米ドル FOMCでの利上げ観測強まり値を戻す

7:45  JST投稿

【米国】

為替(9月9日6時00分)
 米ドル円(USDJPY)    144.09-144.12 (円)
 ユーロ円(EURJPY)    144.01-144.10 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 0.9994-0.9999 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY)    165.69-165.83 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.1499-1.1506 (米ドル)

9月8日のニューヨーク外国為替市場は、先週分の新規失業保険申請件数の予想外な減少や米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の発言を受け、米ドルが買い戻された。

まず、米新規失業保険申請件数(結果:22.2万件、予想:23.4万件、前週23.2万件)が4週連続で減少し、5月以来の低水準となった。依然、先行きの不透明感が強いものの、良好な労働需要が意識されている。

さらに、パウエル議長はケイトー研究所の会議で「われわれはこれまでと同様、直ちに、真っすぐに、力強く行動する必要がある」と指摘した。さらに、「同僚と私は、このプロジェクトに強くコミットしており、根気強く続けていく」とタカ派的な発言を行なった。「インフレ期待を抑制し続けるのは非常に重要だ」と強調しており、9月米連邦公開市場委員会(FOMC)で3会合連続での0.75%の利上げ観測が強まった。

また、シカゴ地区連銀のエバンズ総裁は、来週発表される米インフレ統計(8月 消費者物価指数・CPI)はFRBが9月のFOMCでどの程度金利を引き上げるべきかを検討する上で「有益な」情報になると述べたことも米ドル買いを後押ししている。

合わせて、欧州中央銀行(ECB)が定例理事会で、主要政策金利を0.75%利上げし1.25%に定めた。1999年に通貨ユーロが誕生し、ECBが金融政策運営を担って以降で初めて通常(0.25%)の3倍となる大幅な利上げを決定した。ラガルドECB総裁は、理事会後の会見で「2%の中期目標達成に向け、必要なステップとして今後数回の理事会を要する。おそらく今回を含めて2回以上、5回以下だろう」と述べた一方で、「次回の利上げは0.75%である必要はない。0.75%は標準ではない」と述べている。

2年債と10年債(長期金利)の利回りは、47日連続で逆転(逆イールド)している。終値ベースで2年債が3. 512%、10年債が3.323%となった。

米ドル・円(USDJPY)は、先週分の新規失業保険申請件数の予想外な減少やパウエル議長のタカ派的な発言から米ドル買いが強まり144.44円付近まで買い戻された。その後は、値を下げるもシカゴ連銀エバンズ総裁の発言や長期金利が3.21%から3.30%に持ち直したことがプラスに作用し、徐々に値を戻した。その後は、CPIの発表が意識されると様子見の姿勢が強まり、終値は144.11円となった。

ユーロ・米ドル(EURUSD)は、ECBの大幅な利上げ決定を受け、この日の高値1.0029ドルを付けたが、ラガルド総裁が次回の利上げ幅0.75%を否定すると投資家心理が冷え込んだ。この結果、この日の安値0.9931ドルまで売られたが、ECB当局者が0.75%利上げの可能性を認めた報道から等価(1ドル)付近に値を戻し終値は0.9997ドルだった。

この、利上げに関する報道は、複数の欧州中央銀行(ECB)当局者が匿名を条件にブルームバーグに述べたもの。ある関係者は「インフレ見通しが再度の大幅利上げを正当化するのであれば、10月に再び0.75ポイントの利上げを実施する用意がある。」と明らかにしている。

ユーロ・円(EURJPY)は、朝方にECBの利上げを受け、この日の高値144.32円を付けた。その後はラガルド総裁の発言から、この日の安値143.18円を付けたもののECB関係者が利上げの可能性を述べると徐々に値を戻し144.08円で終えている。

株式
 NYダウ平均  USD 31,774.52 +193.24(+0.61%)
 NASDAQ総合  USD 11,862.129    +70.229 (+0.59%)
 S&P500      USD  4,006.18  +26.31(+0.66%) 

9月8日の米株式市場のダウ工業株30種平均は、連日で前日の終値を上回った。前日同様に株価の下落が続き売られ過ぎとの判断から買いが優勢となったが、昼過ぎに世界的な金融引き締めによる景気後退が意識されると、売りが強まり200ドル近く前日の終値を下落する場面もあった。しかし、その後は再び持ち直したものの、13日発表の8月米消費者物価指数(CPI)の発表を控え、上昇幅は抑制されたが3指数揃って値を上げ終えている。

