米GDP 連続マイナス成長受けリスクオフの姿勢強まる

2022/07/29 7:04 JST投稿
 
 

【米国】

為替(7月29日6時00分)
 米ドル円(USDJPY)    134.24-134.29 (円)
 ユーロ円(EURJPY)    136.89-136.95 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 1.0196-1.0198 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY)    163.37-163.54 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.2177-1.2180 (米ドル)
 
7月28日のニューヨーク外国為替市場で最も注目されたのは、朝方に発表された第2四半期国内総生産(4-6月期GDP)速報値の2四半期連続での減少だ。リセッション(景気後退)のリスクが高まった。米国の景気判断については、民間非営利民間研究機関の全米経済研究所(NBER)が各種の指標から判断している。2期連続のマイナス成長は即時的に「テクニカルリセッション」と見なされ、その後も景気後退に陥ったと認定されることが多い。この結果からリスク回避のリスクオフの姿勢が強まった。
 
4-6月期GDP速報値(前期比年率、結果:-0.9%、予想:0.4%、前回:-1.6%)では、足元で数十年ぶりの高インフレから消費が控えられ、FRBの利上げにより金利が上昇し企業の投資や住宅需要に強い影響が出ていることが示された。米経済の最大部分を占める個人消費(前期比年率、結果:1.0%、予想:1.2%、前回:1.8%)では前四半期に比べて減速し、市場予想も下回った。
 
また、前週分の新規失業保険申請件数(結果:25.6万件、予想:25.1万件、前回:25.1万件)は予想を上回った。さらに失業保険継続受給者数(結果:135.9万件、予想:138.6万件、前回:138.4万件)では、予想、前回とも下回り減少した。これらの結果を受け、景気後退時のインフレ(物価上昇)が同時に起こるスタグフレーションの懸念が強まり、債券が買われ長期金利が2.649%に低下した。
 
GDP低下を受け、共和党のマッカーシー下院院内総務は議会で演説後、「経済はリセッションに陥っている。このニュースは米国民にとって苦境や痛みが増えることを示唆する悲惨な出来事だ」と言及した。これに対しバイデン大統領は「経済が昨年持ち直し政策金利引き上後、経済が減速しつつあるのは驚きではないが、米国は正しい軌道上を進んでいる。」「FRBがインフレ抑制のために行動する中での減速は当然。」との声明を発表した。
 
また、イエレン米財務長官は会見で、本当の意味でのリセッションとは「広範囲に及ぶ経済の弱まり」だと説明し、「現在そういう状況は見られない」と述べた。第2四半期に雇用者数が110万人増加したことを挙げ、過去のリセッション局面の最初の3カ月に平均24万人の雇用が失われたのとは極めて対照的だとの見解も示している。
 
2年債と10年債(長期金利)の利回りは、18日連続で逆転(逆イールド)している。終値ベースで2年債が2.868%、10年債が2.671%となった。
 
米ドル・円(USDJPY)では、朝方に発表されたGDP速報値が2期連続でマイナス成長となり、景気後退(リセッション)に陥った状況とみなされ投資家心理が冷え込んだ。135.68円から134.56円に急落し持ち直すも、6月17日以来の安値134.20円まで値を下げた。終値は134.27円となっている。
 
ユーロ・米ドル(EURUSD)では、朝方は欧州景気後退やイタリアの政局、エネルギー供給への懸念から売りが優勢だった。しかし、米長期金利の低下や米ドル売りからユーロが買い戻され堅調に値を上げ1.0197ドルで終えた。
 
ユーロ・円(EURJPY)は、米ドル・円でリスクオフの円買いが強まり徐々に値を下げた。金融緩和が続く日本だが、欧米と比べると景気後退懸念が薄い状況から安全資産の円買いにつながった。この日の安値136.38円までユーロが売られ、終値は136.90円だった。
 
株式
 NYダウ平均  USD 32,529.63 +332.04 (+1.03%)
 NASDAQ総合  USD 12,162.593  +130.170 (+1.08%)
 S&P500      USD  4,072.43  +48.82(+1.21%) 
 
7月28日の米株式市場のダウ工業株30種平均は、前日の終値を連日で上回った。朝方に発表されたGDP速報値で2四半期マイナスを記録し投資家心理が冷え込み、前日の終値を下回った取引が続いた。その後は、景気後退からFRBが利上げのペースを縮小させるとの期待が広まり、幅広い銘柄が買われた。また、長期金利の低下からハイテク株も買われ、3指数揃って値を上げ終えた。
 
債券
 米国債10年 2.803%(-0.017)
 
商品
 NY原油(WTI) 1バレル=USD 96.42 -0.84(-0.86%)(9月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,769.2  +31.70(+1.82%)(12月渡し)
 
 

【日本】日米金利差が意識され全般米ドル売りに

為替(17時)
7月28日の東京外国為替市場では、米国市場での米長期金利の低下や米連邦公開市場委員会(FOMC)後のパウエル議長の会見から米国の利上げペースの鈍化が懸念され、取引成立後の未決済の米ドル買い・円売りのポジションの権利放棄により値を下げる取引が優勢だった。
 
米ドル・円は、将来的な日米金利差の縮小が意識され低調な取引となった。朝方に、この日の安値135.11円まで値を下げた後は、大きな値動きはなく、欧州勢参加後は米ドルが買い戻され135.80円まで値を戻した。その後、小幅に値を下げ、17時時点では135.58円となった。
 
ユーロ・米ドルは、米ドル売りが全般的に優勢だった動きを受けユーロが堅調だった。大きな動きはないものの、小幅に値を上げ、欧州勢参加後にこの日の高値1.0234ドルを付けた。17時時点では1.0211ドルで取引されている。
 
ユーロ・円は、米ドル・円で日米金利差が意識された米ドル売りが優勢となった動きにつられ、円買いが優勢だった。リスク回避の円買いに転じ徐々に値を下げ138円前半まで売られた後は、ほぼ横ばいとなり17時時点では138.45円だった。
 
債券
 国債先物・22年9月限  150.25 (-0.04)
 10年長期金利  0.200%(変化なし)

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アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


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