英新政権の大規模経済政策への懸念強まる

2022/09/26 6:46  JST投稿
 

【今週の見通し】(9月26日-10月2日)
先週は9月20、21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、6月、7月に続き3会合連続で通常の3倍となる0.75%の利上げを決定し、一時的に米ドルへの懸念が強まった。しかし、米ドル一人勝ちの状況は続いている。そんな中で、9月22日の日本政府による円買い介入から5円程急激に値を下げる場面もあった。介入への警戒はあるものの、日本単独での介入には限界があり日米の金利差を考えると米ドルが買われる要素しかない。現状では、値を下げたところが絶好の買戻しとなり米ドルが大幅に値を下げることは考えにくいだろう。
 
今週は、米ドルは引き続き堅調で、145円が当面の上値抵抗線(レジスタンス)になるだろう。また、欧州中央銀行(ECB)や英中央銀行は大幅な利上げを行なっているが、エネルギー高やインフレによる景気後退は避けられない。さらに、英大規模減税の実施への懸念も加わりユーロやポンドは売られやすい状況が当面続くものとみられる。
 
主なスケジュール
9月26日(月):黒田日銀総裁の挨拶(大阪経済4団体共催懇談会)、雨宮日銀副総裁の挨拶(全国証券大会)、経済協力開発機構(OECD)世界経済見通し、アジア 開発銀行(ADB)年次総会(30日まで、フィリピン)、独IFO企業景況感指数(9月)、ラガルドECB総裁(欧州議会経済金融委員会)、ボストン連銀総裁講演、アトランタ連銀総裁講演、クリーブランド連銀総裁講演
9月27日(火):故安倍元首相の国葬(日本武道館)、企業向けサービス価格指数(8月)、米耐久財受注(8月)、米S&Pコアロジックケースシラー住宅価格指数(7月)、米消費者信頼感指数(9月)、米新築住宅販売件数(8月)、米FHFA住宅価格指数(7月)、パウエルFRB議長(討論会参加)、シカゴ連銀総裁講演
9月28日(水):日銀金融政策決定会合議事要旨(7月20、21日開催分)米中古住宅販売成約指数(8月)、米卸売在庫(8月、速報値)、ラガルドECB総裁講演、シカゴ連銀総裁講演、アトランタ総裁質疑応答
9月29日(木):日中国交正常化50周年、米GDP確定値(4-6月)、米新規失業保険申請件数(9/24終了週)ユーロ圏消費者信頼感指数(9月、確報値)、サンフランシスコ連銀総裁講演、クリーブランド連銀総裁講演
9月30日(金):完全失業率・有効求人倍率(8月)、鉱工業生産指数(8月)、住宅着工件数(8月)、中国製造業・非製造業PMI(9月)、中国財新製造業PMI(9月)、ユーロ圏消費者物価コ数(9月)、米・個人所得・個人支出(8月)、シカゴ購買部協会景気指数(9月)、ミシガン大学消費者信頼感指数(9月、確報値)、EUエネルギー担当相臨時会合、ブレイナードFRB副議長会議開会挨拶、NY連銀総裁会議閉会挨拶
10月2日(日):ブラジル大統領選挙

 
予想レートは米ドル・円が140円後半から145円半ば。ユーロ・米ドルが0.95ドル前半から0.98ドル後半。
 

【米国】

為替(9月26日6時01分)
 米ドル円(USDJPY)    143.30-143.41 (円)
 ユーロ円(EURJPY)    138.85-139.03 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 0.9671-0.9675 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY)    155.50-155.70 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.0793-1.0803 (米ドル)
 
9月23日のニューヨーク外国為替市場では、朝方に発表された9月 米製造業PMIの良好な結果から米国経済の力強さが感じられ、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げに耐えられるとの観測が強まった。
 
9月 米製造業PMI(結果:51.8、予想:51.2、前回:51.5)では、良好な結果となりインフレ圧力の緩和が示された。9月サービス業PMI(結果:49.2、予想:45.4、前回:43.7)でも、改善の見通しが見られた。9月総合PMI(結果:49.3、予想:46.0、前回:44.6)は3ヵ月連続で50を下回るも改善の兆しが見られている。
 
また、英トラス政権が1972年以来の大規模な減税を打ち出し、財政悪化への懸念が強まりポンドと英国債で大幅な売りが出た。今回の減税では景気への長期的な効果を狙い、個人所得税を引き下げ、予定していた法人税率引き上げは撤回する。この経済対策の費用は5年間で1610億ポンド(約25兆5000億円)に上る見込み。これを受けポンドは対ドルで1985年以来、37年ぶりの安値1.0840ドルを付けた。対ユーロでも昨年1月以来の安値0.8937ポンド、対円でも3月17日以来の安値155.45円を付けている。対ドルは、1.0856ドルで終えている。
 
今回の政策はインフレにさらなる追い打ちをかけ債務が増加し、自国では賄いきれない可能性が強い。先日の英中銀の利上げ対策に泥を塗る可能性も強まった。5年債利回りは一時54ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇の4.08%に急騰した。ブルームバーグによるとこの急騰は、ブルームバーグがデータ収集を開始した1992年以降で最大の上昇となる勢い。
 
