日本の円買い介入が行われ32年ぶりの高値から急落 

2022/10/24  7:15  JST投稿
 
【今週の見通し】(10月24日-10月30日)
米ドルが対円で10月14日以降、連日で32年ぶり高値を更新し、ついに10月20日に150円台に乗せた。日本政府の円買い介入の懸念もありつつ、堅調に値を上げ21日に一時152円手前まで上昇している。32年ぶりの高値を更新したが、その直後に、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の報道から徐々に値を下げ、さらに日本政府・日銀の介入が入り急落している。
 
今週は、28日に日銀金融政策決定会合が開催され、緩和継続の見込みが強い。緩和の継続が示されると日米の金融政策の違いが意識され円売りは進み、介入の効果は薄れるだろう。日銀の姿勢に注目が高まっているが、変更の見込みは薄い。21日に発表された9月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は31年ぶりに前年同期比で3%の上昇となり、13カ月連続の上昇で、日本銀行の目標水準の2%を6カ月連続で上回っており、厳しい局面は続くだろう。
 
また、22日からはFOMCを前に米金融政策当局者の発言が原則禁止となるブラックアウト期間に入るため、米経済指標の結果による変動が中心となる。今週の主な経済指標の発表としては、10月消費者信頼感指数(25日)や、9月米新築住宅販売件数(26日)、米第3四半期GDP速報値(27日)、米9月耐久財受注(速報値、27日)、10月ミシガン大消費者信頼感指数(確報値、28日)がある。
 
英国は市場がトラス首相の迷走から市場が混乱したが、首相の辞意表明が好感され落ち着きを取り戻した。辞任を受け次期首相となる与党・保守党の新党首の選定に注目が集まっている。党首選の候補となるには24日午後2時(日本時間22時)までに、保守党下院議員100人の推薦を得なくてはならない。優勢とされるスナク元財務相は23日に出馬を表明した。BBCの集計では日本時間の23日夜時点で、スナク氏はすでに136人の保守党下院議員の支持を得ている。行方が注目されるジョンソン前首相については56人が支持を公表していたが、立候補はしないと述べている。もし、1人の候補でまとまれば、24日午後には新首相が決まる。意向がまとまらず、保守党員全員によるオンライン決選投票になった場合は、28日には新たな首相が決まる見込みだ。今週は、新政権への期待からポンドは上昇の気配が強い。
 
主なスケジュール
10月24日(月):日・欧・英・米・製造業/サービス業PMI(10月)、英保守党党首選、第1回議員投票結果
10月25日(火):日銀「基調的なインフレ率を捕捉するための指標」公表、独IFO企業景況感指数(10月)、S&P/コアロジックCS20都市住宅価格指数(8月)、米消費者信頼感指数(10月)、リッチモンド連銀製造業指数(10月)、EUエネルギー相会合、ウクライナ復興巡る国際会議
10月26日(水):米新築住宅販売件数(9月)、カナダ中銀政策金利
10月27日(木):日銀政策委員会・金融政策決定会合(28日まで)、欧州中央銀行(ECB)政策金利発表、ラガルドECB総裁記者会見、米GDP速報値(7-9月)、米9月耐久財受注(速報値、27日)
10月28日(金):日・失業率/有効求人倍率(9月)、黒田日銀総裁が会見、ユーロ圏消費者信頼感指数(10月)、米個人消費支出(PCE・PCEコア)/個人所得(9月)、米中古住宅販売成約指数(9月)、10月ミシガン大消費者信頼感指数(確報値)、ロシア中銀政策金利
10月30日(日):欧州市場、冬時間に移行
 
予想レートは米ドル・円が145円後半から152円前半。ユーロ・米ドルが0.96ドル前半から1.00ドル前半。
 
 

【米国】

為替(10月24日6時01分)
 米ドル円(USDJPY)    147.64-147.75 (円)
 ユーロ円(EURJPY)    145.64-145.78 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 0.9870-0.9874 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY)    166.71-166.90 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.1393-1.1398 (米ドル)
 
