英欧の景気悪化懸念から米ドル一強 強まる

2022/09/27 7:39 JST投稿
 

【米国】

為替(927600分)
 米ドル円(USDJPY)    144.70-144.76 (円)
 ユーロ円(EURJPY)    139.05-139.08 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 0.9609-0.9609 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY)    154.62-154.72 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.0685-1.0692 (米ドル)

926日のニューヨーク外国為替市場では、引き続き米ドル一強の状況が続いている。欧州や英国の景気後退懸念が強く、長期金利が上昇していることがプラスに作用した。一方で、日本の介入への警戒もあり、大幅に値が上がりにくい状況も続いている。

朝方に発表された9月 ダラス連銀製造業活動指数(結果:-17.2、予想:-8.0、前回:-12.9)では、予想外に悪化し、5ヵ月連続のマイナスが続いている。低調ながら欧州や英国の債権の低調による影響が強く、影響は軽微だった。

また、欧州時間に発表された9月独Ifo景況感指数(結果:84.3、予想:87.1、前回:88.5)は、予想以上に悪化し、20205月以来の低水準に落ち込んだ。エネルギー価格の上昇による輸入価格の押し上げが響き、4部門すべてが落ち込み景気後退に向かっていることが示唆された。

さらに、同様に欧州時間に発表された経済協力開発機構(OECD)の世界成長見通しでは、ウクライナ戦争の影響により、ほぼ全ての国や地域で成長率見通しを引き下げた。来年度は2.2%の成長にとどまり、前回(今年6月)から0.6ポイント下方修正した。上方修正したのはインドネシアのみで、米国は前年の1.5%から大幅に落ち込み0.5%となり、ユーロ圏は0.3%、英国は0%となった。日本は前年の1.6%から横ばいの1.4%となっている。

また、英トラス政権が1972年以来の大規模な減税を打ち出し、財政悪化への懸念が強まりポンドと英国債で大幅な売りが続いている。ポンドは対米ドルで東京時間に史上最安値(1.0350ドル)を付けた反動から戻り買いが入った上、英中央銀行が声明発表との報道から思惑買いも加わり、この日の高値1.0931ドルを付けた。その後、ベイリー総裁の会見から失望売りにつながり、再び1.0632ドルまで売られ、1.0678ドルで終えた。

ベイリー総裁は「金融市場の動向を非常に注意深く監視し、新たな経済対策がインフレ動向に与える影響やポンド相場の下落については、次回金融政策委員会(MPC113日)で検証する」と述べた。さらに「中期的にインフレ率を2%の目標に戻すために、必要に応じて金利を変更することを躊躇しない」と示唆している。

金融政策の影響を受けやすい2年債と10年債(長期金利)の利回りは、58日連続で逆転(逆イールド)している。終値ベースで2年債が4.345%10年債が3.928%となっている。長期金利は一時3.931%20104月以来、12年ぶりの高水準となった。2年債も上昇し、一時4.36%20078月、15年ぶりの高水準となり、さらに逆イールドが進んだ。

米ドル・円(USDJPY)では、朝方に9月 ダラス連銀製造業活動指数の弱い結果や世界的な景気後退が懸念され、一時143.80円まで値を下げた。その後は、長期金利の上昇や日米金融政策による金利差から買戻しが入り、この日の高値144.79円を付け、終値は144.75円だった。

ユーロ・米ドル(EURUSD)では、朝方に9月独Ifo景況感指数の低調な結果や独イタリア総選挙で極右政党を中心とする連合が勝利しEUとの関係への懸念から投資家心理を冷え込ませた。欧州や英の景気悪化やエネルギー高への懸念も強く、厳しい状況が続いている。この日の安値0.9600ドルまで売られたが、小幅に値を戻し終値は0.9609ドルとなった。

ユーロ・円(EURJPY)は、朝方は景気後退懸念やイタリア政局への不安から欧州時間に138.80円まで売られたが、日本との金利差が意識されると小幅に買戻しが入った。この日の高値139.52円まで値を戻したものの、ユーロ・米ドルにつられ低下すると値動きが減り139円を挟んだ横ばいで推移し、139.09円で終えた。

