リスクオフの姿勢強く上値重い

2022/05/17 7:16 JST投稿
 

【米国】

為替(5月17日6時00分)
 米ドル円(USDJPY)    129.11-129.20 (円)
 ユーロ円(EURJPY)    134.70-134.83 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 1.0431-1.0437 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY)    159.03-159.22 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.2316-1.2322 (米ドル)

5月16日のニューヨーク外国為替市場の主なトピックスは、リスク回避のリスクオフの姿勢が強く上値は重かった。

朝方に発表された5月 ニューヨーク連銀製造業景気指数 (結果:-11.6、予想:17.0、前回:24.6)は、米連邦準備理事会(FRB)の積極的な金融引き締めの影響から予想外に大幅に低下した。新規受注と出荷の悪化による影響が大きかった。この先6ヵ月間の業況は改善するものの、長期間で鑑みると半数以下の水準にとどまっている。

また、中国の経済指標が悪化している。4月 小売売上高(前年同月比、結果:-11.1%、予想:-6.1%、前回:-3.5%)、4月 鉱工業生産 (前年同月比、結果:-2.9%、予想:0.4%、前回:5.0%)と大幅に予想を下回った。ゼロコロナ政策による都市封鎖の影響から供給網が引き締められた影響が大きかった。

さらに、プーチン大統領は、ロシア主導の軍事同盟「集団安全保障条約機構(CSTO)」の首脳会議で、スウェーデンとフィンランドによる北大西洋条約機構(NATO)加盟申請に向けた動きについて、両国がNATO加盟により軍事強化を行なった場合ロシアは対抗措置を講じると西側諸国に警告した。

米ドル・円(USDJPY)は、中国の弱い経済指標や5月 ニューヨーク連銀製造業景気指数の弱い結果からリスクオフの姿勢が強まり、円が買われ128.99円まで値を下げた。小幅に持ち直すも、長期金利が低水準で推移した影響から上値は重く終値は129.16円となった。

ユーロ・米ドル(EURUSD)は、中国の弱い経済指標やスウェーデンとフィンランドのNATO加盟に向けた動きから地政学リスクが意識されアジア時間に1.0389ドルを付けた。その後は、欧州中央銀行(ECB)政策委員会メンバーのビルロワドガロー・フランス銀行総裁の「ECBはユーロの実効レートを注視している」「弱過ぎるユーロは物価安定の目標に反する」との発言や弱い米経済指標から持ち直し、この日の高値1.0443ドルまで上昇した。その後は小幅に値を下げ、終値は1.0434ドルとなった。

ユーロ・円(EURJPY)は、ユーロ・米ドルの動きにつられ、朝方に134.25円まで値を下げたが、徐々に値を上げ134.95円まで値を戻した。その後は小幅に値を下げ、終値は134.80円だった。

株式
 NYダウ平均  USD 32,223.42 +26.76 (+0.08%)
 NASDAQ総合  USD 11,662.791  -142.211 (-1.20%)
 S&P500      USD  4,008.01  -15.88(-0.39%) 

5月16日の米株式市場のダウ工業株30種平均は、連日で小幅に前日の終値を上回った。FRBの金融引き締めへの警戒感の高まりから、7週連続で前週末の終値を下回り、週間続落記録で2001年5-7月以来、21年ぶりの長い期間が続いている。この影響によりハイテク株が売られた。一方で、前日までの下落の反動から幅広い銘柄に積極的な買いが入る場面もあった。さらに、中国・上海の都市封鎖が6月に解除される方針が明らかとなり、原油先物価格が上昇した影響から石油関連銘柄が買われた。しかし、原油高が消費行動に影響を与える懸念の高まりから消費関連株が売られている。

債券
 米国債10年 2.888%(-0.047)

商品
 NY原油(WTI) 1バレル=USD 114.20 +3.71(+3.36%)(6月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,814.0  +5.80(+0.32%)(6月渡し)
 

