米経済指標から金融引き締め観測がさらに強まる

2022/06/13 6:45 JST投稿
 
 

【今週の見通し】(6月13日-6月17日)
先週は日本と欧米の金融政策の違いが意識され、米ドル・円では20年ぶりの高値を6月6日から10日まで連日で更新した。引き金となったのは、日本銀行の黒田総裁による金融緩和を継続するハト派的な姿勢の表明だ。この発言から日米の金融政策の違いが際立ち、米長期金利が上昇した。利益確定売りが出て値を下げる場面もあり、最終的には6月9日に2002年2月以来、20年4ヵ月ぶりの高値134.56円を更新している。
 
さらに、6月10日に発表された米5月消費者物価指数(CPI)では、市場予想を上回り40年ぶりの高水準になった。しかし、6月 ミシガン大学消費者信頼感指数が70年ぶりの最低水準となり、景況感が悪化し境目の135円は超えられなかった。
 
円は全面安が続いておりユーロ・円も連日で高値を更新し、最終的には6月8日に2015年1月以来、7年5ヵ月ぶりに高値を更新し144.25円を付けている。
 
今週の最大の注目イベントは、6月14、15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)だ。CPIの結果から市場では0.75%の利上げ予想が浮上しており、各メンバーによる金利予想(ドットチャート)で9月以降の利上げが継続する姿勢が示されるか否かに注目が高まっている。さらに、6月16日には、英国でも金融政策委員会が開催される。足元では経済的に苦境に立たされており、高インフレに対応する大幅な利上げを実施した場合はポンド・円で更なる円安が進む可能性も大きい。
 
また、6月16日、17日には、日銀の金融政策決定会合が実施される。黒田総裁は金融緩和の継続を強調しており、会合後の会見に注目が高まる。
 
主な金融スケジュール
・6月14日:6月独ZEW期待指数、5月米生産者物価コア指数、米連邦公開市場委員会(FOMC、15日まで)
・6月15日:5月中鉱工業生産指数、5月中小売売上高、5月米小売売上高、6月米ニューヨーク連銀製造業景気指数、6月米NAHB住宅市場指数、FOMC政策金利発表、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長会見
・6月16日:5月日貿易収支、日銀金融政策決定会合(17日まで)、5月中新築住宅価格、英中央銀行金融政策委員会(MPC)・政策金利発表、5月米住宅着工件数、6月米フィラデルフィア連銀製造業景況指数
・6月17日:黒田日銀総裁会見、5月米鉱工業生産指数、5月米設備稼働率、5月米景気先行指数
・6月19日:フランス議会選挙第2回投票(決戦投票)
 
予想レートは米ドル・円が132円半ばから136円前半。ユーロ・米ドルが1.03ドル前半から1.06ドル前半。

 

【米国】

為替(6月13日6時00分)
 米ドル円(USDJPY)    134.38-134.46 (円)
 ユーロ円(EURJPY)    141.36-141.43 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 1.0517-1.0521 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY)    165.41-165.60 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.2314-1.2323 (米ドル)
 
6月10日のニューヨーク外国為替市場では、米5月消費者物価指数(CPI)の影響が大きかった。前年比(結果:8.6%、予想:8.3%、前回:8.3%)で40年ぶりの大きさを示し、高インフレが続いていることが示された。変動の大きい食品・エネルギー除くコア指数(前月比、結果:6.0%、予想:5.9%、前回:6.2%)となっている。この結果から、利上げが加速することが示された。これらの結果から6月の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.75%の利上げ予想が浮上したほか、9月のFOMCの0.5%の利上げ予想がさらに強まった。
 
その後、6月 ミシガン大学消費者信頼感指数(結果:50.2、予想:58.8、前回:58.4)が発表された。2カ月連続低下し、統計開始の1952年以来、70年ぶりの水準となった。消費者の46%がインフレを景況感悪化の理由として、ガソリン価格の上昇による影響が大きいと答えている。通常であれば、活況な労働市場から低下しづらい状況だが、5月の消費者物価指数(前年同月比8.6%上昇)が40年5カ月ぶりの水準となり消費者心理に影響を及ぼしている。
 
米ドル・円(USDJPY)は、5月米CPIが予想を上回り、米連邦準備理事会(FRB)の積極的な金融政策正常化を推し進めるとの見方が強まり、長期金利が3.178%まで上昇した。これを受け米ドル買いが強まった。ミシガン大学消費者信頼感指数が発表されると、小幅に値を下げたが持ち直した。この日の高値134.48円まで値を上げ、134.41円で終えた。
 
ユーロ・米ドル(EURUSD)は、CPIの結果による米ドル買いの強まりを受け、5月19日以来の安値1.0506ドルを付けた。その後は、小幅に値を戻し終値は1.0519ドルとなった。
 
ユーロ・円(EURJPY)は、経済指標結果から株価が全面安となった影響を受けリスク回避の円買いにつながり、この日の安値140.80円を付けた。その後は、小幅に値を上げ終値は141.35円だった。
 
株式
 NYダウ平均  USD 31,392.79 -880.00 (-2.72%)
 NASDAQ総合  USD 11,340.024  -414.202 (-3.52%)
 S&P500      USD  3,900.86  -116.96(-2.91%) 
 
6月10日の米株式市場のダウ工業株30種平均は前日の終値を3日連続で下回った。CPIが市場予想を上回りインフレ加速が示された。また、ミシガン大学消費者態度指数が史上最低を記録した影響も大きく、消費関連銘柄や景気敏感株が売られ、終了間際に900ドル付近まで値を下げた。全般的に売りが出ている中で、景気に動向に左右されにくいディフェンシブ銘柄は買われている。
 
債券
 米国債10年 3.165%(+0.123)
 
商品
 NY原油(WTI) 1バレル=USD 120.67 -0.84(-0.69%)(7月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,875.5  +22.70(+1.26%)(8月渡し)
 
 

【日本】財務省、金融庁、日銀の3者会談への警戒高まる

為替(17時)
6月10日の東京外国為替市場は、5月米消費者物価指数の発表を控えている上、財務省、金融庁、日銀の3者会談への警戒が高まった。会談後に急速な円安進行について「憂慮している」との認識を共有している。終了後に声明文を発表し、「為替相場はファンダメンタルズ(基礎的条件)に沿って安定的に推移することが重要であり、急速な変動は望ましくない。為替市場の動向や経済・物価への影響を、一層の緊張感を持って注視していく」と述べている。また、為替政策に関し、「各国通貨当局と緊密な意思疎通を図りつつ、必要な場合には適切な対応をとる」とけん制した。
 
米ドル・円は、高値圏での推移が続き、利益確定売りに押された。朝方から徐々に値を下げ、一時的に値を戻す場面もあったが、この日の安値133.37円まで売られた。財務省、金融庁、日銀の3者会談後の声明文を受けた影響も大きかった。その後は5月米消費者物価指数の発表前に買い直しが入り、17時時点では133.60円となった。
 
ユーロ・円は、米ドル・円につられ徐々に値を下げ、この日の安値141.83円までユーロが売られた。小幅に値を戻し17時時点では141.95円となったが、売りが続いている。
 
ユーロ・米ドルは、小幅に値を上げ、この日の高値1.0642ドルまで値を上げた。欧州勢参加後に、利益確定売りが入り、小幅に値を下げ17時時点では1.0625ドルだった。
 
債券
 国債先物・22年9月限  149.03 (-0.17)
 10年長期金利  0.250%(+0.005)

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アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


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