【今週の見通し】(7月4日-7月8日)
先週の6月29日のニューヨーク外国為替市場で、積極的な利上げに向けたタカ派的な発言から米ドル・円が1998年9月以来、約23年9ヵ月ぶりの高値を更新し137.01円を付けた。それ以降は、利益確定売りや世界的な景気後退観測への懸念からリスク回避の動きが強まり値を下げた。また、7月4日の独立記念日の祝日による3連休を控え、7月1日は値を上げづらい状況だった。
なお、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は6月29日に欧州中央銀行(ECB)年次フォーラムで、行き過ぎた利上げによりリセッション(景気後退)を招くより、高インフレの抑制に失敗するリスクへの懸念のほうが大きいとの考えを示した影響も大きい。FRBは3月以降に3度の利上げを実施し、6月15日にフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを1.5~1.75%に引き上げた。パウエル議長を筆頭に複数のFRB当局者が、次回の連邦公開市場委員会(FOMC、7月26、27日)で大幅利上げを再び実施することが必要と示唆している。
今週は7月6日の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録の公開、6月ISM非製造業景況指数、7月8日の米雇用統計に注目が集まる。
日銀が緩和の姿勢をかたくなに貫いており、欧米との金融政策の違いが意識され引き続き円が買われ、利益確定売りという流れは続くものと思われる。
主な金融スケジュール
・7月4日(月):米・独立記念日による休場、米ISM非製造業景況指数(6月)、ユーロ圏生産者物価指数(5月)
・7月5日(火):中国財新サービス業PMI(6月)、豪準備銀行政策金利発表
・7月6日(水):ISM非製造業PMI(6月)、FOMC議事要旨(6月14、15日開催分)
・7月7日(木):米貿易収支(5月)、米ADP雇用統計(6月)
・7月8日(金):米雇用統計(6月)
・7月10日(日):参議院議員選挙投開票日
予想レートは米ドル・円が134円前半から136円半ば。ユーロ・米ドルが1.02ドル前半から1.05ドル後半。
【米国】
為替(7月4日6時00分)
米ドル円(USDJPY) 135.22-135.27 (円)
ユーロ円(EURJPY) 141.04-141.11 (円)
ユーロ米ドル(EURUSD) 1.0426-1.0428 (米ドル)
ポンド円(GBPJPY) 163.56-163.68 (円)
ポンド米ドル(GBPUSD) 1.2093-1.2095 (米ドル)
7月1日のニューヨーク外国為替市場では、7月4日の独立記念日の祝日による連休前で値を上げづらい状況だった。世界的な景気後退懸念による影響も大きかった。
朝方に発表された6月米ISM製造業景気指数(結果:53.0、予想:55.3、前回:56.1)は、2年ぶりの低水準となった。新規受注が49.2と2020年5月以来の低水準となり、活動の拡大と縮小の境目を示す50を下回った影響が大きかった。この結果を受け、長期金利が朝方の3.028%から2.791%に低下した。なお、債券市場は7月4日の独立記念日により時短取引だった。
米ドル・円(USDJPY)では、朝方に発表された経済指標を受け134.79円まで値を下げた。その後は買戻しが入るも、長期金利の低下や連休を控えた影響から値を上げにくい状況だった。135.21円で終えている。
ユーロ・米ドル(EURUSD)は、リスク回避の姿勢からドル買いが優勢となり、この日の安値1.0383ドルを付けたが、弱い米経済指標や米長期金利の低下からユーロが買い戻されると徐々に値を上げ、終値は1.0414ドルとなった。
ユーロ・円(EURJPY)は、地政学リスクや世界的景気後退のリスク回避の動きから、朝方にこの日の安値139.79円を付けた。その後は、米株価が持ち直した影響から投資家心理が上向きユーロが買われ終値は140.99円だった。
株式
NYダウ平均 USD 31,097.26 +321.83 (+1.04%)
NASDAQ総合 USD 11,127.845 +99.109 (+0.89%)
S&P500 USD 3,825.33 +39.95(+1.05%)
