リスク回避の姿勢強く低調な取引に

2022/05/23 6:26 JST投稿
 

【今週の見通し】(5月23日-5月27日)
先週の主な動きは、5月19日に発表された5月 フィラデルフィア連銀製造業景気指数や前週分の新規失業保険申請件数の弱い結果から長期金利が低下すると、米ドル・円が4月27日以来、3週間ぶりの安値127.03円を付けた。理由としては、小売業界の低調な決算がきっかけで、高インフレが企業業績に与える影響の大きさが懸念されリスク回避の姿勢が強まり、債券が買われ長期金利が低下している。

また、5月20日に発表された4月 全国消費者物価指数では日銀が物価安定目標に掲げる2%に達した。一時的なものとみられており、日米金利差が大幅に縮まるとは考えにくく急激に円高に転換するとは考えにくい。しかし、米長期金利が緩やかに低下しており、中国の都市封鎖による景気悪化や欧州のエネルギー価格の上昇による景気回復懸念など、リスク回避の円買いも出やすくなっていることから動向を注視したい。

今週は米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録公開を控え、米金融当局高官の発言などから、米長期金利が上昇し、米ドル買いが高まる可能性もある。一方で、経済指標が市場予想を下回った場合は米長期金利が低下し、リスク回避の動きが強まりドル買いが弱まる可能性が強いだろう。
・5月23日(月):米・アトランタ連銀総裁が講演、日米首脳会談
・5月24日(火):5月製造業PMI速報、5月リッチモンド連銀製造業指数、4月新築住宅販売件数、日米豪印戦略対話(QUAD)
・5月25日(水):4月耐久財受注速報、FOMC議事録を公表(5月3、4日分)、日銀黒田総裁挨拶(日本銀行金融研究所主催2022年国際コンファランス)
・5月26日(木):1-3月期GDP改定値、新規失業保険新線件数、4月中古住宅販売仮契約
・5月27日(金):4月個人所得・支出、4月PCEコアデフレーター、05月 ミシガン大学消費者信頼感指数

予想レートは米ドル・円が126円半ばから129円半ば。ユーロ・米ドルが1.03ドル前半から1.07ドル前半。


【米国】

為替(5月23日6時00分)
 米ドル円(USDJPY)    127.90-127.94 (円)
 ユーロ円(EURJPY)    134.93-135.09 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 1.0557-1.0560 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY)    159.72-159.89 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.2491-1.2496 (米ドル)

5月20日のニューヨーク外国為替市場では、景気後退(リセッション)の懸念が強まり値を上げづらい状況となっている。米セントルイス連銀のブラード総裁は、FOXビジネスのインタビューにて、利上げを積極的に前倒して政策金利を年末時点で3.5%にすべきとの見解を示した。また、利上げが奏功すればインフレを鈍化させ、2023年か2024年に利下げに動くこともあり得ると指摘した。

また、株価の下落に伴い、リスク回避の姿勢が強まると債券が買われ、長期金利が2.88%から2.774%に低下している。

なお、影響は軽微だったが、4月 全国消費者物価指数(CPI、生鮮食料品除く、前年同月比、結果:2.1%、予想:2.1%、前回:0.8%)と日銀が物価安定目標に掲げる2%に達した。主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議後の記者会見で黒田総裁は安定的な水準に達しているとは見ていないと述べた。

ユーロ・米ドル(EURUSD)は、前日に公開された4月14日の欧州中央銀行(ECB)理事会の議事録で7月の利上げ観測の強まりから欧州時間に、この日の高値1.0598ドルまで値を上げた。上海株価指数の上昇も良い影響を与えた。しかし、週末前の持高調整からユーロ売りが優勢となり徐々に値を下げ、この日の安値1.0533ドルを付けた。株価の下落によるリスク回避の姿勢も影響が大きかった。その後は、安値圏が意識され買い戻されると小幅に値を戻し、終値は1.0564ドルとなった。

ユーロ・円(EURJPY)は、欧州時間にこの日の高値135.80円を付けたが、株価の下落などによるリスク回避の姿勢から徐々に値を下げた。この日の安値134.58円まで値を下げ、安値圏が意識されると小幅に買い戻され終値は135.03円だった。

米ドル・円(USDJPY)は、朝方は欧州時間に値を上げた反動の下落から128.25円まで値を戻した。しかし、リスク回避の姿勢が強まり長期金利が低下すると、米ドル売りが優勢となり127.59円まで値を下げたが、日本時間の安値127.53円が意識されると値を戻し、127.88円で終えた。

株式
 NYダウ平均  USD 31,261.90 +8.77 (+0.02%)
 NASDAQ総合  USD 11,354.617  -33.879 (-0.29%)
 S&P500      USD  3,901.36  +0.57(+0.01%) 

