米ドル FOMC巡る投資家心理の交錯が急激な値動き招く

2022/05/05 7:30 JST投稿
 

【米国】

為替(5月5日6時00分)
 米ドル円(USDJPY)    129.08-129.12 (円)
 ユーロ円(EURJPY)    137.12-137.14 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 1.0620-1.0625 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY)    162.98-163.17 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.2629-1.2633 (米ドル)

5月4日のニューヨーク外国為替市場の主なトピックスは、米連邦公開市場委員会(FOMC)が22年ぶりとなる0.5%の利上げ(目標レンジ0.75%-1.00%)と金融緩和の引き締め(QT)を6月に開始することを決定した。9兆ドルのバランスシートを6月、7月、8月に月額475億ドル減少させ、9月以降は月額950億ドル減少させることが明らかになった。

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は今後2回程度の会合で0.5%の利上げを検討し、7月会合で2.0%まで政策金利を引き上げたい意向を示した。さらに0.75%の利上げに関しては否定した。当面は40年ぶりの高水準に達した高インフレへの対応を優先する。今回、参加者全員が賛成した。

また、朝方に発表された4月  ADP雇用統計(前月比、結果:24.7万人、予想:39.5万人、前回:45.5万人)は、2020年4月以来、2年ぶりの低水準となり予想を大幅に下回った。雇用需要は依然として強いものの、労働力不足や賃金の上昇の影響により雇用の増加ペースが鈍化し、インフレ圧力の高まりに繋がっている。雇用統計との数値の開きが大きいことから、5月6日の発表を見極めたい。

さらに、4月ISM非製造業景況指数(前月比、結果:57.1、予想:58.5、前回:58.3)は、予想を下回った。高インフレや供給網問題、賃金上昇による人材不足による影響から厳しい状況が露呈している。特に仕入価格指数は過去最高の84.6に上昇し、今後価格に転嫁される可能性を示唆した。

なお、3月 欧州小売売上高(前月比、結果:-0.4%、予想:-0.1%、前回:0.3%)は、予想以上に減少し、高インフレやロシアのウクライナ侵攻による影響が大きいことが改めて示された。前年同月比(結果:0.8%、予想:1.4%、前回:5.0%)でも市場予想を下回っている。また、独10年国債が1.036%と2015年6月以来の高水準になった。発表後にFOMCを控えており、影響は軽微だった。

米ドル・円(USDJPY)は、朝方は弱い経済指標から値を下げたがFOMCを控え小幅な動きにとどまった。その後、パウエル議長の会見を受け長期金利が3.005%に上昇し、この日の高値130.38円まで米ドルが買われた。しかし、最近の積極的な金融政策引き締めへのタカ派的な姿勢に反して、FOMCの内容が予想通りであったことを受け、急激な金融引き締めへの警戒感が後退した。この影響から長期金利が2.901%に低下し米ドル売りが加速すると、この日の安値128.63円まで値を下げた。その後は、持ち直し129.09円で終えている。 

ユーロ・米ドル(EURUSD)は、朝方はFOMCの結果を見極めたいとの思惑から様子見の姿勢が強かった。その後、パウエル議長の会見内容を受け米ドル買いが強まると、1.0518ドルまで値を下げた。さらに、米長期金利が低下すると米ドル売りが加速し、この日の高値1.0631ドルまで値を上げた。その後は、小幅な動きとなり終値は1.0622ドルとなった。

ユーロ・円(EURJPY)は、ユーロ・米ドルの動きにつられ、この日の高値137.43円を付けた直後に、この日の安値136.61円まで急落した。その後は、米ドル・円の動きにつられ上昇し、終値は137.13円だった。

株式
 NYダウ平均  USD 34,061.06 +932.27 (+2.81%)
 NASDAQ総合  USD 12,964.856  +401.099 (+3.19%)
 S&P500      USD  4,300.17  +124.69(+2.98%) 

5月4日の米株式市場のダウ工業株30種平均は、前日の終値を大幅に上回った。パウエルFRB議長の会見まで様子見の姿勢が強かったが、パウエル議長が会見で過度な金融引き締めを否定すると安心感が拡がり、堅調に推移した。幅広い銘柄が買われ、3指数揃って上昇し終えた。

債券
 米国債10年 2.946%(-0.012)

商品
 NY原油(WTI) 1バレル=USD 107.81 +5.40(+5.27%)(6月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,868.8  -1.80(-0.10%)(6月渡し)
 

【日本】個人中心でFOMC控え小幅ながら値動き荒く

為替(17時)
5月4日の東京外国為替市場の主なトピックスは、日本が5月5日まで連休により、機関投資家が不在で個人の取引が中心だった。FOMCを控え、小刻みな値動きはあるものの狭い値幅での推移となった。

また、欧州連合(EU)欧州委員会がロシアへの制裁第6弾として、ロシア産石油の輸入を段階的に禁止する方針ならびに、国際銀行間通信協会(SWIFT)からの排除の実施を示した。

米ドル・円は、FOMCを控え積極的な取引は控えられた。朝方にこの日の高値130.21円まで値を上げていたが、徐々に値を下げ130円を挟んで小幅な動きで推移した。欧州勢参加後に少し値を上げたが、徐々に値を下げ17時時点で130.10円となった。

ユーロ・米ドルは、朝方に小幅ながら上昇後、徐々に値を下げた。しかし、欧州勢参加後に徐々に値を上げ17時時点では1.0524ドルだった。

ユーロ・円も値動きが荒いながらも136円後半の狭い値幅での推移となった。朝方にこの日の高値137.08円を付けたが、小幅に値を下げ17時時点では136.93円で取引された。

*みどりの日の祝日のため債券は休場

この記事をシェアする
アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


もっと読む
クッキー(Cookie)について: お客様が本ウェブサイトにアクセスする際、セキュリティの確保やお客様に関する情報を取得することを目的に、クッキー(Cookie)を使用する場合があります。 本ウェブサイトにお客様が継続的に訪問する場合、クッキーについて同意することと見なします。またクッキーはいつでも削除することが可能です。
FAQ お問合せ サポートデスク
月曜日-金曜日
9:00-24:00