欧州景気後退懸念が強まりユーロ売り強まる

2022/08/15 6:15 JST投稿

【今週の見通し】(8月15日-8月19日)
先週は7月の米消費者物価指数(CPI)と米生産者物価指数(PPI)の結果から米国のインフレが頂点に達し減少した(ピークアウト)との観測が強まり、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ観測が後退した。しかし、FRB高官の利上げ容認発言や、ミシガン大学消費者信頼感指数速報値の結果から再び利上げ観測が強まっている。

なお、米金利先物の値動きから市場が織り込む利上げ確率を算出するCMEフェドウォッチによると、8月12日時点の利上げ確率は0.50%が約62.5%、0.75%が37.5%だった。

今週は、17日発表の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録や7月米小売売上高に注目したい。また、FRB高官の発言による影響も大きいため、同様に押さえていきたい。現状では米ドルは大きく下げづらい状況は続きそうだ。

主な金融スケジュール
8月15日(月):日本GDP速報値(4-6月)、日本鉱工業生産確報値(6月)、中国小売売上高(7月)、ニューヨーク連銀製造業景気指数(8月)、米NAHB住宅市場指数(8月)
8月16日(火):オーストラリア準備銀行(中央銀行)議事要旨(8月2日開催)、独ZEW期待指数(8月)、ユーロ圏貿易収支(6月)、米住宅着工件数(7月)、米鉱工業生産指数(7月)
8月17日(水):日本貿易収支(7月)、ニュージーランド準備銀行(RBNZ、中央銀行)政策金利発表、英消費者物価コア指数(7月)、米小売売上高(7月)、米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(7月26、27日開催)、ユーロ圏GDP改定値(4-6月)
8月18日(木):ユーロ圏消費者物価指数改定値(7月)、フィラデルフィア連銀製造業景況指数(8月)、米景気先行指数(7月)、米中古住宅販売件数(7月)、米新規失業保険申請件数(8月13日終了週) 
8月19日(金):日本消費者物価コア指数(7月)など

予想レートは米ドル・円が131円前半から135円前半。ユーロ・米ドルが1.00ドル前半から1.03ドル後半。

 

【米国】

為替(8月15日6時01分)
 米ドル円(USDJPY)    133.47-133.53 (円)
 ユーロ円(EURJPY)    136.89-137.00 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 1.0256-1.0261 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY)    161.91-162.05 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.2131-1.2137 (米ドル)

8月12日のニューヨーク外国為替市場では、7月の米消費者物価指数(CPI、10日発表)と米生産者物価指数(PPI、11日発表)の結果から米国のインフレが頂点に達し減少した(ピークアウト)との観測が強まり底堅く推移した。

朝方に8月ミシガン大学消費者信頼感指数(結果:55.1、予想:52.5、前回:51.5)の速報値が発表され、予想を上回り5月の水準に戻った。5-10年期待インフレ率(結果:3.0%、予想:2.8%、前回:2.9%)は前月から上昇し、米連邦準備制度理事会(FRB)の積極的な利上げ観測が強まっている。この結果を受け、長期金利が、2.83%から2.87%に上昇した。

また、米リッチモンド連銀のバーキン総裁はCNBCとのインタビューに「インフレ制御が一定期間継続するのを確認したい。それまでは金利が景気抑制領域に入るまで引き上げを継続していくしかない」と答えた。9月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合での利上げについては、「それまでに1つの消費者物価指数(CPI)統計と、2つの米個人所得・消費支出(PCE)統計が発表される。これらのデータに注意を払いながら先行きを判断し、会合が近づくにつれて考えを固めていくつもりだ」と述べた。