債券
 米国債10年 3.323%(+0.058)

商品
 NY原油(WTI) 1バレル=USD 83.54 +1.60(+1.95%)(10月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,720.2  -7.60(-0.44%)(12月渡し)
 

【日本】米ドル・円 値を下げるも高値水準続く

為替(17時)
9月8日の東京外国為替市場では、前日のニューヨーク市場で米ドル・円が150円近く値を上げた反動から値を下げていたが日米の金融政策の違いが意識され、朝方は再び買いが優勢だった。しかし、パウエル議長の講演や、財務省、金融庁、日銀が情報交換会合(3者会合)を実施し、値を上げづらい状況だった。会談後に神田財務官が急激な円安を危惧し、あらゆる選択肢を検討対象とするとの発言から、わずかに円が買い戻されている。

米ドル・円は、ニューヨーク市場で値を下げた反動から朝方は買戻しが入り、この日の高値144.55円まで値を上げた。その後は売りが優勢の値動きが荒い展開となり徐々に値を落とし、17時時点では143.82円となった。

ユーロ・米ドルは、朝方から小幅に値を下げたが欧州中央銀行(ECB)理事会での利上げ観測から小幅な下げにとどまった。欧州勢参加直後に利上げへの期待から買戻しが入り、この日の高値1.0015ドルに値を上げたものの再び売られ0.9977ドルとなったが、持ち直し17時時点では0.9982ドルだった。

ユーロ・円は、朝方は米ドル・円の上昇につられ、この日の高値144.32円を付けた。その後は、ユーロ・米ドルの下落につられ徐々に値を下げつつ荒い値動きとなり、17時時点では143.56円で取引されている。

債券
 国債先物・22年9月限  149.44 (+0.17)
 10年長期金利  0.245%(変化なし)
 

【マーケットアナリティクス】EURUSD ECBのタカ派な姿勢にもかかわらず、等価を下回る水準に留まる(9月8日)

ユーロ・米ドル(EURUSD)は、心理的な境目の1.0を超えることができず、その下で推移しており、本稿執筆時点では0.9950付近で推移し0.5%の下落となっている。

ECBが利上げを発表
ECBは、この日、銀行が中央銀行に預ける際の金利(中銀預金金利)を0%から0.75%に引き上げた。これにより欧州の金利が約10年ぶり、2012年7月以来の良好な水準となっている。ECBのラガルド総裁は「将来の政策金利に関する運営理事会の決定は引き続きデータ依存で、会合ごとのアプローチに固執するだろう」と示した。

また、ECBによると「預金金利がゼロを上回ったことにより、過剰準備の補填のための2階層システムはもはや必要なく、本日の措置はより中立的な政策スタンスへの移行を前倒しする「大きな一歩」となった。その結果、運営理事会は信用乗数をゼロに設定し、2段階制を停止することを決定した。

さらにECBは最近の統計がユーロ圏の経済発展の著しい減速を示しており、2022年前半に回復した後、年後半から2023年の第1四半期にかけて経済が失速する可能性が高いとしている。

ユーロは等価を上回ることができない
ユーロはこの日、70ピップス下落し等価(パリティ)を割り込んだため、前日の安定的に上昇したラリーはすぐに忘れ去られているようだ。現在のネガティブな投資家心理打ち消すには、1.01より上に飛び出す必要がある。

しかし、日足チャートには、強気(ブル)の反転フォーメーションである素晴らしい下落ウェッジパターンがあり、今回は価格とRSI指標の間の強気の乖離によって補強されている。これは、近い将来、ユーロにプラスとなる可能性がある。

下降局面では、0.9850付近のサイクル安値の手前の0.99が下値支持線(サポート)となることが予想されるが、上昇局面では売られるためトレンドは依然として弱気であるように思われる。

EURUSD Stays Below Parity Despite Hawkish ECB

ユーロ・米ドル、デイリーチャート 9月8日(CET・中央ヨーロッパ時間)

引用元: “EURUSD Stays Below Parity Despite Hawkish ECB” (2022年9月8日, AXIORY Global Market News)    

追記:9月9日、日本時間6:00のユーロ・米ドルは0.9994-0.9999ドルで取引されている

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アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


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