5月20日の米株式市場のダウ工業株30種平均は3日ぶりに前日の終値をわずかに上回った。小売大手の低調な決算からのリスク回避の姿勢が引き続き意識され、積極的な取引は控えられた。FRBの金融引き締めも意識され、13時30分頃に前日の終値を600ドル超下回るほど値を下げる場面もあった。景気に左右されにくいディフェンシブ株が買われ、わずかに値を上げ終えた。

債券
 米国債10年 2.788%(-0.067)

商品
 NY原油(WTI) 1バレル=USD 112.21 +0.91(+2.39%)(6月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,842.1  +0.90(+0.05%)(6月渡し)
 

【日本】上海株上昇から投資家心理が上向く

為替(17時)
5月20日の東京外国為替市場の主なトピックスは、中国当局の景気支援策が好感され上海株が堅調に推移したことや、その影響から投資家心理が上向き日本株も上昇したことがプラスに作用した。

米ドル・円は中国や日本の株価が堅調に推移した上、国内輸入企業の決済に向けた米ドル買いも加わり、この日の高値128.21円に値を上げた。その後は、週末を前に利益確定売りや米長期金利の低下に押され、この日の安値127.53円まで値を下げた。その後は、再び投資家心理が上向き、再び買いが入り17時時点では127.94円となった。

ユーロ・米ドルは米ドル・円の動きにつられ、この日の安値1.0555ドルまで売られたが、持ち直し、この日の高値1.0593ドルを付けた。その後は、再び値を下げ17時時点では1.0577ドルだった。

ユーロ・円は、ユーロ・米ドルの上昇につられ、この日の高値135.59円まで値を上げた。その後は、この日の安値134.75円まで値を下げたが、徐々に値を戻し17時時点では135.32円で取引されている。

債券
 国債先物・22年6月限  149.78(+0.18)
 10年長期金利  0.235%(-0.005) 
 

【マーケットアナリティクス】ポンド・米ドルは1.25付近で推移し、動き出しを待つ状態(5月20日)

米ドルは金曜日にやや下落し、他の通貨を上昇させる動機となった。米国での取引開始を前に、ポンドは境目の1.25ドルの上昇を試み、いく分か高く取引された。

今週は市場の動きがかなり荒く、投資家が週末を前に大きな取引を望まない可能性があるため、価格変動(ボラティリティ)は終日低くなる可能性がある。

■英・小売売上高が予想を上回る
本日未明に発表された、英国の小売売上高は前月比1.4%増となり、予想の-0.2%、3月の-1.2%と比べ増加した。自動車用燃料販売を除いたコア小売売上高は、予想の-0.2%、前回の-0.9%に対し、前月比1.4%増となった。

年率換算では、4月の英国小売売上高は予測-7.2%、前回-1.3%に対して4.9%減、コア小売売上高は予測-8.4%、前回-0.2%に対して6.1%減となった。

さらに、イングランド銀行(BOE)のチーフエコノミストであるヒュー・ピル氏は、金融政策引き締めはまだ先が長いと警告している。

また、「金融政策委員会(Monetary Policy Committee =MPC)は、予測期間の後半において、インフレ基準値を取り巻くリスクには、上方偏向があると見ている。"

■さらなる上昇の可能性
現在、ポンド・米ドルの主要な上値抵抗線(レジスタンス)は、1.25ドル付近にあるように思われる。強気派(ブル)がこのレベルより上で相場を押し上げることに成功した場合、1.26ドルまたは1.2650ドルに向けてさらなる上昇を見せる可能性がある。

下降局面では、1.24ドル台が重要な下値支持線(サポート)として機能することになりそうだ。このレベルより上で取引されている限り、短期的な見通しは強気であると考えられる。ポンドがこの水準を下回る場合、1.22ドル付近の現在の安値に回帰する可能性がある。

日足チャートは、最近の大幅下落を考慮するとまだ売られすぎの状態であり、何らかの好材料があれば、売りポジションを買い戻す動き(ショートカバー)が進むと思われる。

GBPUSD Remains Near 1.25, Awaits Impetus for Movement

ポンド・米ドルデイリーチャート 5月20日(CET・中央ヨーロッパ時間)

引用元: “GBPUSD Remains Near 1.25, Awaits Impetus for Movement” (2022年5月20日, AXIORY Global Market News)           

追記:5月23日、日本時間6:00のポンド・米ドルは1.2491-1.2496ドルで取引されている

この記事をシェアする
アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


もっと読む
クッキー(Cookie)について: お客様が本ウェブサイトにアクセスする際、セキュリティの確保やお客様に関する情報を取得することを目的に、クッキー(Cookie)を使用する場合があります。 本ウェブサイトにお客様が継続的に訪問する場合、クッキーについて同意することと見なします。またクッキーはいつでも削除することが可能です。
FAQ お問合せ サポートデスク
月曜日-金曜日
9:00-24:00