9月米PCE高止まりから利上げ観測強まる

2022/10/31  6:44  JST投稿
 

【今週の見通し】(10月31日-11月06日)
10月21日にウォールストリート・ジャーナル/ニック記者の利上げペース鈍化の記事や日本の円買い介入により米ドルは値を下げ、対円で32年ぶりの高値151.95円から146.23円まで急落した。その流れを受け先週は低調な取引が続いていたが、金曜日に日銀が大規模金融緩和の継続を発表すると、日米の金融政策の違いが意識され147円後半まで値を戻した。

今週は、日本の円買い介入への懸念や今週(11月1、2日)行われる米連邦公開市場委員会(FOMC)で12月の利上げ幅の縮小が示される可能性が強く、米ドルは値を上げづらい状況だ。しかし、中長期的に考えると日米の金利差はかなり大きく、米ドルは買われ下値は限定的だろう。特に、11月1日の米ISM製造業景況指数と11月4日の雇用統計は、留意したい経済指標だ。

主なスケジュール
10月31日(月):小売売上高(9月)、鉱工業生産指数(9月、速報値)、消費者態度指数(10月)、住宅着工件数(9月)、中国・製造業/非製造PMI(10月)、ユーロ圏消費者物価指数(10月、速報値)、ユーロ圏GDP(2022年7-9月期、速報値)、シカゴ購買部協会景気指数(10月)、石油輸出国機構(OPEC)2022年世界石油見通し(WOO)発表、アブダビ国際石油展示会・会議(ADIPEC、11月3日まで)
11月1日(火):日・米・製造業PMI(10月)、中国財新製造業PMI(10月)、オーストラリア準備銀行(中央銀行)が政策金利発表、米ISM製造業景況指数(10月)、米連邦公開市場委員会(FOMC、2日まで)
11月2日(水):米ADP全米雇用報告(10月)、パウエルFRB議長会見
11月3日(木):株式市場等は祝日により休場(文化の日)、中国財新サービス業PMI(10月)、イングランド銀行(英中央銀行)が政策金利発表、米サービス業PMI(10月)、米ISM非製造業景況指数(10月)、米新規失業保険申請件数
11月4日(金):日・欧サービス業PMI、ユーロ圏生産者物価指数(9月)、米雇用統計(10月)

予想レートは米ドル・円が145円前半から150円前半。ユーロ・米ドルが0.97ドル前半から1.02ドル前半。
 

【米国】

為替(10月31日6時20分)
 米ドル円(USDJPY) 147.66-147.77 (円)
 ユーロ円(EURJPY) 147.01-147.16 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 0.9955-0.9960 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY) 171.20-171.34 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.1582-1.1591 (米ドル)

10月28日のニューヨーク外国為替市場で最も影響を及ぼしたのは、価格変動が激しい食品とエネルギーを除いた9月米個人消費支出(PCE)コア価格指数(前年同月比、結果:5.1%、予想:5.2%、前回:4.9%)だった。前年比で上昇し、3月以来の最大の伸びを記録した。物価上昇圧力と堅調な需要が示され、次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)で大幅な利上げを実施する見込みが強まっている。なお、PCE総合価格指数は前年比で、結果:6.2%、予想:6.3%、前回:6.2%だった。

さらに、10月のミシガン大学消費者信頼感指数の確報値(結果:59.9、予想:59.7、前回:59.8)では、速報値から上方修正され、4月以来で最高となった。5-10年期待インフレ率確報値が2.9%と、9月の2.7%から上昇し高止まりしている。これらの結果を受け、長期金利が節目の4%を超えている。

金融政策の影響を受けやすい2年債と10年債(長期金利)の利回りは、81日連続で逆転(逆イールド)しており、終値ベースでは2年債が4.414%、10年債が4.010%だった。

