日銀緩和継続により円安トレンド続く

【今週の見通し】(6月20日-6月24日)
先週は、6月15日の連邦公開市場委員会(FOMC)でのインフレ抑制に向けた大幅な利上げの実施を皮切りに、6月16日に香港、英国、スイスが利上げを実施した。この動きを受け、世界的なリセッション(景気後退)懸念が高まりリスク回避のリスクオフの姿勢が強まっている。

スイスの利上げを受け日銀の金融政策転換への期待が出たが、金融政策決定会合では金融緩和政策の継続を決定した。これにより、欧米との金利差が意識され円安トレンドが続いており、この流れは当面続きそうだ。

6月23日に発表される製造業・サービス業PMIが市場予想を下回った場合は、各国の中央銀行がタカ派的な姿勢を弱める可能性があり注目が高まる。特に英国で、その傾向が強まる可能性が強いだろう。

主な金融スケジュール
・6月20日(月):米休場(ジューンティーンスの振替休日)
・6月21日(火):米中古住宅販売件数(5月)、米クリーブランド連銀総裁が講演
・6月22日(水):日銀政策委員会・金融政策決定会合議事要旨(4月27、28日分)、参院選公示(投開票7月10日)、英消費者物価コア指数(5月)、欧ユーロ圏消費者信頼感指数(6月)、米パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が上院銀行委員会で議会証言、米シカゴ連銀総裁が講演
・6月23日(木):製造業・サービス業PMI(6月、日、欧、米、英)、米パウエルFRB議長が下院金融委員会で議会証言、米FRBがストレステスト結果公表、欧首脳会議(24日まで)
・6月24日(金):独IFO企業景況感指数(6月)、米新築住宅販売件数(5月)、米サンフランシスコ連銀総裁が講演
・6月26日(日):G7サミット(ドイツ・エルマウ城、28日まで)

予想レートは米ドル・円が132円前半から137円前半。ユーロ・米ドルが1.02ドル前半から1.06ドル後半。

【米国】

為替(6月20日6時00分)
 米ドル円(USDJPY) 134.85-134.95 (円)
 ユーロ円(EURJPY) 141.59-141.65 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 1.0493-1.0499 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY) 164.81-164.99 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.2217-1.2226 (米ドル)

6月17日のニューヨーク外国為替市場では、日本時間に日本銀行が金融政策緩和の継続を示し、主要中銀との乖離が意識された。欧米との金利差への意識がさらに高まっている。

朝方に発表された経済指標では、5月 鉱工業生産(前月比、結果:0.2%、予想:0.4%、前回:1.1%)が予想外に低下し、4ヵ月ぶりのマイナスを記録した。背景には供給網問題や高インフレによる需要の鈍化がある。なお、設備稼働率(結果:79.0%、予想:79.2%、前回:79.0%)でも、予想を下回った。

米ドル・円(USDJPY)では、朝方は弱い経済指標結果から値を下げたが、長期金利が3.313%に上昇すると米ドル買いが強まった。徐々に値を上げたが、6月14日の高値135.43円(1998年10月以来、約24年ぶり)と6月15日の日本時間の高値135.59円(1998年10月以来、約24年ぶり)が上値抵抗線(レジスタンス)として意識された。そのため、135.43円でとどまった。その後はジューンティーンスによる3連休を控えた持ち高調整などから小幅に値を下げ、終値は135.02円だった。

ユーロ・米ドル(EURUSD)は、朝方は米長期金利の上昇を受け、この日の安値1.0445ドルを付けた。その後は持ち直し終値は1.0499ドルとなった。

ユーロ・円(EURJPY)は、日銀の金融緩和継続を受け欧州中央銀行(ECB)との金利差が意識されユーロ買いが優勢だった。しかし、米ドル・円とユーロ・米ドルの影響を同時に受け値動きが出づらかった。3連休を控えた持ち高調整も入り、値を上げづらく141.70円で終えた。

株式
 NYダウ平均 USD 29,888.78 -38.29 (-0.12%)
 NASDAQ総合  USD 10,798.350 +152.251 (+1.43%)
 S&P500     USD  3,674.84 +8.07(+0.22%)

6月17日の米株式市場のダウ工業株30種平均は連日で前日の終値を下回った。FRBの金融引き締めから景気悪化への懸念が強まり2020年12月以来の安値を更新した。6月19日のジューンティーンスを受けた祝日により3連休から持高調整が入った影響も大きかった。また、朝方に長期金利が3.313%に上昇したことや原油価格の下落による心理的な影響もあり、値動きが大きい日となっている。一方で、割安感が感じられたハイテク株の買い戻しが、下値を底上げした。

債券
 米国債10年 3.231%(-0.074)

商品
 NY原油(WTI) 1バレル=USD 109.56 -8.03(-6.83%)(7月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,840.6 -9.30(-0.50%)(8月渡し)
 

【日本】日銀は大規模金融緩和を継続

為替(17時)
6月17日の東京外国為替市場に影響を与えた出来事は、6月16、17日に開催した日銀の金融政策決定会合で金融緩和政策の継続を決定したことだ。中国の都市封鎖を受けた供給網問題の長期化やウクライナ戦争による景気後退を、大規模な金融緩和政策の継続によって支える。

黒田東彦総裁は、「最近の急激な円安は経済にとってマイナス」との認識を示し、「金融・為替市場の動向や経済や物価への影響を十分に注視する必要がある。為替をターゲットに政策を運営することはない」と述べた。一方で、物価を安定させることを優先し、現時点で金融引き締めを行うのは適切ではないとの認識を改めて強調している。

米ドル・円は、朝方は前日のスイス中銀の利上げを受け日銀の金融政策決定会合での金融政策の転換への期待が高まりから円買いが強まり、この日の安値132.17円を付けた。そして、上昇に転じたものの日銀の金融緩和政策継続の決定が伝わると、133.37円付近まで円買いが強まった。しかし、日米の金利差が意識されると徐々に米ドル買いに転じた。さらに、黒田総裁の会見を受け米ドル買いが高まり134.59円まで上昇するなど、価格変動(ボラティリティ)が高まる場面もあった。その後は、小幅に値を下げ17時時点では134.29円となった。

ユーロ・米ドルでは、前日の英国やスイスでの利上げを受け、リスク回避の米ドル買いが強まり徐々に値を下げた。欧州勢参加後にさらに米ドル買いが強まり、この日の安値1.0494ドルまでまで値を下げたが、小幅に持ち直し17時時点では1.0517ドルで取引されている。

ユーロ・円は、米ドル・円の動きにつられた。日銀が金融緩和継続を決定するとユーロ買いが強まり、この日の高値141.73円まで値を上げた。その後は、利益確定売りが出て17時時点では141.23円だった。

債券
 国債先物・22年9月限 147.43 (+0.22)
 10年長期金利 0.220%(-0.030)

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アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


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