株式
 NYダウ平均  USD 29,260.81 -329.60-1.11%
 NASDAQ総合 USD 10,802.922 -65.004 -0.59%
 S&P500   USD 3,655.04  -38.19-1.03%) 

926日の米株式市場のダウ工業株30種平均は、5日連続で前日の終値を下回った。先週末の年初来安値(29,590.41ドル)を下回り、終日で3万ドルを下回る取引が続いた。高インフレへの対応による欧米の中央銀行の大幅な利上げにより長期金利が12年ぶりの水準に上昇しており、景気後退への懸念が、金融や景気敏感株の売りに向かわせている。長期金利の低下から1030分頃にプラス圏に上昇したものの、それ以外は全て前日の終値を下回る取引となった。

債券
 米国債10年 3.928%+0.231

商品
 NY原油(WTI) 1バレル=USD 76.71 -2.03-2.58%)(11月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,633.4  -22.20-1.34%)(12月渡し)
 

【日本】GBPUSD 英大幅減税への懸念から市場最安値更新

為替(17時)
926日の東京外国為替市場では、先週末の米国市場の流れを受け継ぎ堅調な取引だったが、政府の再介入への警戒感から様子見の姿勢も強まった。先週末に発表された英政府の50年ぶりの大型減税策を受けたリスクオフの姿勢も強まっている。

黒田日銀総裁は大阪経済4団体共催の懇談会後の記者会見で、「為替の急激な変動は経済にマイナスで望ましくない」と述べ、政府が922日に行った為替介入は適切との見解を示した。さらに、「経済・物価の下振れには躊躇なく金融緩和措置を講じる」と述べている。また、鈴木財務相も定例会見で「為替介入、一定の効果を認められたと思う」と述べ、「必要に応じて対応する考えに変わりはない」との見解を示した。

また、25日投開票されたイタリアの議会選挙で「イタリアの同胞(FDI)」などで構成する中道右派連合の勝利が確実になった。これを受け、メローニ党首がイタリア初の女性首相となり、第2次大戦後では最右翼の政権を率いる可能性が高まったことが不安視されている。メローニ氏はFDI2012年に立ち上げたばかりで、わずか10年の少数野党であることから今後の政局運営は未知数だ。今回、プーチン首相と親しいベルルスコーニ氏は首相時代にメローニ氏を最年少(31歳)で閣僚に選定しており、その流れで今回、両氏は連合を組んでいる。このことから、EUのみならず内政も不安定な状況に陥るのではなかろうか。欧州圏では、ドイツもショルツ首相が昨年12月に就任してから不安定な政局が続いており、更なる火種になりそうだ。

ポンドは、引き続き不安定な状況が続いている。対米ドルで午前中に一時、史上最安値を更新し4.7%安の1.0350ドルまで急落したが、持ち直し17時時点では1.0583ドルとなった。

米ドル・円では、朝方は小幅に値を下げるも堅調に値を上げた。連休明けの決済に向けた買いや、ユーロやポンドで米ドル買いが強まった影響から堅調に値を伸ばし、この日の高値144.26円まで上昇した。その後は、黒田総裁などの発言から上値が重くなり、小幅に値を下げ17時時点で143.82円となった。

ユーロ・米ドルは、朝方は決済に向けた買いや買戻しが入り、この日の安値0.9710ドルを付けた。その後はイタリアで極右政党が政権を取る可能性が濃厚となり、大幅に値を下げ、この日の安値0.9554ドルまで値を下げた。その後はポンドの買戻しなどにつられ、小幅に上昇し17時時点では0.9678ドルで取引されている。

ユーロ・円は、イタリア極右政党の舵取りへの不安から急激に値を下げ、この日の安値137.39円を付けた。その後は、すぐに持ち直し、徐々に値を上げ、17時時点では139.19円だった。

債券
 国債先物・2212月限  148.00 -0.69
 10年長期金利  0.245%+0.010

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アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


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