10月21日のニューヨーク外国為替市場に影響を与えたのは、WSJの報道だった。「FRBが次回(11月1、2日)の連邦米公開市場委員会(FOMC)で0.75%の利上げを決定し、その次のFOMC(12月)で0.50%に利上げペースを鈍化させるか否かの議論を行う公算が大きい」「一部のFRBメンバは過度な景気悪化を警戒し利上げペースの減速や来年早々の利上げ停止を求めている」と報じられている。この記事は米連邦準備理事会(FRB)の金融政策を中心に、人事も含めたあらゆる動きを観察、分析している専門家のFEDウォッチャー、ニック・ティミラオス記者によるもの。
 
この報道からFRBの利上げ鈍化の観測が強まり債券が買われ、朝方に4.337%まで上昇していた10年債が4.2%まで低下した。金融政策の影響を受けやすい2年債と10年債(長期金利)の利回りは、76日連続で逆転(逆イールド)しており、終値ベースでは2年債が4.483%、10年債が4.219%だった。
 
この報道後に米ドルは対円で32年ぶりの高値を更新し151.95円になると、日本政府と日銀が円買い介入を実施している。
 
また、サンフランシスコ連銀のデイリー総裁が「過度な引き締めを行わないよう、全力を尽くして留意する必要がある」「現時点で(利上げペースを)緩めるのは難しい。まだそこには至っていないが、利上げペースを緩める計画を始める必要がある」とのタカ派的な考えを示した。
 
米ドル・円(USDJPY)は、朝方に日米金利差から堅調に値を上げ32年ぶりの高値を更新し、1990年7月以来の高値151.95円を付けた。その後、WSJの報道や日本政府や日銀が円買い介入、デイリー総裁のタカ派的な発言から急激に値を下げ、146.23円に低下した。その後、小幅に持ち直し147.65円で終えた。
 
ユーロ・米ドル(EURUSD)は、朝方に米長期金利が上昇すると米ドル買いが強まり、この日の安値0.9705ドルまで低下した。その後は、長期金利の低下や円買い介入などから米ドルが売られると、ユーロ買いが強まり、この日の高値0.9869ドルを付け、終値は0.9862ドルとなった。
 
ユーロ・円(EURJPY)は、朝方はユーロ・米ドルの上昇につられユーロ買いが強まると徐々に値を上げると、2014年12月以来、8年ぶりの高値148.40円まで値を上げた。その後、米ドル・円の急落につられると急激に値を下げ144.13円となり、終値は145.68円だった。
 
株式
 NYダウ平均  USD 31,082.56 +748.97(+2.46%)
 NASDAQ総合  USD 10,859.716   +244.872 (+2.30%)
 S&P500      USD  3,752.75  +86.97(+2.37%) 
 
10月21日の米株式市場のダウ工業株30種平均は3日ぶりに前日の終値を上回った。ウォール・ストリート・ジャーナルの「FRBが年内に利上げのペースを緩める」との報道から長期金利が低下し、堅調に値を伸ばした。景気敏感株中心に買いが入り、終了間際に前日の終値を786ドル近くまで上回る場面もあり、3指数揃って値を上げ終えている。
 
債券
米国債10年 4.219%(-0.007)
 
商品
 NY原油(WTI) 1バレル=USD 85.05 +0.54(+0.64%)(12月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,656.30 +19.50(+1.19%)(12月渡し)
 
 

【日本】USDJPY さらに32年ぶりの高値更新

為替(17時)
10月21日の東京外国為替市場は大きな動きは出なかったが、時間外の米長期金利が上昇し米ドルは堅調に推移している。一方で日本の再介入への警戒感も強く、大幅な上昇は抑制されている。
 
米ドル・円は、大きな動きは出ないものの150円前半で堅調に推移した。夕方になると米ドル買いが入り、前日のニューヨーク市場で付けた1990年8月14日以来、約32年ぶり高値150.29円を超えている。150.49円まで値を上げ、17時時点では150.48円となっている。
 
ユーロ・米ドルは、日中はあまり動きが出なかったが、欧州勢参加後にユーロ買いが入り0.9802ドルまで上昇した。その後は、時間外の米長期金利の上昇から米ドルが買われると徐々に値を下げ、17時時点では0.9788ドルだった。
 
ユーロ・円は日中、動きがほぼ出なかった。その後、米ドル・円の上昇から円売りが強まり徐々に値を上げ、17時時点では147.29円となった。
 
債券
 国債先物・22年12月限  147.60 (-0.29)
 10年長期金利  0.250%(変化なし)
 
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アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


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