明日の4月CPI発表控え様子見の姿勢強く

【米国】

為替(5月11日6時00分)
 米ドル円(USDJPY) 130.42-130.46 (円)
 ユーロ円(EURJPY) 137.33-137.37 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 1.0526-1.0530 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY) 160.60-160.71 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.2311-1.2320 (米ドル)

5月10日のニューヨーク外国為替市場の主なトピックスは、米連邦準備理事会(FRB)高官の金融引き締め政策を進めるタカ派的な発言が相次いだ。まず、ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁が「われわれは極めて迅速なペースで緩和解除に動いており、今後数回の会合で50bp(1bp=0.01%)利上げする一定の余地につながっている」と述べた。さらにクリーブランド連銀のメスター総裁も「永遠に75 bpの利上げの可能性を排除しない」と述べている。一方で、リッチモンド連銀のバーキン総裁はインフレを制御する決意で他の当局者と同調しつつ、ボルカー元FRB議長の下で陥ったようなリセッション(景気後退)を引き起こすことにはならないとの見解を示した。

また、明日、発表される4月の米消費者物価指数(CPI)を控え、様子見の姿勢も強かった。

なお、5月9日に米ITニュースサイト「ジ・インフォメーション」が米商務部は米国企業が高性能な半導体装置を中国企業に売ることを禁止する施策を検討していると報じた。すでにSMICに科した禁止措置の適用対象を広げる方針で、数カ月をかけて草案を策定する見通し。影響は軽微だったが、今後の行方に注目したい。

米ドル・円(USDJPY)は、アジア時間に値を下げていたが、徐々に値を戻した。CPI発表を控え、積極的な取引は抑制された。米長期金利が終日で3%を切った影響があったが、株価の上昇がよい影響をもたらしている。FRB高官のタカ派的な発言から、米ドル買いが活発となり、この日の高値130.58円に値を上げた。その後は、利益確定売りが入り値を下げたが、再び戻し終値は130.45円となった。

ユーロ・米ドル(EURUSD)は、アジア時間に値を下げていた反動から朝方に、この日の高値1.0585ドルに値を戻した。しかし、前日の高値1.0592ドルが意識されるとウクライナ情勢の長期化や中国の供給網問題による世界的な景気への影響が懸念された。さらにFRB高官のタカ派的な発言から、徐々に値を下げ、この日の安値1.0526ドルを付け、終値は1.0529ドルだった。

なお、欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのナーゲル独連邦銀行(中央銀行)総裁は、ECBは7月に利上げを行い、高インフレの定着に歯止めをかけるべきとの見解を示した。さらに、ECBが6月末に資産購入を終了し、その次の会合で金利を引き上げるべきとの発言があった。しかし、すでに織り込み済の内容で影響は軽微だった。

ユーロ・円(EURJPY)は、ウクライナ情勢の長期化や円安への懸念から小幅な動きにとどまった。朝方に、この日の安値137.04円を付けた後は、小幅に買い戻され終値は137.34円となった。

株式
 NYダウ平均 USD 32,160.74 -84.96 (-0.26%)
 NASDAQ総合  USD 11,737.671 +114.423 (+0.98%)
 S&P500     USD  4,001.05 +9.81(+0.24%)

5月10日の米株式市場のダウ工業株30種平均は、4日連続で前日の終値を下回った。前日に長期金利が3.203%に上昇したが、この日は終日3%を下回りハイテク株などが買い戻され、前日の終値を上回る場面もあった。その後は、CPIの発表を控え、様子見の姿勢が強まり値を下げ終えた。

債券
 米国債10年 2.997%(-0.082)

商品
 NY原油(WTI) 1バレル=USD 99.76 -3.33(-3.23%)(6月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,841.0 -17.60(-0.95%)(6月渡し)
 

【日本】時間外の米長期金利に翻弄される

為替(17時)
5月10日の東京外国為替市場の主なトピックスは、時間外の米長期金利に翻弄された。前日に一時3.2006%と2018年11月以来の高水準を付けていたが、時間外で2.9770%を付けた後は、3%台を回復した。

米ドル・円は、株価の大幅な下落や米長期金利の低下から10時過ぎにこの日の安値129.80円を付けた。その後は、長期金利が3%台に戻ると130円台を回復した。欧州勢参加後、16時過ぎに利益確定売りが入り徐々に値を下げ17時時点では130.35円となった。

ユーロ・米ドルは、米ドル・円の下落につられ徐々に値を上げた。15時頃に、この日の高値1.0585ドルまで値を上げたが、その後は徐々に値を下げ17時時点では1.0557ドルだった。

ユーロ・円は、米長期金利の低下やユーロ・米ドルの動きにつられ10時ごろに、この日の安値137.10円まで値を下げた。その後は、米長期金利が回復すると徐々に値を戻し137.90円まで値を上げたが再び値を下げた。17時時点では137.62円で取引されている。

債券
 国債先物・22年6月限 149.19(+0.10)
 10年長期金利 0.245%(変化なし) 
 

【マーケットアナリティクス】EURUSD、ひとまず1.05ドルを守る(5月10日)

火曜日、ユーロ・米ドルは比較的横ばいで推移し、米国時間には1.0550ドル付近で推移している。1.05ドルの下値支持線(サポート)を下回るには、弱気(ベア)の力はもう必要なさそうだ。

■世界情勢がリスクとなる
中国での都市封鎖が世界の貿易量に影響を与え続けており、市場参加者は世界的な景気後退への不安を強めている。上海での感染者数は減少しているものの、政府は "ゼロコロナ政策 "を実施し続ける方針で、規制を強化している。

さらに、供給網問題から、世界的なインフレは予想以上に長期化することが予想される。一方、ロシアとウクライナの紛争が収束する兆しはない。

■EUのデータは予想を上回った
景気後退の懸念が近づく中、5月の独ZEW景気期待指数が改善し、前回の-41.0から-34.3となり、予想の-42.0を大幅に上回った。さらに、ユーロ圏ZEW景気期待指数は-29.5となり、前月の-43.0と予想の-41.0から上昇した。

調査結果では、前月と比較すると、ドイツの経済状況に対する悲観的な見通しが少なくなっている。さらに、大多数の専門家が今後6ヶ月以内にECBによる短期金利の引き上げを想定している。

■売られすぎの状況
全体的に、ユーロ・米ドルは大きく売られすぎており、短期的な上昇を促す可能性がある。短期的な上値抵抗線(レジスタンス)は1.0630ドル付近にあり、ユーロがこのレベルを超えて上昇した場合、1.0760ドルをターゲットにさらなる上昇圧力がかかる可能性がある。

一方、1.05ドルを下回る場合、さらなる下落は避けられず、初動で1.03ドルまで下落する可能性もある。
      
ユーロ・米ドルデイリーチャート 5月10日(CET・中央ヨーロッパ時間)
引用元: “EURUSD Defends 1.05 For Now” (2022年5月10日, AXIORY Global Market News)

追記:5月11日、日本時間6:00のユーロ・米ドルは1.0526-1.0530ドルで取引されている

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アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


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