止まらぬ円安 対ドルで150円も視野に

7:38 JST投稿

【米国】

為替(98600分)
 米ドル円(USDJPY)    143.73-143.77 (円)
 ユーロ円(EURJPY)    143.82-143.90 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 1.0028-1.0078 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY)    165.71-165.82 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.1531-1.1536 (米ドル)

97日のニューヨーク外国為替市場は、日本と米国の金融政策の違いが意識され、米ドルは東京市場の流れに続き24年ぶりの高値水準を更新した。1998826日と同水準の144.99円まで円安が進んでいる。ちなみに最も高い価格は、1998811日の高値147.66円で、この価格が上値抵抗線の目安の一つとなっている。

この日、値動きに影響を与えた出来事としては、ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)が「パウエル議長は失業率が上昇したとしても、インフレの制御を強く公約に掲げたため米連邦準備制度理事会(FRB)は9月米連邦公開市場委員会(FOMC)において3会合連続で0.75%の利上げする模様」と報じた。この報道から利上げ実施確率が上向いた。また、ブレイナード米FRB副議長が「インフレを押し下げるため、われわれは必要な限り対応を続ける」と言明。「インフレ率が目標に向けて低下しているとの確信をもたらすため、金融政策を当面、景気抑制的な水準にとどめる必要がある」と述べている。

また、FRB7日に公表した米地区連銀経済報告(ベージュブック)で物価高騰とタイトな労働市場が向こう1年間の米成長見通しに重しになったと指摘した。一方で、物価は依然高止まりで上昇基調ながら、12地区のうち9地区で物価上昇ペースがある程度鈍化したと報告。インフレがFRBの望む方向に進んでいること明らかとなっている。この発表後に長期金利が3.2482%に低下した。なお、パウエルFRB議長は8日に金融政策に関する討論会に参加する予定で、発言を注視したい。

朝方に発表された7月米貿易収支(結果:-707億ドル、予想:-701億ドル、前回:-796億ドル)では、4ヵ月連続で前月より赤字幅が縮小し、昨年10月以来の小ささだった。

2年債と10年債(長期金利)の利回りは、46日連続で逆転(逆イールド)している。終値ベースで2年債が3. 439%10年債が3.267%となった。

米ドル・円(USDJPY)は、日米金融政策の違いが意識され早朝に高値を更新し、144.99円まで値を上げた。心理的節目の145円が意識されると上昇が止まったが、WSJの報道や貿易赤字の縮小により堅調に推移した。しかし。ブレイナード米FRB副議長の発言やベージュブックでの物価上昇ペースの鈍化への言及が確認されると長期金利が低下し、米ドル売りが優勢となり徐々に値を下げ143.74円で終えている。

ユーロ・米ドル(EURUSD)は、プーチン大統領によるノルドストリームの再開に関する発言から投資家心理が上向いた。プーチン大統領は「タービンがあればあすにも供給を再開する。しかし、西側諸国が全て阻止している」と述べた。この発言から欧州の天然ガス価格が急激に下落し、ユーロ買いが強まった。また、翌日の欧州中央銀行(ECB)理事会で通常の3倍にあたる0.75%の利上げ観測も支えとなり、この日の高値1.0011ドルまで値を上げ、終値は1.0006ドルとなった。

ユーロ・円(EURJPY)は、日本の緩和継続姿勢からユーロ買いが強まった上、プーチン大統領のノルドストリームの再開に関する発言から堅調に値を上げた。629日以来の高値144.01円を付けた後は、翌日のECB理事会を控え横ばいで推移し、終値は143.85円だった。

株式
 NYダウ平均  USD 31,581.28 +435.98+1.39%
 NASDAQ総合 USD 11,791.900 +246.991 +2.13%
 S&P500   USD 3,979.87  +71.68+1.83%) 

97日の米株式市場のダウ工業株30種平均は、3日ぶりに前日の終値を上回った。株価の下落が続き売られ過ぎとの判断が出た上、長期金利の低下と原油先物価格の下落により、景気敏感株と消費関連株が買い戻された。3指数揃って値を上げ終えている。

債券
 米国債10年 3.267%-0.073

商品
 NY原油(WTI) 1バレル=USD 81.94 -4.94-5.69%)(10月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,727.8  +14.90+0.87%)(12月渡し)

