次回ECB理事会での0.75%利上げ観測からEUR買いに

7:37 JST投稿
 

【米国】

為替(9月1日6時01分)
 米ドル円(USDJPY) 138.94-138.96 (円)
 ユーロ円(EURJPY) 138.66-139.72 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 1.0051-1.0057 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY) 161.35-161.52 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.1618-1.1626 (米ドル)

8月31日のニューヨーク外国為替市場では長期金利が低調な動きとなり値を上げづらい状況だったが、日米の金融政策の違いが意識され投資家心理が上向いた。

取引に影響のあった発言としては、日銀の中川順子審議委員が函館市金融経済懇談会後の記者会見(オンライン形式)で金融緩和の継続については「今の時点で、前回7月の決定会合の内容以上に伝えるべき変化はない」と述べてた。さらにクリーブランド地区連銀のメスター総裁が、「インフレ率を目標まで下げるために米連邦準備理事会(FRB)は来年初頭までに政策金利を4%をやや上回る水準まで引き上げ、その水準を維持する必要がある」との見方を示している。

朝方に発表された注目の8月ADP雇用者数(結果:13.2万人、予想:30.0万人、前回:12.8万人)は予想の半数の伸びにとどまったが新たな算出方法に変わった。

2年債と10年債(長期金利)の利回りは、42日連続で逆転(逆イールド)している。終値ベースで2年債が3.495%、10年債が3.196%となった。

米ドル・円(USDJPY)は、朝方に発表された8月ADP雇用統計の弱い結果を受け、長期金利が3.104%まで低下し138.45円まで値を下げたが、算出方法の変更もあり影響は限定的だった。その後は徐々に値を戻し、日米金利差が意識されたことやメスター米クリーブランド連銀総裁の発言を受け徐々に値を上げ、終値でこの日の高値を付け138.96円で終えた。

ユーロ・米ドル(EURUSD)は来週8日の欧州中央銀行(ECB)理事会で通常の3倍にあたる0.75%の利上げが実施されるとの観測が高まり、ユーロ買いが優勢となった。ユーロ圏8月消費者物価指数速報値(結果:9.1%、予想:9.0%、前回:8.9%)が前月に続き過去最高を記録したこともプラスに作用した。さらに、ドイツ連銀ナーゲル総裁の「9月に強力な利上げが必要」との発言やフィンランド中銀レーン総裁の「来週の理事会で利上げを決定する予定でその後も追加利上げが必要になる」とのタカ派的な発言。また、月末の金の価格を決めるロンドンフィキシングに絡むユーロ買いが入り、この日の高値1.0079ドルを付けた。その後は小幅に値を下げたが底堅く終値は1.0054ドルとなった。

ユーロ・円(EURJPY)は、ユーロ・米ドルでのユーロ買いにつられ堅調だった。徐々に値を上げ、一時小幅に値を下げたが持ち直し7月26日以来、約1カ月ぶりの高値139.73円を付け139.70円で終えた。

株式
 NYダウ平均 USD 31,510.43 -280.44(-0.88%)
 NASDAQ総合  USD 11,816.203    -66.933 (-0.56%)
 S&P500     USD  3,955.00 -31.16(-0.78%)

8月31日の米株式市場のダウ工業株30種平均は、4日連続で前日の終値を下回った。26日からFRBの金融引き締めの長期化から景気後退への懸念が続き、この日もから景気敏感株を中心に幅広く売られた。長期金利の上昇も続き株式の割高感が意識されたことも大きく、ハイテク株も売られ3指数揃って値を下げている。

債券
 米国債10年 3.196%(+0.086)

商品
 NY原油(WTI) 1バレル=USD 89.55 -2.09(-2.28%)(10月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,726.2 -10.10(-0.58%)(12月渡し)
 

【日本】米ドル 前日の高値の反動から売り優勢

為替(17時)
8月31日の東京外国為替市場では、前日の高値の反動が大きく、値を上げづらい状況となった。

米ドル・円は、前日の海外市場で7月15日以来の高値139.07円を付けた反動から米ドル売りが優勢だった。徐々に値を下げ、16時頃に、この日の安値138.27円を付けた。時間外の長期金利の低下の影響も大きかった。その後は、値を戻し17時時点では138.59円だった。

ユーロ・米ドルは、米ドル・円の米ドル売りの優勢を受け14時過ぎに、この日の高値1.0046ドルを付けた。その後は、ロシアの国営ガス会社「ガスプロム」が予告していたドイツとのパイプラインの定期点検を開始し天然ガスの供給を止めた。さらに、フランスの大手エネルギー会社「エンジー」に対し、7月の代金未払いを理由に9月1日から天然ガスを止めるとしたことが懸念され徐々に値を下げ、17時時点で1.0001ドルとなった。

ユーロ・円は、朝方に小幅に値を上げ、この日の高値139.13円を付けた。その後は米ドル・円とユーロ・米ドル、両方の影響を受け、小幅な動きに留まっていたが、ガスプロムの発表が報じられると徐々に値を下げ138.48円まで値を下げ、17時時点では138.62円で取引されている。

債券
 国債先物・22年9月限 149.53 (+0.02)
 10年長期金利 0.220%(変化なし)
 

【マーケットアナリティクス】ユーロ・カナダドルは主要なサポートを上回る水準に回復(8月31日)

ユーロ・カナダドル(EURCAD)は、重要な1.30レベルを超えて推移しており、強気(ブル)の反転フォーメーションを形成している可能性が高く、今後さらなる上昇の可能性もある。

EUのインフレ率に注目
ユーロスタットが水曜日に発表した8月EU基準消費者物価指数(HICP)によると、7月の8.9%の上昇に対し、今回は年率で9.1%の上昇となった。市場では9.0%の予想だった。

8月のコアインフレ率は前年同月比4.3%増で、予想の4.1%と7月に発表された4.0%を上回った。

月間ベースのHICPは0.5%となり、7月の0.1%、予想の1.1%から上昇した。コアHICPは0.5%上昇し、予想の0.4%と7月に観測された-0.2%を上回っている。

インフレデータを受け、ドイツの中央銀行総裁で欧州中央銀行(ECB)運営評議会のメンバーであるヨアヒム・ナーゲル氏は、「ECBは来週、断固として行動することが緊急に必要だ」と述べた。

ノルデア銀行(本部:フィンランド・ヘルシンキ)のエコノミストは「金融市場では0.75%の利上げが価格に反映されていないことや、記者会見のトーンがタカ派(積極的な金融政策を推し進める)姿勢になりそうなことから、金融市場の最初の反応は金利上昇、債券スプレッド拡大、ユーロ高になると予想している。」と、述べている。

日足チャートは強気
EURCADは、心理的水準である1.30以下のストップロスをすべて破壊したため、この下値支持線(サポート)より上に戻ることができた。そのため1.30より上で取引される限り、見通しは楽観的であると思われる。

 次のターゲットは1.32付近となる可能性があり、これを上に抜けた場合1.34に向けたさらなる上昇の足が見られる可能性がある。

また、1.30がサポートとなり維持されない場合、弱気(ベア)が戻り、1.2880付近の実際のサイクル安値に向けてユーロを急速に押し上げる可能性がある。
     ユーロ・カナダドル、デイリーチャート 8月31日(CET・中央ヨーロッパ時間)

引用元: “EURCAD Back Above Key Support” (2022年8月31日, AXIORY Global Market News)

追記:9月1日、日本時間6:12のユーロ・カナダドルは1.3195 - 1.3205カナダドルで取引されている

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アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


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