ECB理事会受け、ユーロ売り強まる

【米国】

為替(6月10日6時01分)
 米ドル円(USDJPY) 134.32-134.39 (円)
 ユーロ円(EURJPY) 142.59-142.69 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 1.0615-1.0618 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY) 167.79-167.96 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.2491-1.2499 (米ドル)

6月9日のニューヨーク外国為替市場では、欧州中央銀行(ECB)理事会が開催され、7月1日に量的緩和を終了し、7月中に0.25%の利上げ実施を発表した。5月31日に欧州委員会統計局が発表した3月ユーロ圏の消費者物価指数が8.1%となり、インフレ抑制に向けた早急な金融正常化に向けた動きが期待されていたが、予想を下回る内容となった。詳しくは、本稿最後のマーケットアナリティクスでも分析しており、合わせて参照いただきたい。

なお、ラガルドECB総裁は理事会後の会見で「インフレは当面は望ましくない水準に高止まりする」「インフレを巡るリスクは主として上方向」と厳しい状況であることを示した。さらに「9月以降も緩やかだが持続的な追加利上げの道筋が適切になる」との考えも示している。

また、朝方に発表された前週分 新規失業保険申請件数(結果:22.9万件、予想:21.0万件、前回:20.0万件)は、1年ぶりに大幅に増加した。メモリアルデー(戦没者追悼記念日)の連休を含んだ影響から変動が大きくなっている。なお、前週分 失業保険継続受給者数(結果:130.6万件、予想:130.5万件、前回:130.9万件)は、ほぼ横ばいだった。

ユーロ・米ドル(EURUSD)は、ECB理事会後は利上げ決定の安堵感から、この日の高値1.0774ドルを付けた。しかし、資産購入プログラム(APP)の純資産購入を終了したものの債券売却に及ばず、ユーロ圏の景気鈍化への懸念が強まり5月23日以来の安値1.0611ドルまで売られ終値は1.0617ドルだった。

米ドル・円(USDJPY)は、東京市場で2002年2月以来、20年4カ月ぶりの高値134.56円を更新した反動から利益確定売りにつながり、この日の安値133.19円に値を下げた。新規失業保険申請件数の増加も投資家心理が冷え込んだ影響がわずかに及んでいる。その後は、ユーロ・米ドルの下落による米ドル買いの強まりや日米の金融政策の違いから米ドル買いが強まり134.45円まで値を戻し134.36円で終えた。なお、明日発表の米5月消費者物価指数に注目が高まっており、市場予想を上回れば、更なる米ドル買いが進み135円を超える可能性が強い。

ユーロ・円(EURJPY)は、ECB理事会直後は144.08円まで値を上げた。その後、ユーロ圏の景気回復への疑念が強まり、この日の安値142.35円まで値を下げた。その後は、小幅に戻し終値は142.64円となった。

株式
 NYダウ平均 USD 32,272.79 -638.11 (-1.93%)
 NASDAQ総合  USD 11,754.226 -332.045 (-2.74%)
 S&P500     USD  4,017.82 -97.95(-2.37%)

6月9日の米株式市場のダウ工業株30種平均は前日の終値を連日で下回った。ECBが7月に金融引き締めと利上げを決定し、欧州の景気減速が世界全体の景気に与える影響が懸念された。長期金利が3.073%まで上昇したことも影響が大きかった。10日に発表されるCPIを前に機関投資家がリスク回避の売りを入れた影響あり、ほぼ終日で前日の終値を下回った取引となり3指数全て下げている。

債券
 米国債10年 3.046%(+0.017)

商品
 NY原油(WTI) 1バレル=USD 121.51 -0.60(-0.49%)(7月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,852.8 -3.70(-0.20%)(8月渡し)
 

【日本】円安加速し、米ドル・円は135円目前に

為替(17時)
6月9日の東京外国為替市場では、連日で円安基調が続いている。朝方は円安に振れ、利益確定売りに押されたものの、高値圏にとどまっている。

米ドル・円は、朝方に連日で20年ぶりの高値を連日で更新し134.56円まで値を上げた。2002年2月以来、20年4カ月ぶりの高値を更新した。その後は、利益確定売りや持高調整が入り小幅に値を下げ17時時点では133.47円となった。

ユーロ・円は、朝方は上昇したが、利益確定売りに押され徐々に値を下げた。足元では、5月30日から8営業日で8円程上昇し、7年ぶりの安値付近から回復している。17時時点では142.84円となった。

ユーロ・米ドルは、ECB理事会を控え様子見の姿勢が強まり大きな動きが出ず、ほぼ横ばいで推移した。17時時点では1.0702ドルだった。

債券
 国債先物・22年9月限 149.20(+0.04)
 10年長期金利 0.245%(変化なし) 
 

【マーケットアナリティクス】ECBがハト派的な決定を下し、ユーロ・米ドルは下落(6月9日)

木曜日の米国時間中に投資家心理が悪化し株価が下落したが、トレーダーはECBの決定に最も注目し、ユーロ・米ドル(EURUSD)に影響を与えた。

この日の未明、ECBは金利を据え置いたが、資産買い入れプログラムを終了させた。理事会では、2022年7月1日付で資産購入プログラム(APP)の純資産購入を終了することを決定している。

しかし、FRBがすでに発表しているような量的引き締め、債券売却に関する可能性については触れられなかった。理事会はAPPの下で購入した満期を迎える証券の元本支払いを、長期間にわたって全額再投資し続ける意向を示している。そしてECBは7月中にわずか25bps(0.25%)の利上げの実施に留めた。一方でインフレ予想を大幅に上方修正したが、成長予想は下方修正した。

新たなECBのスタッフ予測では、2022年の年間インフレ率を6.8%と見込んでいるが、2023年には3.5%、2024年には2.1%と、3月の予測よりも低下することが予測している。

一方、欧州中央銀行は2022年の成長率予測を3.7%から2.8%に、2023年は2.8%から2.1%に引き下げた。さらに、2024年については1.6%から2.1%に修正されている。

全体的に、市場はこの発表を好ましく思っていない。高インフレの状況下で7月の利上げが予想を下回っている上、予想ではインフレ期待が高まり、成長予測を引き下げたことでユーロ・米ドルは再び下落トレンドに入り、1.0640ドル付近の0.7%減の取引となった。

引用元: “EURUSD Drops amid Dovish ECB Decision” (2022年6月9日, AXIORY Global Market News)

追記:6月10日、日本時間6:01のユーロ・米ドルは1.0615-1.0618ドルで取引されている

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アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


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