地政学リスクやFOMC結果からリスクオフの姿勢強まる

2022/02/17 7:38 JST投稿

 

【米国】

  • 為替(2月17日6時00分)

米ドル円(USDJPY) 115.43-115.43 (円)
ユーロ円(EURJPY) 131.38-131.38 (円)
ユーロ米ドル(EURUSD) 1.1381-1.1382 (米ドル)
ポンド円(GBPJPY) 156.89-156.91 (円)
ポンド米ドル(GBPUSD) 1.3592-1.3592 (米ドル)

2月16日のニューヨーク外国為替市場の主なトピックスは、朝方はウクライナ情勢を巡る地政学リスクへの警戒が根強い中、ブリンケン米国務長官がロシア軍撤収の証拠はない言及し地政学リスクが高まった。さらに、ロシアが引き続きウクライナ近郊に軍備を増強していると米国と北大西洋条約機構(NATO)が発表している。

1月米小売売上高(結果:3.8%、予想:2.0%、前回:-1.9%)の伸びが昨年3月以来の大きさとなり、市場予想も上回った。国内総生産(GDP)の算出に用いられる自動車、建材などを除いたコア売上高でも4.8%増と、同様に昨年3月以来の大幅増となり1-3月期のGDP成長に寄与した。この結果を受け長期金利が2.02%から2.04%に上昇した。

また、1月25、26日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録が公開され、インフレ率が非常に高い状態にあることから、政策金利を近く引き上げることが妥当となることが明言されていたほか、引き締めペースを速めることが正当化される可能性があると結論付けたことが明らかとなった。インフレ関連の経済データである直近の消費者物価指数(CPI)と卸売物価指数(PPI)では、高インフレの状況が示されており、FOMCはこのデータ公開前に実施されたため、相違があるとの見方が強まっている。

米ドル・円(USDJPY)は、115円後半から前半に値を落とした。朝方はウクライナ情勢への懸念からリスク回避の姿勢が強まり、この日の安値115.38円まで値を下げた。その後、1月米小売売上高が大幅な伸びを見せ、長期金利が上昇すると一時的に買われたが、FOMCの議事録公開後に長期金利が低下し、ウクライナ情勢の懸念も加わり、この日の安値115.36円となり115.52円で終えた。

ユーロ・米ドル(EURUSD)は、1.13ドル前半から後半に値を上げた。朝方は、ウクライナリスクへの懸念や良好な経済指標から米ドル買いが優勢となり1.1353ドルまで値を下げた。その後、米ドル・円で長期金利の低下を受けた米ドル売りが強まると、この日の高値1.1396ドルまで値を上げたものの、徐々に売りが優勢となり終値は1.1373ドルだった。

ユーロ・円(EURJPY)は、131円前半から後半に値を上げたが、再び下落した。ユーロ・米ドルの動きにつられ、この日の高値131.91円までユーロが買われたが、地政学リスクが意識されると、この日の安値131.11円まで値を下げた。その後、再びユーロ買いが入り131.53円に値を上げた後は、安くなり終値は131.37円となった。
 

  • 株式

NYダウ平均 USD 34,934.27 -54.57 (-0.15%)
NASDAQ総合  USD 14,124.095 -15.662 (-0.11%)
S&P500     USD 4,475.01 +3.94(+0.088%)

2月16日の米株式市場のダウ工業株30種平均は、わずかに前日の終値を下回った。前日の上昇を受け、朝方から売りが優勢となり前日の終値を下回る取引が続いた。昼過ぎに350ドル近くまで値を下げていたが、FOMC議事録が想定内の内容から投資家心理が上向き、終了直前に前日の終値をわずかに上回るまで上昇したが、マイナス圏に沈み終えた。
 

  • 債券

米国債10年 2.042(-0.006%)
 

  • 商品

NY原油(WTI) 1バレル=USD 93.66 +1.59(+1.73%)(3月渡し)
NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,871.5 +15.30(+0.82%)(4月渡し)

 

【日本】ウクライナでの緊張が和らぎユーロ買いに

  • 為替(17時)