7月1日の米株式市場のダウ工業株30種平均は前日の終値を上回った。長期金利の低下から投資家心理が上向き幅広い銘柄が買われた。前日に大幅に値を下げた反動による景気敏感株の買いも大きかった。独立記念日の祝日による連休を前に、買戻しが入った影響もあり、3指数揃って値を上げ終えた。
債券
米国債10年 2.889%(-0.085)
商品
NY原油(WTI) 1バレル=USD 108.43 +2.67(+2.52%)(8月渡し)
NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,801.5 -5.80(-0.32%)(8月渡し)
【日本】世界的な景気後退懸念からリスク回避強まる
為替(17時)
7月1日の東京外国為替市場では、世界的な景気後退懸念から投資家のリスク回避の動きが強まり、安全資産を買う動きが強まった。
米ドル・円は、朝方に月初の決済向けた米ドル買いが入り135.98円まで値を上げた。しかし、世界的な景気後退や株安を受けたリスク回避の円買いが強まり徐々に値を下げ、この日の安値134.73円まで値を下げた。その後は値を戻し、17時時点で135.29円となった。
ユーロ・円は、朝方は決済に向けたユーロ買いが入りこの日の高値142.41円まで値を上げた。その後はリスク回避の動きが強まり、この日の安値140.82円まで値を下げた。しかし、小幅に値を戻し17時時点では141.33円となった。
ユーロ・米ドルは、地政学リスクや世界的な景気減速への懸念からリスク回避の米ドル買いが優勢だった。徐々に値を下げ、この日の安値1.0432ドルを付けた。その後は値を戻し、17時時点では1.0446ドルだった。
債券
国債先物・22年9月限 148.90 (+0.29)
10年長期金利 0.215%(-0.010)
【マーケットアナリティクス】ポンド・米ドルは、境目の 1.20を試す(7月1日)
世界的な景気後退懸念の中、ポンド・米ドルではトレーダーによる米ドル買いが優勢となった。ポンドは金曜日にさらに1.5%下落し、心理的な節目の1.20ドルまで下落した。
■英国経済はすでにリセッションに突入
コロナウイルスの感染拡大が始まって以来、英国の企業幹部は経済の状況がこれほど悲観的になったことはない。英・経営者協会が400人以上のCEOを対象に行った調査によると、経済的な信頼感を示す指標は6月にマイナス60まで下がり、4月のマイナス45から低下した。2020年初めに英国で初めてコロナウイルスの感染が確認されて以来、最も低い水準になったことが明らかとなった。
欧州委員会のマロシュ・シェフチョビッチ副委員長は、ブレグジット(英国のEU離脱)による英国経済の悪影響が「より明確に表れ始めている」と言及した。さらに、シェフチョビッチ氏は、2019年の水準と比較して、英国のEUへの商品・サービスの輸入が大幅に減少していると述べている。
この後発表される6月 ISM製造業景況指数(PMI)は、後半に新たな展開を迎えることができるか否か注目が高まっている。予想として5月の56.1から6月の55に低下するとみられている。また、支払価格指数も82.2から80.5へ低下すると予想されている。
■1.20割れが間近に
ポンドが1.20ドルを割り込むと、次のターゲットは現在の値幅(サイクル)の安値である1.1950ドルになる。しかし、弱気(ベア)の勢いから判断すると、下落はそこで止まらない可能性もある。その場合は、次のターゲットは1.18ドルとなる模様だ。
MACD指標(※)は再び弱気(ベア)シグナルを発信しようとしており、売られすぎの状態からは程遠いため、価格がさらに弱くなる余地を示唆している。
上昇局面では、現在1.22ドル付近にある短期下降トレンドラインを上回り、安定化することが必要だ。
※ MACD(マックディ)指標:「Moving Average Convergence Divergence」の略。相場の分析において過去の値動きから将来の値動きを予想するテクニカル分析の手法の一つ。 一定期間の平均値を線でつなぎ合わせた移動平均線を用い、価格の推移をグラフ化し短期と中長期の移動平均線の動きから早期の売買タイミングを判断するのに用いられる。
ポンド・米ドル、デイリーチャート 7月1日(CET・中央ヨーロッパ時間)
引用元: “GBPUSD Tests 1.20 Threshold” (2022年7月1日, AXIORY Global Market News)
追記:7月4日、日本時間6:00のポンド・米ドルは1.2093-1.2095ドルで取引されている