金融政策の影響を受けやすい2年債と10年債(長期金利)の利回りは、58日連続で逆転(逆イールド)している。終値ベースで2年債が4.203%、10年債が3.687%となっている。長期金利は一時3.829%と2010年4月以来、12年ぶりの高水準となった。2年債も上昇し、一時4.27%と2007年10月、15年ぶりの高水準となり、さらに逆イールドが進んだ。
 
米ドル・円(USDJPY)では、9月 米製造業PMIの良好な結果や英国の大規模減税策への懸念から堅調に値を伸ばした。この日の高値143.46円を付け、その後、小幅に値を下げるも堅調に推移し終値は143.31円となった。
 
ユーロ・米ドル(EURUSD)では、地政学リスクに加え英国の大規模金融政策への懸念からリスクオフの米ドル買いが進み、2002年9月以来、20年ぶりの安値0.9668ドルを付けた。その後は小幅に値を戻し終値は0.9687ドルだった。
 
ユーロ・円(EURJPY)は、世界的な景気後退への懸念から円買いが強まり、この日の安値138.67円まで値を下げた。その後は、小幅に持ち直し138.93円で終えている。
 
株式
 NYダウ平均  USD 29,590.41 -486.27(-1.61%)
 NASDAQ総合  USD 10,867.926    -198.879 (-1.79%)
 S&P500      USD  3,693.23  -64.76(-1.72%) 
 
9月23日の米株式市場のダウ工業株30種平均は、4日連続で前日の終値を下回った。FRBの大幅な利上げから景気後退への懸念が強まりリスク回避のリスクオフの姿勢が強まった。長期金利が上昇した影響も強く、ハイテク株や景気敏感株が売られた。終日で3万ドルを下回る取引となり、6月の年初来安値を更新し3ヵ月ぶりに3万ドルを割り終えている。
 
債券
 米国債10年 3.687%(-0.021)
 
商品
 NY原油(WTI) 1バレル=USD 78.74 -4.75(-5.69%)(11月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,655.6  -25.50(-1.52%)(12月渡し)
 
 

【日本】米ドル・円 介入警戒強まり値動き出ず

為替(17時)
9月23日の東京外国為替市場では、秋分の日の祝日のため市場参加者が限定的だった。一方で、日本政府の円買い介入への警戒から値動きが出にくい状況となっている。
 
米ドル・円では、朝方は地政学リスクが意識されリスク回避の円買いが強まり141.77円まで値を下げた。その後は買戻しが入り小幅に値を上げたが介入への警戒感が強まり、ほぼ横ばいで推移し17時時点で142.27円となった。
 
ユーロ・円は、地政学リスクへの警戒感から円買いが優勢だった。徐々に値を下げた上、9月独製造業PMI速報値(結果:48.3、予想:48.3、前回:49.1)と3カ月連続で好不況の節目の50を下回った。さらに、9月ユーロ圏製造業PMI速報値(結果:48.5、予想:48.8、前回:49.6)が市場予想を下回り景気後退の可能性が強まった。この結果、この日の安値138.91円まで値を下げた。その後は持ち直し、17時時点では139.07円だった。
 
ユーロ・米ドルは、日中はあまり値動きが出なかったが、独とユーロ圏の製造業PMIの冴えない結果から徐々に値を落とし、2002年10月以来の安値0.9767ドルを付けた。17時時点では0.9775ドルで取引されている。
 
*秋分の日の祝日で債券等は休場
 
 

【マーケットアナリティクス】USDCADカナダ小売売上高を受け2年ぶりの高値に急伸(9月23日)

米ドル・カナダドル(USDCAD)は、米ドルの幅広い強さに支えられ上昇トレンドを継続し、2020年7月以来の上値抵抗線(レジスタンス)1.35を飛び越えた。
 
予想を下回るカナダ小売売上高
金曜日にカナダ統計局より発表された数値によると、小売売上高は6月に1%増加した後、7月には前月比で2.5%減少した。この数値は2%減という市場予想よりも弱いものだった。
 
報告書には“ガソリンスタンドや自動車・部品の販売店を含まないコア小売売上高は0.9%減少し、7月の小売売上高は数量ベースで2.0%減”と記載されている。
 
ガソリン需要の悪化は世界的な供給制約の懸念にもかかわらず、原油価格を圧迫し商品連動型のカナダドルを弱め続けている。WTIベンチマークは本日4%下落し、重要な80米ドルのレベルに向かって下落した。
 
 さらに、USDCAD は積極的な FRB 予測に支えられた米ドルの強いポジティブなムードから利益を得ている。
 
市場は買われすぎか?
短期チャートでは、1.3540付近のレジスタンスと1.35の上昇トレンドラインを下値支持線(サポート)ゾーンとする優れたトライアングルパターンが形成されているため、どちらかといえば優柔不断な印象がある。
 
同ペアが1.3540を上に抜けした場合、1.36レベルに向けて再度上昇する可能性がある。一方、1.35を上に抜けることができない場合、同ペアは1.34をターゲットに下降する可能性もある。
 
 
米ドル・カナダドル、デイリーチャート 9月23日(CET・中央ヨーロッパ時間)
 
引用元: “USDCAD Jumps to 2-Yr Highs after Canadian Data” (2022年9月23日, AXIORY Global Market News)      
 
追記:9月26日、日本時間6:01の米ドル・カナダドルは1.3588-1.3590カナダドルで取引されている

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アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


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