さらに、ライン川の水位が一段と低下し、一部の船舶の航行ができなくなり物流への懸念が強まった。欧州の記録的な熱波に見舞われている影響によるもので、特に懸念されるのはライン川経由で輸入している石炭の運搬への影響だ。ドイツはロシアの天然ガス供給削減を受け石炭火力発電に傾きつつあり、石炭は燃料の生命線なのだ。もし、石炭が入手できなければ、火力発電にも支障が出て電力不足が懸念される。そうなると、エネルギーのみならず、さまざまな産業への影響も出て、更なる景気後退の可能性も否めない。日本の原発事故以降フランスの原発への依存が高まっていたが、現状ではその依存も厳しく原発再稼働が残された道ではないだろうか。また、ドイツのショルツ首相でこの難局が乗り切れるのか厳しい面もあり、リスクがかなり高いといえる。

2年債と10年債(長期金利)の利回りは、29日連続で逆転(逆イールド)している。終値ベースで2年債が3.25%、10年債が2.842%となった。

米ドル・円(USDJPY)は、朝方に発表された8月ミシガン大学消費者信頼感指数の良好な結果から欧州時間に付けた高値133.89円付近の133.87円まで値を上げた。その後は週末で様子見の姿勢が強く、133円半ばで推移し終値は133.42円だった。

ユーロ・米ドル(EURUSD)では、ライン川の水位低下から投資家心理が冷え込みリスク回避の米ドル買いが強まった。徐々に値を落とし、この日の安値1.0238ドルを付けた。その後は小幅に値を戻すも上値は重く終値は1.0259ドルとなった。

ユーロ・円(EURJPY)は、リスク回避の動きから円買いが強まり、この日の安値136.87円を付けた。その後は小幅に上昇したが、再び値を下げ終値は136.88円だった。

株式
 NYダウ平均  USD 33,761.05 +424.38(+1.27%)
 NASDAQ総合  USD 13,047.186    +267.273 (+2.09%)
 S&P500      USD  4,280.15  +72.88(+1.73%) 

8月12日の米株式市場のダウ工業株30種平均は、前日の終値を3日連続で上回った。米国のインフレが頂点に達し減少した(ピークアウト)とみられFRBの利上げ観測が後退し、投資家心理が上向いた。米国の景気後退懸念の後退から特に消費関連株が買われた上、長期金利の低下からハイテク株も買われ3指数そろって値を上げ終えた。

債券
 米国債10年 2.842%(-0.046)

商品
 NY原油(WTI) 1バレル=USD 92.09 -2.25(-2.38%)(9月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,815.5  +8.30(+0.46%)(12月渡し)
 

【日本】お盆の休暇受け方向性を欠く取引に

為替(17時)
8月12日の東京外国為替市場では、お盆の連休を取っている機関投資家も多く方向性に欠いた日となった。さらに、7月の米消費者物価指数(CPI)や米生産者物価指数(PPI)を受けインフレのピークが観測されたものの9月の米利上げ観測が根強く値を下げにくい状況でもあった。株価の上昇もプラスに作用している。

米ドル・円は、機関投資家の休暇を受け大きな動きは出なかった。早朝に132.88円まで値を下げたが133円前半中心での値動きとなった。特に午後は機関投資家の参入がさらに減少し個人中心の取引となり、値動きが多くなり17時時点で133.26円となった。

ユーロ・米ドルは、日中は大きな値動きは出なかったが、欧州勢参加後に時間外の米長期金利が上昇すると、この日の安値1.0289ドルを付けた。17時時点では1.0297ドルで取引されている。

ユーロ・円は、株価の上昇を受けたリスクオンのユーロ買いが優勢となり小幅に値を上げ、この日の高値137.62円を付けた。欧州勢参加後にユーロ売りが優勢となるとこの日の安値137.11円を付け17時時点では137.22円だった。

債券
 国債先物・22年9月限  150.26 (-0.07)
 10年長期金利  0.185%(-0.005)

この記事をシェアする
アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


もっと読む
クッキー(Cookie)について: お客様が本ウェブサイトにアクセスする際、セキュリティの確保やお客様に関する情報を取得することを目的に、クッキー(Cookie)を使用する場合があります。 本ウェブサイトにお客様が継続的に訪問する場合、クッキーについて同意することと見なします。またクッキーはいつでも削除することが可能です。
FAQ お問合せ サポートデスク
月曜日-金曜日
9:00-24:00