低調な米英経済指標から投資家心理冷え込む

2022/09/19 6:58  JST投稿

【今週の見通し】(9月19日-9月25日)
先週まで米ドルの一人勝ち状態が続いていたが9月13日に米消費者物価指数(CPI)の発表終え、FRBの利上げ観測が強まり一段落した。さらに、円安への警戒感から政府関係者の口先介入が行われるとともに、9月14日に日銀が為替介入に向け複数の市場関係者に相場水準を訪ねる「レートチェック」を実施したとの報道から円が買い戻されている。

今週は、各国の中央銀行が高インフレへの対応が迫られる中、米連邦準備制度理事会(FRB)が米連邦公開市場委員会(FOMC)を9月20、21日に開催する。今回、3回連続の0.75%の大幅な利上げに踏み切る公算が強まっており注目が高まっている。また、9月21、22日には日銀の金融政策決定会合が予定されており、緩和継続の維持が見込まれているのだ。さらに、9月22日には英国をはじめとした中央銀行が政策金利を発表する予定となっている。特に、英中銀に注目したい。昨年12月以降、6会合連続での利上げを実施しており、前回は27年ぶりの0.5%の大幅利上げを実施した。今回も同様の利上げが見込まれており、英国の景気後退への懸念がさらに高まると、発表後にポンド売りにつながる可能性が強く注意したい。

主なスケジュール
9月19日(月):東京市場休場(敬老の日)、米NAHB住宅市場指数(9月)、英市場休場(エリザベス女王国葬)
9月20日(火):消費者物価コア指数(8月)、米住宅着工件数(8月)、FOMC(21日まで)、国連総会の一般討論演説(23日まで)
9月21日(水):日銀政策委員会・金融政策決定会合(22日まで)、米・中古住宅販売件数(8月)、米・FOMC政策金利発表、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長記者会見
9月22日(木):日銀政策委員会・金融政策決定会合(2日目、政策金利発表)、黒田日銀総裁会見、イングランド銀行(BOE)、トルコ中銀、スイス中銀、政策金利発表、米景気先行指数(8月)、 米新規失業保険申請件数(9月17日終了週)、ユーロ圏消費者信頼感指数(9月、速報値)
9月23日(金):東京市場休場(秋分の日)、欧・米・製造業/サービス業PMI(9月)、パウエルFRB議長がイベントで冒頭挨拶、ユーロ圏製造業PMI(9月、速報値)
9月25日(日):ハリス米副大統領が日本・韓国を訪問(29日まで)、イタリア総選挙

予想レートは米ドル・円が141円前半から146円半ば。ユーロ・米ドルが0.98ドル前半から1.02ドル前半。
 

【米国】

為替(9月19日6時00分)
 米ドル円(USDJPY)    142.90-142.96 (円)
 ユーロ円(EURJPY)    143.06-143.24 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 1.0012-1.0018 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY)    163.20-163.39 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.1418-1.1423 (米ドル)

9月16日のニューヨーク外国為替市場では、日本時間に発表された低調な8月英小売売上高から景気減速懸念が強まり、投資家心理が冷え込んだ。8月英小売売上高(前月比、結果:-1.6%、予想:-0.4%、結果:0.3%)は、市場予想の4倍もの減少率となっている。日銀の為替介入への警戒感もあり、値を上げづらい状況だった。

また、15日に世界銀行が世界的な景気後退に向かっている可能性を示唆した影響も大きかった。足元では世界各国の中央銀行が高インフレの対応に追われ、利上げを実施している。マルパス総裁は「世界経済は急激に減速している。より多くの国がリセッションに陥ることで一段と減速する可能性がある」と述べ、「こうした傾向が続けば、新興国や発展途上国の経済に壊滅的な影響が及ぶことが懸念される」と示唆した。

なお、朝方に発表された9月ミシガン大学消費者信頼感指数(結果:59.5、予想:59.9、結果:58.2)は、市場予想を下回ったものの、ガソリン価格の低下からインフレ期待が低下した。1年先のインフレ期待が2021年9月以来の低水準の4.6%となり、前月の4.8%を下回った。5年先では2.9%から2.8%に低下し、2021年7月以来の低水準となっている。

金融政策の影響を受けやすい2年債と10年債(長期金利)の利回りは、53日連続で逆転(逆イールド)した。終値ベースで2年債が3.871%、10年債が3.455%となっている。

米ドル・円(USDJPY)は、朝方に発表された9月ミシガン大学消費者信頼感指数が低調な結果となり、米ドル売りが強まった。この結果、この日の安値142.86円まで米ドルが売られている。その後は、小幅に持ち直し終値は142.92円となった。

ユーロ・米ドル(EURUSD)は、日本時間に低調な8月英小売売上高からポンドの急落が契機となりユーロ売りが強まった反動からユーロが買われた。欧州中央銀行(ECB)の金融引き締めが意識されことや9月ミシガン大学消費者信頼感指数の低下から米ドル売りが強まったことがプラスとなり、この日の高値1.0036ドル付けた。その後は、小幅な下げに転じ終値は1.0016ドルだった。

この日はECB高官の利上げに関する発言が相次いだ。まず。ラガルド総裁はイベントで「高インフレによる過度な賃金上昇圧力を断固として阻止し、あらゆる金融政策手段を駆使してこの目標を達成しなければならない。」と述べている。さらに、ECBのデギンドス副総裁は、「今後数カ月は追加利上げが続くだろう」と言及した上で、その頻度や度合いについては根本的にデータ次第だとの考えを示した。また、ECB政策委員会メンバーのナーゲル・ドイツ連邦銀行総裁は、インフレを抑制するためにECBは利上げを継続するとの見方を示唆している。

