米長期金利の動きに左右された値動きに

2022/08/22 6:08 JST投稿

【今週の見通し】(8月22日-8月26日)
先週は、17日に米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録が発表され利上げペースの減速で一致したが、これまでの政策引き締めのインフレ抑制効果を精査したいとの認識が示された。この結果から米ドル買いが弱まったが、FRB高官の利上げ容認発言から再び米ドル買いが優勢となっている。

また、欧州の気温上昇によるライン川の水位の低下から物流への影響が強まりから景気後退懸念が強まりユーロ売りが優勢だった。

今週は、日米金融政策の違いから米ドルの優勢は続くものの、米景気後退懸念は根強く値を上げにくい状況となるだろう。米個人消費支出などの経済指標や、ジャクソンホール会議でのパウエル議長の経済見通しに注目したい。

主な金融スケジュール
8月23日(火):日本全国百貨店売上高(7月)、日欧米・製造業・サービス業PMI(8月)、米新築住宅販売件数(7月)、ユーロ圏消費者信頼感指数(8月、速報値)、ミネアポリス連銀総裁発言
8月24日(水):米2年変動利付国債入札、米5年国債入札、米耐久財受注(7月)、米中古住宅販売成約指数(7月)
8月25日(木):日本企業向けサービス価格指数(7月)、独IFO企業景況感指数(8月)、米GDP改定値(4-6月)、カンザスシティー連銀主催の国際経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」(27日まで)
8月26日(金):東京都区部・消費者物価指数(8月)、米個人所得/個人消費支出(7月)、米個人消費支出(PCE)価格コア指数(7月)、米ミシガン大学消費者マインド指数(8月、確定値)、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長のジャクソンホール会議での経済見通しスピーチ

予想レートは米ドル・円が133円前半から138円前半。ユーロ・米ドルが0.98ドル前半から1.03ドル前半。

 

【米国】

為替(8月22日6時00分)
 米ドル円(USDJPY)    136.86-136.91 (円)
 ユーロ円(EURJPY)    137.39-137.51 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 1.0038-1.0039 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY)    161.83-162.03 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.1824-1.1832 (米ドル)

8月19日のニューヨーク外国為替市場は、長期金利の動きに左右された。朝方は前日の米連邦準備理事会(FRB)高官の積極的な利上げ発言から長期金利が2.998%と7月21日以来、約1カ月ぶりの高水準に上昇したが、徐々に低下した。その後は、リッチモンド連銀のバーキン総裁の発言から再び2.987%に上昇したものの小幅に低下している。

また、リッチモンド連銀のバーキン総裁が、講演で次のように述べた。「われわれはインフレ率を目標の2%に回帰させることにコミットしており、その達成に向けて必要な措置を講じる」と明言した。インフレ率の回帰はリスクがあるものの、経済活動の著しい落ち込みを招かずに達成し得るとも述べた。これを受け米長期金利が2.987%に上昇した。

2年債と10年債(長期金利)の利回りは、34日連続で逆転(逆イールド)している。終値ベースで2年債が3.238%、10年債が2.976%となった。

また、ロシア国営の天然ガス会社ガスプロムがパイプライン「ノルドストリーム1」を点検のため8月31日から9月2日までの3日間停止すると発表した。欧州では高温によるライン川の水位低下により欧州景気後退懸念が強まっており、更なる懸念が高まった。

米ドル・円(USDJPY)は、リッチモンド連銀のバーキン総裁の発言から長期金利が上昇し、7月27日以来の高値137.23円を付けた。その後は米長期金利の低下につられ値を下げ、終値は136.97円となった。

ユーロ・米ドル(EURUSD)は、欧州の景気後退懸念から徐々に値を下げ7月15日以来の安値1.0032ドルを付けた。その後小幅に値を戻し終値は1.0037ドルだった。

ユーロ・円(EURJPY)は、米ドル・円の上昇につられ値を上げていたが、ユーロ・米ドルの下落につられると徐々に値を下げた。この日の安値136.94円を付けたが、その後持ち直し137.56円で終えている。

株式
 NYダウ平均  USD 33,706.74 -292.30(-0.85%)
 NASDAQ総合  USD 12,705.215    -260.127 (-2.00%)
 S&P500      USD  4,228.48  -55.26(-1.28%) 

