良好な雇用統計結果から更なる利上げ観測強まる

【今週の見通し】(8月8日-8月12日)
先週は、米金融高官から金融緩和の継続を示唆する発言が相次いだ。さらに、8月5日に発表された7月米雇用統計で景気後退懸念が払拭された。また、ペロシ米下院議長が2日に台湾を訪問し、米中間の地政学リスクが高まりリスク回避の円買いが強まる場面もあった。

今週は8月10日に予定されている7月米消費者物価指数の発表に注目が集まっている。もし、予想を上回る結果が出た場合は、米インフレ懸念の強まりから、FRBの大幅な利上げ観測が強まり、長期金利が上昇し、米ドル買いが加速する可能性が強まるため注意が必要だ。

主な金融スケジュール
8月9日(火):米非農業部門労働生産性速報値(4-6月)
8月10日(水):中国・消費者物価指数(7月)、中国・生産者物価指数(7月)、米消費者物価コア指数(7月)、シカゴ連銀総裁講演、ミネアポリス連銀総裁が講演
8月11日(木):日本・債券、株式市場は祝日のため休場(山の日)、米生産者物価コア指数(7月)
8月12日(金):英GDP速報値(4-6月)、ユーロ圏鉱工業生産指数(6月)、米ミシガン大学消費者信頼感指数速報(8月)

予想レートは米ドル・円が133円前半から137円前半。ユーロ・米ドルが0.90ドル半ばから1.03ドル前半。

【米国】

為替(8月8日6時00分)
 米ドル円(USDJPY) 135.02-135.06 (円)
 ユーロ円(EURJPY) 137.39-137.54 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 1.0179-1.0181 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY) 162.96-163.05 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.2065-1.2074 (米ドル)

8月5日のニューヨーク外国為替市場で最も注目されたのは、朝方に発表された7月の米雇用統計だった。7月 非農業部門雇用者数(前月比、結果:52.8万件、予想:24.9万件、前回:37.2万件)は、市場予想を大幅に上回りコロナウイルス感染拡大前の水準に回復した。7月失業率(結果:3.5%、予想:3.6%、前回:3.6%)は予想を下回った上、7月 平均時給(前年比、結果:5.2%、予想:4.9%、前回:5.1%)も予想を上回り景気後退の懸念が払拭された。40年ぶりの高インフレにも関わらず、労働市場が堅調に推移していることが示され、今後まだ積極的な金融政策が続く公算が大きくなっている。

なお、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループが政策金利のフェデラル・ファンド(FF)金利FF金利先物先物から米国の利上げ時期の確率を割り出した指標「フェドウオッチ」が通常の3倍にあたる0.75%の利上げを決める確率が65.5%に上昇し、0.50%の利上げを予想する確率が34.5%に低下した。

2年債と10年債(長期金利)の利回りは、24日連続で逆転(逆イールド)している。終値ベースで2年債が3.23%、10年債が2.827%となった。

米ドル・円(USDJPY)では、強い雇用統計結果を受け、米連邦準備理事会(FRB)の積極的な金融政策の継続が意識され米ドル買いが強まった。長期金利が2.869%まで上昇したこともプラスとなり、この日の高値135.50円まで値を上げた。その後は小幅に値を下げ135.01円で終えた。

ユーロ・米ドル(EURUSD)では、米ドル・円で米ドル買いが優勢となると急激に値を下げ、この日の安値1.0142ドルまで値を下げた。その後は、小幅にユーロに買戻しが入り終値は1.0183ドルだった。

ユーロ・円(EURJPY)は、米ドル・円の上昇につられユーロ買いが優勢となり、急激に値を上げた。この日の高値137.76円まで値を上げた後は、小幅に値を下げ終値は137.51円となった。

株式
 NYダウ平均 USD 32,803.47 +76.65(+0.23%)
 NASDAQ総合  USD 12,657.555 -63.025 (-0.49%)
 S&P500     USD  4,145.19 -6.75(-0.16%)

8月5日の米株式市場のダウ工業株30種平均は、前日の終値を小幅に上回った。7月の雇用統計で好調な結果が示されると、投資家心理が上向いた。一方で長期金利が上昇した影響からハイテク株が売られ前日の終値を下回った取引となった。しかし、景気後退懸念が和らぎ金融株や景気敏感株が買われ、小幅に前日の終値を上回り終えた。

債券
 米国債10年 2.827%(+0.151)

商品
 NY原油(WTI) 1バレル=USD 89.01 +0.47(+0.53%)(9月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,791.2 -15.70(-0.90%)(12月渡し)
 

【日本】米雇用統計の発表を控え様子見強まる

為替(17時)
8月5日の東京外国為替市場では、米雇用統計の発表を控え、米中の地政学リスクも意識され積極的な取引は控えられた。

米ドル・円は、朝方は米中の地政学リスクが嫌気され、この日の安値132.52円まで値を下げた。その後は、小幅に持ち直したが様子見の姿勢が強く、17時時点では133.29円だった。

ユーロ・米ドルは、朝方に小幅に値を下げるも、ほぼ横ばいで推移し、大きな動きは出なかった。17時時点では1.0233ドルとなっている。

ユーロ・円も雇用統計の発表を控え様子見の姿勢が強く、方向性の欠いた取引となり17時時点では136.40円だった。

債券
国債先物・22年9月限 150.70 (+0.08)
10年長期金利 0.160%(-0.010) 
 

【マーケットアナリティクス】EURUSDは見事な米雇用統計発表、週明けの安値まで下落(8月5日)

本日、発表された最新データに支えられ米ドルは幅広く上昇し、ユーロ・米ドル(EURUSD)は1.0160ドルを下回った。米長期金利の上昇も、米ドル高を後押ししている。

本稿執筆時点では、2年債利回りは3週間ぶりの高水準となる3.25%、10年債利回りは2.85%まで上昇した。

米国の雇用市場は引き続き堅調
金曜日に発表された米国非農業部門雇用者数によると、7月の米国経済は52万8000人の雇用を増加させ、平均予想の25万人の雇用増加の倍以上であったことが示された。6月の数値は38万4千人から39万8千人に修正された。

その他の統計では失業率が3.5%に低下し、賃金によるインフレの代用として重要な平均時給は2021年同月比で5.2%、前月比で0.5%の上昇となった。また、参加率は62.1%とやや低下した。

短期的な観点ではユーロ・米ドルは、1.0270ドル付近を上値抵抗線(レジスタンス)、1.0110ドル付近を下値支持線(サポート)とする横ばいのチャネル内にとどまっている。ユーロが新たに重要なトレンドを形成するためには、このチャネルをブレイクする必要がある。

今のところ、ユーロを購入する基本的な理由がないため、ブレイクが下降に転じる可能性がありそうだ。その場合、1.0110ドルを割り込むと、共有通貨は再び等価(パリティ)に向かい、そのレベルより50ピップスほど下の実際のサイクル安値にアタックする可能性がある。

EURUSD58.pngユーロ・米ドル、デイリーチャート 8月5日(CET・中央ヨーロッパ時間)

引用元: “EURUSD Drops to Weekly Lows After Superb US Jobs Data” (2022年8月5日, AXIORY Global Market News)

追記:8月8日、日本時間6:00のユーロ・米ドルは1.0179-1.0181ドルで取引されている

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アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


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