ユーロ・円(EURJPY)は、米ドル・円で朝方に米ドルが売られた流れにつられ、この日の安値142.51円を付けたが、ユーロ・米ドルで買いが高まった流れを受けると143.43円まで値を戻した。その後は、ユーロ売りに転じ143.22円で終えた。

ポンド・米ドル(GBPUSD)は日本時間に低調な8月英小売売上高を受け、37年半ぶりの安値1.1351ドルを付けた後は持ち直したが、再び値を下げた。しかし、再び上昇に転じ終値は1.1412ドルとなった。

株式
 NYダウ平均  USD 30,822.42 -139.40(-0.45%)
 NASDAQ総合  USD 11,448.404    -103.853 (-0.89%)
 S&P500      USD  3,873.33  -28.02(-0.71%) 

9月16日の米株式市場のダウ工業株30種平均は、前日の終値を連日で下回った。物流大手フェデックスが前日の取引終了後に発表した決算で「国内外の景況悪化により世界的な出荷量の減少」が示され景気後退への懸念が強まり、終日で前日の終値を下回る取引となった。一方で、長期金利が低下すると、ハイテク株が買い戻され下落幅が緩和されている。

債券
 米国債10年 3.455%(-0.004)

商品
 NY原油(WTI) 1バレル=USD 85.11 +0.01(+0.01%)(10月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,683.5  +6.20(+0.37%)(12月渡し)
 

【日本】ポンド 対ドルで37年半ぶりの安値に

為替(17時)
9月16日の東京外国為替市場では、時間外の米金利の動きに左右されるも3連休を控え、機関投資家の持高の調整に絡む取引が中心となり、大きな方向性は出なかった。

一方で15時に発表された8月英小売売上高が、2021年7月以来で初めて全項目でマイナスを記録した。この結果を受けポンドは対ドルで急激に売られ、1985年3月以来となる安値1.1351ドルを付けた。対ユーロも昨年2月以来となる0.8766ポンド、対円でも162.86円まで値を下げている。エリザベス女王の国葬に伴う休暇による連休の影響も大きい。

米ドル・円では、朝方は機関投資家の持高の調整が出て142.88円まで値を下げた。その後は時間外の米長期金利が上昇に転じると持ち直し、この日の高値143.69円まで値を上げた。その後は欧州株の下落や米長期金利の低下もあり17時時点では143.44円となった。

ユーロ・米ドルは、朝方から堅調な取引が続いたが、英小売売上高の冴えない結果から、この日の安値0.9945ドルを付けた。その後は小幅に値を戻し17時時点では0.9956ドルだった。

ユーロ・円は、朝方は米ドル・円の下落につられ143.03円まで値を下げたが、徐々に値を戻した。その後ポンドの下落につられ、この日の安値142.65円まで売られた後は、小幅に戻し17時時点では142.82円で取引されている。

債券
 国債先物・22年12月限  148.48 (-0.08)
 10年長期金利  0.250%(変化なし)
 

【マーケットアナリティクス】AUDUSD リスクオフ取引が優勢の中、2年ぶりの安値に下落(9月16日)

米ドルが断トツの強さで市場を牽引する中、豪ドル・米ドル(AUDUSD)は2020年6月以来の安値となる0.67を下回る、0.3%の下落となっている。

今週の市場では投資家心理が弱気(ベア)となり、米国株や商品に影響を及ぼしただけでなく、豪ドルやニュージーランドドルなどの商品先物価格の影響を受けやすい通貨でも下落傾向が見られた。

中国の弱い経済指標で豪ドルが弱体化
中国国家統計局がこの日発表した8月の新築住宅価格(政府支援住宅除く)によると、中国の住宅価格は8月に1.3%の下落となり、月間ベースでこの7年間で最大の下落幅を記録した。中国の経済成長の大部分は多額の負債を抱える不動産業界への依存が大きく、今年に入ってから資金不足により、さらに多大な影響を受けている。

中国の8月小売売上高と鉱工業生産は予想を上回る伸びを示した一方で、新築住宅価格は12カ月連続で下落しており、景気の上向きを打ち消す結果となった。

今年、コロナウイルスの感染拡大による相次ぐ都市封鎖により中国の経済活動は滞り、政府は成長を維持するために複数の刺激策を講じている。

また、この日はオーストラリア準備銀行(中央銀行/RBA)のロウ総裁の経済委員会での証言が影響を与えた。ロウ総裁は、「インフレが極めて高い水準であり、公正な期間で目標に戻る必要がある」と述べ、「賃金はまだ抑制されており、オーストラリアは米国よりはるかに良い状況にある」と語った。

弱気トレンドは継続
安値更新までは更なる下落の可能性があるため、市場関係者の否定的な受け止めから弱気な見通しが続いている。

FRBが来週の会合でタカ派的な大幅な利上げを実施した場合に0.65となる可能性があり、これが次のターゲットとなる。あるいは、当面の売り圧力を打ち消すには0.6830より上への上昇が必要だ。

AUDUSD Drops to 2-year Lows Amid General Risk-off Trading

豪ドル・米ドル、デイリーチャート 9月16日(CET・中央ヨーロッパ時間)
 
引用元: “AUDUSD Drops to 2-year Lows Amid General Risk-off Trading” (2022年9月16日, AXIORY Global Market News)   
 
追記:9月19日、日本時間6:00の豪ドル・米ドルは0.6718-0.6723米ドルで取引されている

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アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


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