8月19日の米株式市場のダウ工業株30種平均は、前日の終値を下回った。長期金利が7月21日以来の高水準となり割高感が意識され、売りが優勢だった。また、毎年恒例のジャクソンホール会議でのパウエル議長の講演を控えた機関投資家の売りも出て3指数揃って値を下げ終えた。

債券
 米国債10年 2.976%(+0.096)

商品
 NY原油(WTI) 1バレル=USD 90.77 +0.27(+0.30%)(9月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,762.9  -8.30(-0.47%)(12月渡し)
 

【日本】時間外の米長期金利上昇から米ドル買いに

為替(17時)
8月19日の東京外国為替市場は、時間外の米長期金利が上昇し堅調な取引となった。

米ドル・円は、朝方に利益確定売りが出て、この日の安値135.69円まで値を下げた。その後は国内輸入企業の決済に向けた米ドル買いが出て136.37円まで値を上げた。その後は、大きな動きが出なかったが、時間外の米長期金利が上昇すると、この日の高値136.72円まで値を上げ17時時点では136.65円となった。

ユーロ・米ドルは、朝方は米ドル・円につられ米ドルが売られ、その後は小幅な動きが続いたものの、この日の安値1.0070ドルまで値を下げた。その後は値を戻し17時時点では1.0090ドルだった。

ユーロ・円は、朝方はユーロ・米ドルにつられ、この日の安値136.94円を付けた。その後は米ドル・円の上昇につられ17時時点では137.89円で取引されている。

債券
 国債先物・22年9月限  150.20 (-0.08)
 10年長期金利  0.195%(変化なし)
 

【マーケットアナリティクス】USDCAD、1.30のレジスタンスにアタック(8月19日)

カナダドルは、金曜日に下落し米ドルが再び強くなっているため、米ドル・カナダドル(USDCAD)を1.30の重要な上値抵抗線(レジスタンス)に向けて押し出した。

トレーダーが無視したカナダ小売売上高
5月の小売売上高2.3%増(2.2%増から修正)に続き、金曜日に発表されたカナダ統計局のデータでは、6月のカナダの小売売上高は前月比で1.1%増となったことが示された。この結果は、市場予想の0.3%増を上回っている。さらに、7月の小売売上高が0.2%減少することが予想されている。
 
テクニカル分析では、さらなる上昇を示唆
テクニカル分析では、夜間の急上昇から7-8月期の下落のフィボナッチリトレースメント(※)の50%レベルに相当する、1.2980-1.2985の上値抵抗線(レジスタンス)を超え、楽観的な見方が強まっている。

日足チャートでは、相場の過熱感を分析する指標のオシレーターがプラス圏にシフトしている。その結果、投資家はディップを買い、USDCADは最も抵抗の少ない経路に沿って上昇することが予想される。

1.30の上値抵抗線(レジスタンス)を通過する場合、ショートポジションのストップロス(損切り)する可能性があり、米ドルが1.3220を超える7月の高値に向けて上昇する可能性がある。

一方、1.2950を下回る場合、短期的な見通しはネガティブとなり、1.2890付近の上昇トレンドラインを目指す可能性もある。

(※)フィボナッチリトレースメント:フィボナッチは、13世紀中世ヨーロッパ時代に活躍したイタリアの数学者レオナルド・フィボナッチの名前に由来。フィボナッチ数列から導き出したフィボナッチ比率をベースとしている。リトレイスメントは戻りを意味し、戻りの目安の判断や、サポートライン、レジスタンスラインとして利用される。水準としてフィボナッチ比率に基づいた23.6%、38.2%、50%、61.8%と補足的に76.4%を用い、終点を0%とし戻りの目安を23.6%ラインに置くことから始まる。

USDCAD Attacks 1.30 Resistance

米ドル・カナダドル、デイリーチャート 8月19日(CET・中央ヨーロッパ時間)

引用元: “USDCAD Attacks 1.30 Resistance” (2022年8月19日, AXIORY Global Market News)                                  
追記:8月22日、日本時間6:00の米ドル・カナダドルは1.2990-1.2993カナダドルで取引されている

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アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


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