【日本】米ドル・円 さらに24年ぶりの高値水準を更新

為替(17時)
97日の東京外国為替市場では、日米の金融政策の違いから再び米ドル・円で1998811日、約24年ぶりの高値147.66円と並ぶ水準を更新した。

政府関係者が口先介入を行なっているが影響は軽微だった。まず、鈴木俊一財務相は「急激な印象であり、円安方向に一方的に振れており憂慮している」と述べた。また「一方的な振れが継続なら必要な対応取る」としたが具体的な施策に関する言及は避けた。さらに松野博一官房長官は、「最近の為替市場では急速で一方的な動きが見られ、憂慮しており、高い緊張感を持って注視する」と述べている。

米ドル・円は、連日で約24年ぶりの高値を更新している。朝方から堅調に値を上げ14時前に144.38円を付けた。その後、小幅に値を下げた後は動きが停滞し、17時時点では143.90円となった。

ユーロ・米ドルは、小幅な動きに留まった。朝方から小幅に値を下げたが、14時頃から徐々に値を上げた。欧州勢参加後に時間外の米長期金利の低下が好感され、ユーロが買われ、この日の高値0.9928ドルまで値を上げた。17時時点では0.9923ドルで取引されている。

ユーロ・円は朝方に小幅に上昇後は徐々に値を下げたが、少しずつ地道に値を戻しユーロ・米ドルの上昇につられ14時ごろから堅調に値を上げた。この日の高値142.84円をつけ、17時時点では142.80円だった。

債券
 国債先物・229月限  149.27 -0.11
 10年長期金利  0.245%+0.010

【マーケットアナリティクス】AUDUSDは、前回の安値の必須サポートをテストする(97日)

この日の豪ドルは、さらに半減し投資家心理が悲観的になる中、2ヶ月ぶりの安値0.67付近で取引されている。

中国の経済指標が重しに
先に公開された中国の経済指標は、世界的な需要が低下し始めた8月に輸出が急激に減少したことが明らかとなり、世界的な景気後退への懸念を強めた。

税関の公式データによると、8月の輸出は前年同月比7.1%増で、専門家が13.0%増と予想していた7月の18.0%増から減少した。輸入の伸びも7月の2.3%から今日は0.3%に減少している。1.1%の伸びと予想されていた。

中国の貿易収支は過去最高だった7月の10126000万ドル、予想の927億ドルに対し、7939000万ドルとなった。季節調整済の輸出は前月比6.4%減で、7月の0.6%減から減少し、輸入は4.8%減となった。

パンテオン・マクロエコノミクスの中国担当チーフエコノミスト、クレイグ・ボサム氏は次のように述べている。「他国の貿易データに見られる世界的な景気減速を考慮すると、我々は以前から輸出の減少を予想しており、中国自身のデータはオミクロンによる都市封鎖(ロックダウン)の開始によって歪められている。輸出企業に対する補助金も、避けられない事態を遅らせる役割を果たしていると思われる。」

オーストラリアのGDPはまちまちな結果に
さらに、オーストラリアの第2四半期GDPは、市場コンセンサス3.5%、前回3.3%から3.6%増加したものの、予測1.0%、前回0.8%に対して0.9%となり、豪ドルは下げ止まった。

チャルマーズ財務相は「経済に対して希望を持てる理由がまだかなりある」という物価を支持する口先介入を行なったが影響は軽微だった。

豪ドルは現在、0.67付近の前のサイクル安値を試している。弱気(ベア)がこの下値支持線(サポート)より下に価格を押し下げた場合、大きな損切りの売り(ストップロス)が発生する可能性があり、0.65をターゲットにさらに価格を引き下げることになりそうだ。

または、短期的な弱気トレンドラインである0.6830を上回り、当面の売り圧力を打ち消す必要があるだろう。



豪ドル・米ドル、デイリーチャート 97日(CET・中央ヨーロッパ時間)

引用元: “AUDUSD Tests Essential Support of Previous Lows202297, AXIORY Global Market News

追記:98日、日本時間6:00の豪ドル・米ドルは0.6768-0.6769ドルで取引されている

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アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


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