【日本】米ドル リスクオフの姿勢強まり徐々に下落

為替(17時)
5月16日の東京外国為替市場の主なトピックスは、中国の経済指標が予想を大幅に下回り、リスク回避の姿勢が強まった。一方で、日銀の黒田東彦総裁が参院決算委員会で、金融緩和の継続を強調したことが下支えしている。

米ドル・円は、朝方に国内輸入企業の決済に向けた米ドル買いが入り、この日の高値129.64円まで値を上げた。しかし、中国の経済指標の悪化や原油先物価格の低下や米株安からリスク回避の円買いが優勢となり、この日の安値128.70円まで売られた。黒田総裁の発言や堅調な株価、米長期金利が上昇すると持ち直し、17時時点では129.36円となった。

ユーロ・米ドルは、米ドル・円の動きにつられ、朝方から徐々に低下し、この日の安値1.0389ドルまで売られた。その後は徐々に値を戻し、17時時点では1.0409ドルだった。

ユーロ・円は、リスク回避のリスクオフの姿勢が強まり全面円買いが強まった影響から、この日の安値133.75円を付けた、その後は米ドル・円で円売りに転じると持ち直し17時時点では134.65円で取引されている。

債券
 国債先物・22年6月限  149.48(-0.04)
 10年長期金利  0.240%(変化なし) 
 

【マーケットアナリティクス】米ドル円は上昇を維持できず、マイナスに転じる(5月16日)

米ドル・円は、米国のトレーダーが心理的な境目の130円を下回る価格で売却し、これまでの上昇分が消え去っている。本稿執筆時点では129.10円付近で取引され、わずかに下がった。

■世界経済の減速
ゴールドマン・サックスは米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締めによる金融市場の混乱を反映し、今年の米国の成長に対する懸念を高め、予測を引き下げた。その結果、今年の年間成長率を2.4%、2023年の成長率を1.6%と、前回の2.6%、2.2%から下方修正した。

中国における一連のゼロコロナ政策による都市封鎖実施の結果、同国の新たな経済統計は予想を下回る結果となった。中国の4月の小売売上高は前年同月比11.1%減で、2020年3月以降で最悪のマイナスとなり、鉱工業生産は2.9%減と予想外に落ち込んだ。

"FRBの引き締めと予想される世界的な減速による市場の懸念は、リスク資産の価格変動(ボラティリティ)を不安定にしている "とINGのアナリストは述べている。"これは多くの投資家が、米ドルが小幅に下落した瞬間(ディップ)を狙って買っていることを示している。"

■前途多難
今のところ米国債の利回りはピークに達している可能性があり、最近の大幅な上昇後、米ドル・円の整理と利益確定を示唆している。

米ドルが高値更新に失敗していることから、弱気(ベア)の反転フォーメーションであるダブルトップ(※)パターンのように見える。このフォーメーションは、127円を下回った時に確認できるだろう。このシナリオでは、トレーダーが決済前の米ドル買いの約定(ロングポジション)を解消し始めるため、より大幅な下落が見られるかもしれない。

一方、日中の上値抵抗線(レジスタンス)は129.60円付近にあり、再び上昇を始めた場合130円の壁付近がもう一つの売り場となるようだ。

(※)ダブルトップ:価格が複数の山のように上昇から下降に転じる時に底辺で見られるチャート形成。アルファベットの「W」のような形に見えるためこの名前となった。チャートにこの形が現れた時は、上昇トレンドの終わりを示唆する。

USDJPY Fails to Hold Gains, Turns Negative

米ドル・円デイリーチャート 5月16日(CET・中央ヨーロッパ時間)

引用元: “USDJPY Fails to Hold Gains, Turns Negative” (2022年5月16日, AXIORY Global Market News)      

追記:5月17日、日本時間6:00の米ドル・円は129.11-129.20円で取引されている

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アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


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