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【今週の見通し】(9月5日-9月9日)
先週は8月26日のジャクソンホール会議でのパウエル議長の講演やFRB高官の積極的に金融引き締めを実施するとのタカ派的な発言が好感された。一方で日銀の黒田総裁は、金融緩和の継続を示唆し、日米の金融政策の違いから米ドル一強が続いている。特に対円では1998年8月以来、約24年ぶりの高値を連日で更新している状況だ。
米ドル高や金利の上昇は、債務の多い新興国や発展途上国に対する更なる追い打ちとなる。足元ではコロナウイルスの感染拡大でさらに債務が増加しており、これらは債務の返済増加への懸念の高まりを意味しているのだ。ユーロ、ポンド、円などは弱く、債務残高の大きな国のリスクの高まりから金融市場安定の確保が困難となる懸念も強まっており注視したい。
今週は、月曜日が米国の祝日となるため、落ち着いたスタートとなりそうだ。また、9月20-21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)前の沈黙期間前の週となることから米金融当局者の発言や、6日の8月米ISM非製造業景況指数にも注目が高まる。
主な金融スケジュール
9月5日(月):米レイバーデーの祝日による休場、7月ユーロ圏小売売上高、英国新首相選出、OPEC(石油輸出国機構)プラス閣僚級会合(オンライン)
9月6日(火):8月米ISM非製造業景況指数、豪準備銀行政策金利発表
9月7日(水):米地区連銀経済報告(ベージュブック)、7月米貿易収支、8月中国貿易収支、4-6月期豪国内総生産、4-6月期欧州域内総生産確定値、カナダ中央銀行政策金利発表、ブレイナード FRB 副議長講演
9月8日(木):4-6月期国内総生産改定値、欧州中央銀行理事会(ECB)、ラガルド総裁会見、7月経常収支、7月豪貿易収支、米新規失業保険申請件数(9/3終了週)、パウエル FRB 議長講演
9月9日(金):7月米卸売在庫(改定値)、8月中国消費者物価指数
9月11日(日):スウェーデン総選挙
予想レートは米ドル・円が138円半ばから142円前半。ユーロ・米ドルが0.97ドル半ばから1.01ドル前半。
【米国】
為替(9月5日6時01分)
米ドル円(USDJPY) 140.10-140.20 (円)
ユーロ円(EURJPY) 139.08-139.21 (円)
ユーロ米ドル(EURUSD) 0.9918-0.9922 (米ドル)
ポンド円(GBPJPY) 160.77-160.96 (円)
ポンド米ドル(GBPUSD) 1.1506-1.1515 (米ドル)
9月2日のニューヨーク外国為替市場では注目の8月米雇用統計が発表された影響が大きかった。非農業部門雇用者数(NFP、前月比、結果:31.5万件、予想:30.0万件、前回:52.8万件)では、7月から鈍化したものの予想を上回り、健全な労働需要があることが示された。一方で、失業率(前月比、結果:3.7%、予想:3.5%、前回:3.5%)が労働参加率の上昇により予想外に増加した。なお、労働参加率は2020年3月以来の高水準と同様の62.4%に上昇している。この結果から9月の大幅な利上げ観測がやや後退し、長期金利は3.286%まで上昇した。その後、長期金利は徐々に低下し、この日の最も低い利率は3.174%だった。
2年債と10年債(長期金利)の利回りは、44日連続で逆転(逆イールド)している。終値ベースで2年債が3.396%、10年債が3.195%となった。
米ドル・円(USDJPY)は、米雇用統計発表前に小幅に値を上げていたが、発表後に米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げペースを緩めるとの観測が強まり、この日の安値139.87円を付けた。その直後に非農業部門雇用者数の良好な結果が判明すると、1998年8月以来、約24年ぶりの高値140.80円となった。その後は、失業率の低下が懸念され徐々に長期金利が低下し、それに伴って米ドルが売られ139.92円に値を下げた。その後、小幅に持ち直し、終値は140.20円となっている。
ユーロ・米ドル(EURUSD)は朝方に値を下げるも、ロシアとドイツをつなぐ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム1」の供給再開が報じられると投資家心理が上向いた。さらに雇用統計発表後に米ドル売りが強まると、この日の高値1.0034ドルを付けた。しかし、午後になりロシアが「ノルドストリーム1」の停止の継続を発表すると、急激にユーロ売りが強まり、この日の安値0.9943ドルになっている。その後は小幅に値を戻し終値は0.9954ドルだった。
ユーロ・円(EURJPY)は、ユーロ・米ドルの動きにつられ、朝方に値を下げるも持ち直し、朝方にこの日の高値140.75円を付けた。その後は再びユーロが売られるも持ち直したが、「ノルドストリーム1」の停止の発表が懸念され急激にユーロ売りが高まると、この日の安値139.26円を付けた。その後は小幅に値を戻し139.57円で終えている。
株式
NYダウ平均 USD 31,318.44 -337.98(-1.06%)
NASDAQ総合 USD 11,630.865 -154.261 (-1.30%)
S&P500 USD 3,924.26 -42.59(-1.07%)
9月2日の米株式市場のダウ工業株30種平均は、再び前日の終値を下回った。朝方発表の米雇用統計で9月の大幅な利上げ観測がやや後退し買いが優勢となった。ある程度買われると、FRBによる金融引き締めで景気後退の懸念が意識され、景気敏感株を中心とした売りに転じた。ハイテク株中心のナスダックは6日連続で前日の終値を下回った影響も受け、この日の高値から安値の下落幅は844ドルに達している。
債券
米国債10年 3.195%(-0.07)
商品
NY原油(WTI) 1バレル=USD 86.87 +0.26(+0.30%)(10月渡し)
NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,722.6 +13.30(+0.78%)(12月渡し)
【日本】米ドル円 更に24年ぶりの高値を更新
為替(17時)
9月2日の東京外国為替市場では、米ドル・円が前日のニューヨーク外国為替市場で付けた24年ぶりの高値140.23円をさらに更新した。米雇用統計の発表を控え、値を上げづらい状況ながら日米金融政策の違いから連日で高値を更新している状況だ。
円安を受け、政府要人からも口先介入が行われた。松野博一官房長官は定例会見で「為替相場はファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に沿って安定的に推移することが重要で、急速な変動は望ましくない」との認識を示した。また、鈴木俊一財務相は「急激な変動は好ましくない。最近の動きは少し幅広い、大きいというような感覚を持っている。いずれにしても注視をしていかなければならない」と述べている。
米ドル・円は、朝方は、前日のニューヨーク市場で約24年ぶりの高値を付けた反動で米ドルが売られ、この日の安値139.87円を付けた。その後は、再び日米金融政策の違いが意識されると値を上げ、約24年ぶりの高値を更新し140.43円を付けた。さらに、米雇用統計の発表を控え、方向感が定まらず17時時点では140.24円となった。
ユーロ・米ドルは、前日のニューヨーク市場での安値を受けたユーロの買戻しが入り、小幅に値を上げた。欧州時間になると欧州で株価が上昇したことが好感され、この日の高値0.9996ドルまで値を戻し17時時点では0.9988ドルだった。
ユーロ・円は、朝方は米ドル・円の米ドル売りにつられ値を下げた。しかし、ユーロ・米ドルの上昇につられ徐々に値を上げた。7月22日以来の高値140.16円を付け、17時時点では140.08円で取引されている。
債券
国債先物・22年9月限 149.27 (-0.16)
10年長期金利 0.235%(変化なし)