米ドル・円(USDJPY)は、東京時間に日銀が大規模金融緩和策の継続を発表し日米金利差が意識され、147円後半に上昇した流れが続いた。欧州時間にこの日の高値147.86円まで上昇し、利益確定売りが入った場面もあった。しかし、PCEコア価格指数と総合価格指数で高止まりが示され、長期金利が上昇すると堅調に推移した。その後、来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に機関投資家のポジション調整も入り小幅に値を下げる場面もあったが、147.60円で終えている。

ユーロ・米ドル(EURUSD)では、前日のECB理事会でラガルド総裁がQT(量的引締め)については議論しなかったとの発言からECBが利上げペースを鈍化させるとの観測が強まりユーロ売りが優勢だった。朝方は10月独消費者物価指数(CPI)速報値のEU基準(HICP、前年比、結果:11.6%、予想:10.9%、前回:10.9%)がエネルギー価格の上昇から予想以上に増加し、過去最大を記録。ECBの利上げ観測からユーロが買われ、この日の高値0.9990ドルまで上昇した。その後、等価を超えられなかった上、米長期金利の上昇に押され0.9930ドルまで値を下げた。しかし、徐々にユーロが買い戻され終値は0.9965ドルとなった。

ユーロ・円(EURJPY)は、朝方に日本と欧州の金利差が意識されると円が売られ、この日の高値147.37円を付けた。その後ECBのハト派的な姿勢が思い起こされるとユーロ売りに転じ、終値は147.00円だった。

株式
 NYダウ平均 USD 32,861.80 +828.52(+2.58%)
 NASDAQ総合  USD 11,102.452   +309.777 (+2.87%)
 S&P500     USD  3,901.06 +93.76(+2.46%)

10月28日の米株式市場のダウ工業株30種平均は6日連続で終値を上回った。6日連続で前日の終値を上回るのは5月ぶりで、8月25日以来、2ヵ月ぶりの高値となった。FRBの金利がピークに達したとの観測が強まった上、大手テクノロジー企業のアップルの好決算から投資家心理が上向き、幅広く買われ3指数揃って値を上げ終えている。

債券
 米国債10年 4.010%(+0.071)

商品
 NY原油(WTI) 1バレル=USD 87.90 -1.18(-1.32%)(12月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,644.80 -20.80(-1.25%)(12月渡し)
 

【日本】日銀緩和継続を受け米ドル買いが優勢に

為替(17時)
10月28日の東京外国為替市場は、日銀金融政策決定会合の結果に左右された。日銀は一時的な物価上昇とみて大規模金融緩和策の継続を維持する方針を決定した。黒田総裁は会見で、金融緩和の見直しについて「今すぐ金利引き上げとか、(金融緩和の)出口が来るとは考えていない」と述べ、利上げを急ぐ考えが無いことを明言した。また、物価上昇率2%が展望できる状況になって初めて金融政策の転換を議論すると説明し、「3%程度の実質的な賃上げがないと、2%の物価目標を持続的安定的に達成できない」との認識を示している。さらに「最近の円安は急速かつ一方的な動きだ」と市場をけん制し、「日本経済にとってマイナスであり、望ましくない」と述べた。

米ドル・円は、日銀金融政策決定会合後の政策発表を受け、値動きが大きくなる場面もあったが、145.99円まで安くなった後、徐々に値を上げた。時間外の米長期金利の上昇も後押しとなり、17時時点では147.07円となった。

ユーロ・米ドルは、朝方に米株先物の上昇により投資家心理が上向くと、この日の高値を付けた。その後は、時間外の米長期金利の上昇に伴いユーロが売られると徐々に値を下げ、17時時点では0.9945ドルで取引されている。

ユーロ・円は、昼前にユーロ・米ドルの上昇につられ、この日の高値146.59円まで値を上げた。その後は、ユーロ・米ドルの下落につられ徐々に値を下げ17時時点では146.27円となっている。

債券
 国債先物・22年12月限 148.77 (+0.11)
 10年長期金利 0.240%(-0.010)

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アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


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