低調な経済指標から長期金利低下へ

【米国】

為替(6月29日6時00分)
 米ドル円(USDJPY) 136.13-136.15 (円)
 ユーロ円(EURJPY) 143.23-143.25 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 1.0515-1.0521 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY) 165.81-165.90 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.2183-1.2186 (米ドル)

6月27日のニューヨーク外国為替市場に影響を与えたのは、コンファレンス・ボードが発表した6月 消費者信頼感指数(結果:98.7、予想:100.4、前回:106.4)だ。2021年2月以来の低水準となった上、今後6カ月の見通しを反映する期待指数は66.4と、ほぼ10年ぶりの水準に低下している。

また、同時刻に発表された6月リッチモンド連銀製造業指数(結果:-19、予想:-5、前回:-9)は、コロナウイルス感染拡大による経済封鎖開始直後の2020年5月来で最低を記録した。4月から2カ月連続のマイナスとなっている。これらの結果を受け、リスク回避の長期債が買われ、長期金利が3.258%から3.172%に低下した。

なお、米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での75bp(ベーシスポイント、0.75%)の追加利上げの可能性を含め、景気とインフレを減速させるために速いペースでのさらなる利上げを支持すると述べた。さらに、米国が景気後退(リセッション)に陥ることは想定していないと補足している。

また、ポルトガルのシントラで欧州中央銀行(ECB)の年次フォーラムが開催されており、冒頭でラガルド総裁が挨拶した。7月にまず0.25%の利上げする意向を改めて言及し、インフレ抑制がさらに必要な場合は、より踏み込んだ行動を取る用意があると述べた。

米ドル・円(USDJPY)では、朝方は長期金利が3.258%まで上昇し米ドル買いが優勢となり136.32円まで値を上げた。しかし、米経済指標が低調となり、136.05円まで値を下げた。その後は大きな動きが出なかったが、日米金利が意識されると米ドル買いが強まった。この日の高値136.38円まで値を上げたものの、上値抵抗線(レジスタンス)として6月22日の24年ぶりの高値(136.71円)が意識されるとそれ以上の上昇は抑えられた。長期金利が3.1%台後半で推移したことも上値を抑えた要因で、終値は136.14円だった。

ユーロ・米ドル(EURUSD)は、決済に向けた米ドル買いが強まり欧州時間から徐々に値を下げ、朝方に、この日の安値1.0504ドルまで値を下げた。ラガルド総裁の発言からユーロ圏の高インフレによる景気後退が改めて意識され、投資家心理に影響を与えていることも大きかった。その後は小幅に値を戻し、1.0519ドルで終えている。

ユーロ・円(EURJPY)は、欧州時間にこの日の高値144.28円まで値を上げたが、欧州の景気に対する懸念や株価の下落からリスク回避の動きが強まり徐々に値を下げ、143.10円まで値を下げた。その後は日本の金融政策との立場の違いが意識されると値を戻し、終値は143.19円となった。

株式
 NYダウ平均 USD 30,946.99 -491.27 (-1.56%)
 NASDAQ総合  USD 11,181.540 -343.011 (-2.97%)
 S&P500     USD  3,821.55 -78.56(-2.01%)

6月28日の米株式市場のダウ工業株30種平均は前日の終値を連日で値を下げた。朝方は中国のコロナウイルスに対する行動制限を受け、投資家心理が上向いた。その後は6月の米消費者信頼感指数が低下し、投資家心理が冷え込み昼前に前日の終値を下回り、幅広い銘柄が売られている。最終的には、3指数揃って値を下げ終えた。

債券
 米国債10年 3.177%(-0.017)

商品
 NY原油(WTI) 1バレル=USD 111.76 +2.19(+2.00%)(8月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,821.2 -3.60(-0.20%)(8月渡し)
 

【日本】大きな動き無く小幅な動きに留まる

為替(17時)
6月28日の東京外国為替市場では、大きな動きは出なかった。一方で、米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めが景気後退につながるとの懸念から投資家心理にリスク回避の動きも出ている。

米ドル・円は、朝方に決済向けの米ドル買いが入り小幅に値を上げたものの、リスク回避の円買いに転じ、この日の安値135.11円を付けた。その後は、原油高や米長期金利の上昇もから持ち直し、17時時点で135.75円となった。

ユーロ・円は、朝方は決済に向けた買いが入り小幅に値を上げるも、リスク回避の動きが出て値を下げた。その後は、米長期金利の上昇から投資家心理が上向きリスクオンのユーロ買いに転じ、17時時点では143.68円で取引されている。

ユーロ・米ドルは、大きな動きがなく1.0575ドル付近でほぼ横ばいで推移した。欧州勢参加後は、米長期金利が上昇すると値を上げ、この日の高値1.0606ドルに値を上げ17時時点では1.0584ドルだった。

債券
 国債先物・22年9月限 148.50 (-0.02)
 10年長期金利 0.230%(変化なし) 
 

【マーケットアナリティクス】ユーロ・円は再びサイクルハイに押し上げられる(6月28日)

火曜日にユーロ・円は上昇を続け、さらに0.5%上昇した。米ドル・円とユーロ・米ドルの両方が高く取引され、ユーロ・円の支援となり144円を超える新たな周期の高値(サイクルハイ)を突破しようとした。

■ラガルド委員長は台本に忠実
ポルトガルのシントラで開催されたECB中央銀行フォーラム2日目の冒頭に、欧州中央銀行(ECB)のクリスティーヌ・ラガルド総裁が発言し注目が高まった。ECBは7月に25bp(bp=ベーシスポイント、0.25%)の利上げを行い、9月にはさらに利上げを行うオプションがあることを明言した。インフレ予想が変わらなければ、中央銀行は迅速に行動するための用意があることを示した。よって、9月以降の追加利上げは「緩やかだが持続的」とみられる。

一方、国内経済ではインフレ圧力の高まりと広がりが見られる。そのため、景気に影響を与える供給網の問題が長引く可能性がある。

■強気のブレイクアウト
144円を飛び越えた場合、より大きなストップロス(損失回避に向けた損切り)が発生する可能性があり、2014年12月以来の高値である145円台に向かって急速に上昇する可能性が高い。4時間足チャートは、6桁の可能性を秘めた三角持ち合いパターン(※)のように見え、中期的には境目の150円をターゲットにする可能性が高い。

あるいは、142円付近がサポートとなり、138-140円付近が中期的な需要ゾーンとなりそうだ。これまでのところ、当面の見通しは強気(ブル)であると思われる。

(※)三角持ち合い:売買が盛んで値動きが大きかった銘柄や通貨の勢いが日を追うごとに次第に衰え、徐々に売りと買いの値幅が小さくなる状況を表す。時間足チャートでは先細りする状況に陥る。
      ユーロ・円、デイリーチャート 6月28日(CET・中央ヨーロッパ時間)

引用元: “EURJPY Pushes to Cycle Highs Again” (2022年6月28日, AXIORY Global Market News)

追記:6月29日、日本時間6:00のユーロ・円は143.23-143.25円で取引されている

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アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


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