パウエル議長講演受け長期金利低下し米ドル売りに

2022/12/01  7:43  JST投稿

【米国】

為替(12月01日6時00分)
 米ドル円(USDJPY) 138.10-138.11 (円)
 ユーロ円(EURJPY) 143.71-143.71 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 1.0406-1.0406 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY) 166.48-166.51 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.2055-1.2056 (米ドル)

11月30日のニューヨーク外国為替市場では、良好な経済指標が好感されたが、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長のハト派的な発言や地区連銀経済報告(ベージュブック)の内容を受け投資家心理が冷え込んだ。

朝方に発表された7-9月期実質GDP改定値(前期比年率、結果:2.9%、予想:2.8%、前回:2.6%)では、予想を上回る結果が示された上、原油高を受け長期金利が3.798%に上昇した。

しかし、パウエル議長の発言やベージュブックから長期金利が3.69%まで急落している。まずパウエル議長は「利上げペースを緩やかにすることは理にかなっており、その時期は、早ければ12月FOMCで訪れるかも知れない」と示唆した。一方で「物価安定を取り戻すには、当面は金融引き締め策を維持することが必要だ」と指摘し、2023年の早期の利下げ観測を打ち消している。さらにベージュブックでは、「高インフレと金利上昇により11月下旬までの経済成長はわずかな成長にとどまった」と指摘されている。

金融政策の影響を受けやすい2年債と10年債(長期金利)の利回りは、101日連続で逆転(逆イールド)しており、終値ベースでは2年債が4.329%、10年債が3.611%だった。

米ドル・円(USDJPY)は、朝方に良好な経済指標を受け長期金利が上昇し、投資家心理が上向いた。金の価格を決定するロンドンフィキシングによる米ドル買いも加わり、この日の高値139.89円を付けた。しかし、パウエル議長の講演やベージュブックの内容を受けると長期金利が低下し投資家心理が冷え込み、一転して安値137.65円まで値を下げた。その後小幅に値を戻し、終値は138.07円となった。

ユーロ・米ドル(EURUSD)は、米ドル・円の上昇を受け、この日の安値1.0291ドルを付けた。パウエル議長の講演後に米ドル売りが強まると徐々に値を上げ、この日の高値1.0429ドルに上昇し、終値は1.0406ドルとなった。

ユーロ・円(EURJPY)は、米ドル・円の動きにつられた。この日の高値144.85円まで上げたものの、急激に値を下げ徐々に値を下げ143.38円まで安くなり143.68円で終えている。

株式
 NYダウ平均 USD 34,589.77 +737.24(+2.17%)
 NASDAQ総合  USD 11,467.996   +484.217 (+4.40%)
 S&P500     USD  4,080.11 +122.48(+3.09%)

11月30日の米株式市場のダウ工業株30種平均は連日で前日の終値を上回り、大幅に値を伸ばした。パウエル議長が講演で12月のFOMCで利上げペースを減速させる可能性に言及し、投資家心理が上向いた。講演前には前日の終値を下回った取引が続いていたが、講演後に値を上げ上昇は1000ドル強にまで及んだ。

債券
 米国債10年 3.611%(-0.137)

商品
 NY原油(WTI) 1バレル=USD 80.55 +2.35(+3.01%)(1月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,759.90 -3.80(-0.22%)(2月渡し)
 

【日本】パウエル議長の講演控え様子見の姿勢強く

為替(17時)
11月30日の東京外国為替市場では、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の講演を控え様子見の姿勢が強く、狭い値幅での動きに留まっている。一方で中国・広州市が複数の地区でゼロコロナ政策の緩和から投資家心理が上向く場面もあった。

また、朝方に発表された豪消費者物価指数(前年比、結果:6.9%、予想:7.6%、前回:7.3%)は減速し、インフレがピークとなる観測が強まっている。豪ドルに関しては、パウエルFRB議長の講演を控え様子見の姿勢が強かった。

米ドル・円は、大きな動きはないものの時間外の米長期金利の低下が抑制されると小幅に値を上げ、17時時点では138.53円となった。

ユーロ・米ドルは、様子見の姿勢が強いものの欧州株価が堅調だった流れを受け小幅に値を上げた。17時時点では1.0352ドルで取引されている。

ユーロ・円は、ユーロ・米ドルの上昇につられ投資家心理が上向き、小幅に値を上げ17時時点では143.41円だった。

債券
 国債先物・22年12月限 148.72 (-0.06)
 10年長期金利 0.250%(変化なし)
 

【マーケットアナリティクス】AUDUSDはオーストラリアのインフレ率低下に悩まされることはない(11月30日)

世界の各地でインフレがピークに達した可能性があり、今後はインフレデータが低下することを示す指標が出ている。その1つがオーストラリアで、消費者物価指数(CPI)の数値は6.9%となり、予想(7.6%)よりも低く、前月の数値(7.3%)よりも低い数値となった。豪ドルに大きな動きを生み出すことはなく、豪ドル・米ドル(AUDUSD)は狭いレンジで推移し、ブレイクアウトを待っている状態だ。

AUDUSDは現在、重要な下値支持線(サポート)と上値抵抗線(レジスタンス)があるエリアに作られたペナントパターン(赤)の内側で取引されている。まず、価格が長期下降トレンドライン(黒)の上で取引されていることがわかるが、これは現在サポートと見なすことができる。また、フィボナッチ比率38.2%がレジスタンスとして機能しており、非常に効率的に機能している。さらに、7月と9月の安値(黄色)を突破しようとしており、これらはペナントのちょうど真ん中に位置している。

ご覧の通り、様子見の姿勢が強く大きな動きを待っている状態だ。ペナントの上のラインを上抜けると買いのシグナル、下のラインを下抜けると売りのシグナルが出る。本日、パウエル議長の講演で方向性が決まる可能性もあるため、その時間帯の相場は要注意だ!


豪ドル・米ドル、デイリーチャート 11月30日(CET・中央ヨーロッパ時間)

引用元: “AUDUSD is not bothered by the lower inflation in Australia” (2022年11月30日, AXIORY Global Market News)

追記:12月1日、日本時間6:00の豪ドル・米ドルは0.6786-0.6787米ドルで取引されている

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アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


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