高インフレが意識され上値が重い展開に

2022/01/31 6:37 JST投稿

 

【今週の見通し】(1月31日-2月4日)

先週は米連邦公開市場委員会(FOMC)で3月利上げや金融政策正常化に向けた動きに積極的なハト派的な姿勢が示され、投資家の不透明感が強まった。さらにウクライナ情勢をめぐる懸念も加わり上値が上がりづらい状況が続いた。株価も値動き(ボラティリティ)が大きく、当面はこの動きが続く模様だ。

コロナウイルスの感染拡大の懸念もあるが、それを上回るリスク回避の姿勢が強まっており、今週も同様の流れは続きそうだが、日米金利差が意識され米ドルは少しずつ値を上げており116円に値を上げそうだ。しかし、足元ではウクライナ情勢の緊張が高まっており、リスク回避の動きが強まった場合は、安全資産の円買いが強まるだろう。

予想レートは米ドル・円が114円前半から116円前半。ユーロ・米ドルが1.10ドル前半から1.12ドル前半。

 

【米国】

  • 為替(1月31日6時00分)

米ドル円(USDJPY) 115.19-115.27 (円)
ユーロ円(EURJPY) 128.41-128.51 (円)
ユーロ米ドル(EURUSD) 1.1147-1.1149 (米ドル)
ポンド円(GBPJPY) 154.34-154.53 (円)
ポンド米ドル(GBPUSD) 1.3399-1.3408 (米ドル)

1月28日のニューヨーク外国為替市場の主なトピックスは、米連邦公開市場委員会(FOMC)後の金融政策正常化やウクライナ問題が意識され、値を上げづらい状況が続いている。

12月 個人消費支出(PCEデフレーター、前年同月比、結果:5.8%、予想:5.8%、前回:5.7%)が発表され、予想通りながら1982年以来の高い伸びとなった。その一方で、12月 個人消費支出(PCE、前月比、結果:-0.6%、予想:-0.6%、前回:0.6%)は、供給網(サプライチェーン)問題やコロナウイルスの感染再拡大、さらに約40年ぶりの高いインフレを受け、ホリデーシーズンにも関わらず消費者が支出を抑制したことが浮き彫りとなる結果だった。

さらにその後、発表された1月のミシガン大学消費者態度指数・確報値(結果:67.2、予想:68.7、前回:68.8)は、高インフレと所得に及ぼす影響の大きさから2011年11月以来の低水準となった。

米ドル・円(USDJPY)は、115円半ばから前半に値を下げた。長期金利の低下と共に米ドルが売られ、経済指標が発表されると、さらに米ドル売りが加速し、この日の安値115.12円まで値を下げたが、小幅に買いが入り下げ幅は限定的だった。終値は115.26円となった。

ユーロ・米ドル(EURUSD)は、1.11ドル後半から前半に下落した。欧州時間に2020年6月2日以来の安値1.1121ドルを付けたが、安値が意識され買い戻された。その後は、ウクライナ情勢の懸念から週末を前にユーロ売りが入り、徐々に値を下げ終値は1.1151ドルだった。

ユーロ・円(EURJPY)は、128円後半から前半に値を下げた。欧州時間にこの日の高値128.85円まで値を上げたが、地政学リスクを意識した週末前の売りが優勢となり徐々に値を下げ、この日の安値128.35円まで売られ、128.58円で終えた。
 

  • 株式

NYダウ平均 USD 34,725.47 +564.69 (+1.65%)
NASDAQ総合  USD 13,770.573 +417.790 (+3.12%)
S&P500     USD 4,431.85 +105.34(+2.43%)

1月28日の米株式市場のダウ工業株30種平均は、4日ぶりに前日の終値を上回った。金融政策正常化への警戒感やウクライナの地政学リスクの懸念から10時過ぎに350ドル超、前日の終値より安くなった。しかし、その後は好調な決算を発表したアップルやクレジットカードのビザの株が買われ、支え終了間際に570ドル超前日の株価を超えた。ハイテク株や株価収益率(※)の高い成長株が買われたことも市場を支えた。

(※)株価収益率(PER)とは、企業の成長性を分析する指標の一つ。株価が1株ごとの当期純利益の何倍まで買われているかを表しており、値が大きいほど割安となる。今のような長期金利の指標とされる10年債の金利が上昇している時は、PERの値より金利の方が大きくなり割安感が減るため、ハイテク株を中心としたPERの高い株の魅力が減少し売られやすい。
 

  • 債券

米国債10年 1.773(-1.66%)
 

  • 商品

NY原油(WTI) 1バレル=USD 86.82 +0.21(+0.24%)(3月渡し)
NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,786.6 -8.40(-0.47%)(4月渡し)

 

【日本】株価上昇からリスク回避の姿勢が和らぐ

  • 為替(17時)

1月28日の東京外国為替市場は、日経平均が上昇した影響から懸念が和らぎ、米長期金利先物が1.83%に上昇したが、ウクライナ問題への懸念もあり、値動きは限られた。

米ドル・円は115円前半での取引が中心だった。株価の上昇が好感され米ドル買いが優勢となるも地政学リスクから値を上げづらい状況だった。欧州勢が参加後は月末に絡んだ米ドル買いも出て、115.68円に値を上げ、17時時点では115.65円となった。

ユーロ・米ドルは1.11ドル半ばから前半に値を下げた。米ドル買いが強まった影響やウクライナ問題の懸念から徐々に値を下げ、2020年6月以来の安値1.1126ドルまでユーロが売られた。その後は、少し持ち直し17時時点では1.1135ドルだった。

ユーロ・円は128円後半中心で取引された。米ドル・円の上昇につられ値を上げたが、ユーロ・米ドルの下落の影響も受けた上、ウクライナ情勢の懸念から、値を上げづらく大きな動きにはならなかった。17時時点では128.77円で取引された。
 

  • 日本株式

日経平均株価 26,717.34円 +547.04(+2.09%)
安値26,289.69円  -  高値 26,764.85円
東証出来高 1,329,65万株
東証売買代金 3兆3464.89億円
 
1月28日の日経平均株価は4日ぶりに終値を上回った。前日までの3日間で1400円超、値を下げた反動から幅広い銘柄が買われた。特に、好決算が期待される銘柄や景気敏感株が買われ、14時30分には、前日の終値から600円近く値を上げた。東証1部の鉄鋼のみが売られ、88%の銘柄で値を上げた。
 

  • 短期金融市場

無担保コール翌日物金利 -0.021%
 

  • 債券

国債先物・22年3月限 150.77 (+0.02)
10年長期金利 0.165%(+0.010)

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アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


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