ買いから上昇したが、徐々に値を下げ、この日の安値136.74円まで売られた。その後、ビルロワドガロー・フランス中銀総裁の発言を受け、値を上げ17時時点では137.31円で取引された。その後も値を上げ18時前に137.94円まで値を上げている。
債券
国債先物・22年6月限 149.18(-0.19)
10年長期金利 0.240%(+0.015)
【マーケットアナリティクス】米雇用統計発表後、ユーロ・米ドルは小幅に下落(5月6日)
ユーロ・米ドルは、連日の高値から下落したが、米国の雇用統計発表の直後に1.0560ドルで取引され、この日はやや高値圏で推移した。
■米国の雇用市場は引き続き堅調
本日未明、米国経済では4月の新規雇用者数が発表され42万8000人となり、3月と同水準で、予想の39万1000人を上回った。その結果、失業率は3.6%にとどまった。しかし、賃金の伸びは月次で前回の0.5%から0.3%に鈍化し、年次では5.6%から5.5%に一段と低下している。
やや予想に近い数字だったため、発表直後の変動はなかった。しかし、今日の結果からFRBの金融政策がタカ派的な方向に強化されたため、市場の中期的なトレンドは継続すると思われる。
しかし、最近の給与や所得の改善、失業率が低下しても、多くのアメリカ人の経済状況には反映されていない。消費者物価の上昇は所得の伸びを上回り、インフレ率は40年ぶりの高水準に達している。労働統計局によると、米国の消費者物価指数(CPI)は3月に年率8.5%で上昇し、1981年以来、最も速いペースで上昇している。
■まだ1.05より上
今後数日間の重要な下値支持線(サポート)は、1.05ドル台にあると思われる。これが破られると、ユーロは一気に2016、2017年の安値である1.035ドルまで下落する可能性がある。
一方、上値抵抗線(レジスタンス)は、水曜日の安値1.063ドル付近にある可能性だ。しかし、ユーロが1.08ドル以下で取引される限り、中長期的な弱気(ベア)見通しは変わらない。
ユーロ・米ドルデイリーチャート 5月6日(CET・中央ヨーロッパ時間)
引用元: “EURUSD Ticks Lower after US jobs data” (2022年5月6日, AXIORY Global Market News)
追記:5月9日、日本時間6:01のユーロ・米ドルは1.0545-1.0547ドルで取引されている