2月16日の東京外国為替市場は、ロシアのプーチン大統領が外交による解決姿勢をみせ、緊張が緩和された流れを受けたが、まだ懸念材料は多く、様子見の姿勢も強かった。

米ドル・円は115円半ば中心で取引された。リスク回避の姿勢が和らぎ115円半ばに上昇したものの、大きな値動きには発展しなかった。欧州勢参加後に値を上げ17時に115.64円となった。その後、この日の高値115.74円まで上昇している。

ユーロ・円は、131円前半から中心に上昇した。地政学リスクの後退が好感され、欧州勢参加後ユーロ買いが強まり、前日の高値131.54円を超え、131.61円まで値を上げ17時時点では131.54円となった。

ユーロ・米ドルは1.13ドル半ばから後半に値を上げた。午後、欧州勢参加前からリスク回避の姿勢が和らぎ徐々にユーロ買いが増し、この日の高値1.1379ドルとなり17時時点では1.1375ドルだった。
 

  • 日本株式

日経平均株価 27,460.40円 +595.21(+2.22%)
安値27,227.24円  -  高値 27,486.09円
東証出来高 1,155,78万株
東証売買代金 2兆8246.97億円
 
2月16日の日経平均株価は3日ぶりに前日の終値を上回った。ウクライナ情勢における警戒感が後退し米国市場で主要3指数が上昇した流れを受け、終日で前日の終値を上回り取引された。幅広い銘柄が買われ、終了間際に600円超まで上げ幅を拡げ、東証1部の82%の銘柄で値上がりし終えたが、5日ぶりに売買代金が3兆円を下回っている。
 

  • 短期金融市場

無担保コール翌日物金利 -0.024%
 

  • 債券

国債先物・22年3月限 149.90 (-0.15)
10年長期金利 0.215%(+0.005) 

 

【マーケットアナリティクス】EURUSDは水面下で推移し、1.14以下にとどまる(2月16日 14:48 CET)

水曜日は、これまでの中で価格変動(ボラティリティ)が小さく、ユーロ・米ドル(EURUSD)は、米国時間中に横ばいで取引され、最終的には1.1365ドル付近で見られた。

ロシアとウクライナの緊張に関する投資家心理は、本日さらに改善された。駐アイルランド・ロシア大使のユーリー・フィラトフ氏は、アイルランド公共放送とのインタビューで、「ロシア西部の軍隊は、3~4週間以内に元の位置に戻るかもしれない」と述べた。タス通信が引用したコメントによると、「我々はベラルーシ軍と計画的な演習を実施している」。ロシアがウクライナを攻撃し、占領するという考えは「非常識」だと切り捨てた。

テクニカル的には、日足チャートの状況はやや中立的に見える。50日移動平均線(チャート上の紫線※)が守られ、前日はユーロが上昇した。しかし、現在より強固な最初の売りゾーンである1.1370ドルを試しているところだ。

この上値抵抗線(レジスタンス)を上方にブレイクした場合、1.1470ドルの売りゾーンに向け、さらに上昇する可能性がある。これまでのところ、ダブルトップパターン(※1)のように見えるが、弱気(ベア)の勢いは弱く存在していないように見える。

本日後半には、最新のFRBのFOMC議事録の公開が予定されており、市場のボラティリティを誘発する可能性がある。50日移動平均線を割り込むようなことがあれば、今週の安値1.1280ドルを再び試す可能性がある。

(※)移動平均線:一定期間(この場合は50日間)の終値の平均値の推移を折れ線グラフで示したもの。相場が上昇傾向にあるのか、下落傾向にあるのかといったトレンド(流れ)を把握しやすい。

(※1)ダブルトップ:価格が複数の山のように上昇から下降に転じる時に底辺で見られるチャート形成。アルファベットの「W」のような形に見えるためこの名前となった。チャートにこの形が現れた時は、上昇トレンドの終わりを示唆する。

  
ユーロ・米ドル、デイリーチャート 2月16日(CET・中央ヨーロッパ時間)

引用元: “EURUSD treads water, stays below 1.14” (2022年2月16日, AXIORY Global Market News)

追記:2月17日、日本時間6:00のユーロ・米ドルは1.1381-1.1382ドルで取引されている

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アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


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