ECB利上げ観測からリスクオフの姿勢強まる

【米国】

為替(7月21日6時00分)
 米ドル円(USDJPY) 138.21-138.29 (円)
 ユーロ円(EURJPY) 140.62-140.80 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 1.0175-1.0180 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY) 165.62-165.66 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.1971-1.1980 (米ドル)

7月20日のニューヨーク外国為替市場では、明日の日銀金融政策決定会合や欧州中央銀行(ECB)理事会を控え、様子見の姿勢が強かった。

その中で、欧州関連のリスクが意識された。まず、イタリア政権が崩壊の危機を迎えている。ドラギ首相の信任投票が実施されたが、コンテ前首相が率いる連立の一角「五つ星運動」のほか、中道右派の「同盟」とベルルスコーニ元首相率いる「フォルツァ・イタリア」が投票を棄権している。ドラギ首相はおそらく辞任するとみられており、秋に総選挙が行われる見方が強まり政治の混乱が懸念されている。

さらに、パイプライン「ノルドストリーム」が明日保守点検を終える予定を控える中、プーチン大統領の発言に注目が高まった。プーチン大統領は、ノルドストリームでの天然ガスの供給再開を示唆したが、対ロ制裁措置の対象となっているパイプライン部品を巡る問題を解決しない限り、供給量は絞られると警告した。欧州ではエネルギー価格高騰が生活を圧迫し、高インフレの主要な要因となっている。ECBは明日の会合で、高インフレに向け積極的な金融引き締めを実施すると思われるが、この動きにより欧州の景気悪化への懸念が強まり投資家心理が弱まった。

また、6月英消費者物価指数(CPI、前年比、結果:9.4%、予想:9.3%、前回:9.1%)が、前月より大幅に上回り、1982年2月以来、40年ぶりの高水準となった。これを受け、イングランド銀行(英中央銀行)が来月0.5%の利上げを決定する可能性が高まった。ポンド・米ドル(GBPUSD)でポンドが買われ上昇し、1.1979ドルで終えている。

合わせて、6月米中古住宅販売件数(結果:512万件、予想:539万件、前回:541万件)と、予想、前回とも下回ったが、想定内の結果で影響は軽微だった。

2年債と10年債(長期金利)の利回りは、12日連続で逆転(逆イールド)している。終値ベースで2年債が3.236%、10年債が3.03%となった。

ユーロ・米ドル(EURUSD)では、欧州を取り巻くリスクが意識されユーロ売りが優勢となり、この日の安値1.0156ドルを付けた。その後は小幅に買い戻され、1.0180ドルで終えている。

ユーロ・円(EURJPY)は、投資家のリスク回避のリスクオフの姿勢が強まり、この日の安値140.43円まで円が買われた。その後は小幅に持ち直し終値は140.64円だった。

米ドル・円(USDJPY)は日銀金融政策決定会合を控え、積極的な取引は控えられ大きな動きは出なかった。朝方に長期金利が2.961%に低下し、138.03円まで値を下げた場面もあったが、138.21円で終えている。

株式
 NYダウ平均 USD 31,874.84 +47.79 (+0.15%)
 NASDAQ総合  USD 11,897.651 +184.503 (+1.57%)
 S&P500     USD  3,959.90 +23.21(+0.58%)

7月20日の米株式市場のダウ工業株30種平均は連日で上昇し、前日の終値を上回った。前日の夕方に発表されたネットフリックスの決算で契約者数の減少が予想を下回り投資家心理が上向いた。FRBの大幅な利上げ観測が後退したこともプラスとなり、ハイテク株中心に買いが優勢だった。好調な決算が見込まれる株にも買いが入り、3指数揃って値を上げ終えている。

債券
 米国債10年 3.03%(+0.011)

商品
 NY原油(WTI) 1バレル=USD 99.88 -0.86(-0.85%)(9月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,700.2 -10.50(-0.61%)(8月渡し)
 

【日本】日銀やECB会合控え持高調整優勢に

為替(17時)
7月20日の東京外国為替市場では、明日の日銀金融政策決定会合や欧州中央銀行(ECB)理事会を控え、機関投資家の持高調整による変動が中心だった。

米ドル・円は、朝方に日米金利差が意識され、この日の高値138.37円に上昇したが、その後は日銀やECBの金融政策会合を前に機関投資家の持高調整に押された。この日の安値137.90円まで値を下げたが、株価の上昇が好感され再び138.22円に戻すも17時時点では138.13円となった。

ユーロ・米ドルは、朝方は小幅な動きに留まっていたが、欧州勢参加後に、この日の高値1.0273ドルを付けた。その後は、欧州での景気後退リスクが意識され徐々に値を下げ17時時点では1.0226ドルだった。

ユーロ・円は、朝方はECBと日銀の金融政策の違いが意識され141.67円までユーロが買われた。その後は小幅に値を落としたが、欧州勢が参加すると、この日の高値141.93円まで値を戻した。しかし、欧州関連のリスクが意識されるとリスクオフの円買いに転じ、17時時点では141.25円で取引された。

債券
 国債先物・22年9月限 149.19 (-0.11)
 10年長期金利 0.240%(+0.005) 
 

【マーケットアナリティクス】EURUSD、明日をも知れぬパリティを守る(7月20日)

市場は株安や米ドル高が中心でうんざりしている。今こそ、回帰の時期だ!

ユーロ・米ドル(EURUSD)では、素晴らしい形で実現した。再びパリティ(平価)に近づいており、一時期「パリティ」という単語がツイッターなどでもトレンドワードになったほどだ。

高値に到達する前に、EURUSDはパリティから40ピップスにあった損切りライン(ストップロス)を払拭した。その後、相場は急騰し、3日連続で強気(ブル)を記録した。目下、私たちは4日連続の上昇を目指している。EURUSDが4日連続で強気な日を記録したのは、3月中旬のことで、7月に実現できるのだろうか?

テクニカル分析では、それが可能だと示している。2つの主要な上値抵抗線(レジスタンス)に到達するまで、まだ余力がありEURUSDはチャート上で始値よりも終値が高いローソク足が出現する見込みだ。これらのレジスタンスは1.036ドル(青)と長期下降トレンドライン(赤)となっている。これは磁石のように動作するはずで、我々はそれらに到達する可能性が非常に高いとみている。

今後、起こることを予想するのは、宝くじに当選するほど困難な状況だ。しかし、この2つのレジスタンスを突破すれば短期的に投資家心理が上向き、それは中期的なトレンドに変化するだろう。一方、それが跳ね返された場合は調整の終わりを意味し、確立された長期的な弱気(ベア)トレンドへの復帰となるだろう。

ユーロ・米ドル、デイリーチャート 7月20日(CET・中央ヨーロッパ時間)

引用元: “EURUSD Defending Parity Like There Is No Tomorrow” (2022年7月20日, AXIORY Global Market News)

追記:7月21日、日本時間6:00のユーロ・米ドルは1.0175-1.0180ドルで取引されている

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アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


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