堅調な雇用統計結果から米ドル買い強まる

2022/06/06 6:35 JST投稿
 
 

【今週の見通し】(6月6日-6月10日)
先週は6月1日に発表された5月米ISM製造業景況指数が予想を上回り、金融引き締めが加速するとの見方が強まった。さらに米連邦準備制度理事会(FRB)高官のタカ派的な発言が続き、米長期金利が3%直前まで上昇し、米ドルが5月9日以来の高値圏に値を上げた。
 
今週は米連邦公開市場委員会(FOMC)前の沈黙期間に入ることから金融当局高官の発言に左右されることはない。重要イベントは6月10日発表の5月米消費者物価指数(CPI)だ。強い伸びが示された場合は米ドル買いにつながるものの、米国の景気減速が意識され長期金利が低下することが予想されるため値を上げづらいだろう。
 
また、6月9日に開催される欧州中央銀行(ECB)では7月に0.25%の利上げが予想されている。それ以上の利上げに進む場合(タカ派的)は、ユーロ買いが進むだろう。
 
主な金融スケジュール
・6月4日~FOMC(7月14、15日)終了まで: FRB高官の沈黙(ブラックアウト)期間
・6月7日:オーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)金融政策発表、4月米貿易収支
・6月8日:経済協力開発機構(OECD)経済見通し公表
・6月9日:ECB金融政策発表(発表後にラガルド総裁が会見)、5月中国貿易収支
・6月10日:5月中国生産者物価指数(PPI)と消費者物価指数(CPI)、5月米CPI、6月米ミシガン大学消費者信頼感指数
 
予想レートは米ドル・円が128円前半から131円半ば。ユーロ・米ドルが1.06ドル前半から1.09ドル前半。

 

【米国】

為替(6月6日6時00分)
 米ドル円(USDJPY)    130.81-130.82 (円)
 ユーロ円(EURJPY)    140.21-140.29 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 1.0718-1.0720 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY)    163.36-163.48 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.2488-1.2492 (米ドル)
 
6月3日のニューヨーク外国為替市場では、朝方に発表された5月雇用統計の影響が大きかった。非農業部門雇用者数(前月比、結果:39.0万人、予想:32.6万人、前回:42.8万人)では、予想以上に雇用が増加した。平均時給は前月比(結果:0.3%、予想:0.4%、前回:0.3%)で予想を下回った。前年同月比(結果:5.2%、予想:5.2%、前回:5.5%)では、前月より増加が鈍化した。この結果から当面、米連邦準備制度理事会(FRB)が高インフレに向け積極的な金融引き締め姿勢の継続の観測が強まった。
 
なお、5月 ISM非製造業景況指数(結果:55.9、予想:56.4、前回:57.1)では、前月を下回り2021年2月以来の低水準となったが、影響は軽微だった。
 
また、クリーブランド連銀のメスター総裁は、改めて6月と7月にそれぞれ米政策金利の0.5%の引き上げ支持を言及した。また、9月はインフレが沈静化しなければ0.5%、インフレ低下の兆しが出た場合は0.25%の追加利上げ支持を表明した。メスター総裁は今年の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議決権を持つ。この日の深夜から米金融当局者がFOMC前の発言禁止が求められるブラックアウト期間に入るため、高官の公式コメントとしてはこの発言が最後となった。
 
米ドル・円(USDJPY)は、朝方に発表された強い雇用統計結果から債券が売られ長期金利が上昇した。これを受け、米ドル買いが強まり5月9日以来の高値(131.35円)付近の130.99円に値を上げた。その後は小幅に値を下げ、終値は130.88円だった。
 
ユーロ・米ドル(EURUSD)は、堅調な雇用統計結果から米ドル買いが強まると、この日の安値1.0704ドルを付けた。その後は、小幅に買戻しが入ったが、米長期金利の上昇から米ドル買いが再び強まり終値は1.0719ドルとなった。
 
ユーロ・円(EURJPY)は、高インフレに対応した欧州中央銀行(ECB)の金融政策正常化に向けた動きが加速するとの観測が強まり、日本との金利差が意識されユーロ買いが強まった。4月21日の高値140.00円を超え、2015年6月以来7年ぶりの高値140.37円まで値を上げた。その後は小幅に売られ140.29円で終えている。
 
株式
 NYダウ平均  USD 33,899.70 -348.58 (-1.04%)
 NASDAQ総合  USD 12,012.734  -304.164 (-2.46%)
 S&P500      USD  4,108.54  -68.28(-1.63%) 
 
6月3日の米株式市場のダウ工業株30種平均は前日の終値を下回った。雇用統計が堅調な伸びを示したことを受け、FRBの金融引き締め観測が強まり投資家心理が冷え込んだ。発表後に長期金利が前日の終値の2.915%から大幅に上回り、一時2.986%まで高まった影響も大きかった。ハイテク銘柄が中心に売られ、3指数揃って値を下げ終えた。
 
債券
 米国債10年 2.941%(+0.026)
 
商品
 NY原油(WTI) 1バレル=USD 118.87 +2.00(+1.71%)(7月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,850.2  -21.20(-1.13%)(8月渡し)
 
 

【日本】米雇用統計の発表控え小幅な動きに

為替(17時)
6月3日の東京外国為替市場の主なトピックスは、英国や香港、中国の休場を受け大きな値動きは出なかった。さらに、米雇用統計の発表を控えたことも影響が大きかった。
 
米ドル・円は、小幅な動きに留まり129円後半中心で取引された。欧州勢参加後にこの日の高値130.05円まで値を上げたが、その後は小幅に値を下げ、17時時点で129.88円となった。
 
ユーロ・米ドルは、前日の米国市場の堅調な取引を受け朝方は値を上げ、この日の高値1.0764ドルを付けた。その後は徐々に値を下げたが、欧州勢参加後に小幅に買い戻され17時時点では1.0756ドルだった。
 
ユーロ・円は、朝方は小幅に値を上げたが、その後は小幅な売りが優勢だった。欧州勢参加後に、ユーロ・米ドルの上昇につられると買い戻され17時時点では139.70円で取引されている。
 
債券
 国債先物・22年6月限  149.86(+0.17)
 10年長期金利  0.230%(-0.010)

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アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


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