堅調な米雇用統計受け、堅調に推移

2022/10/10  6:38  JST投稿

【今週の見通し】(10月10日-10月16日)
先週は豪中銀が0.5%の利上げ予想から0.25%の利上げに抑制したことで、欧米中銀の金融引き締め姿勢の緩和への懸念が強まった。しかし、10月7日の堅調な9月雇用統計結果から、大幅な利上げ観測が強まっている。
 
今週は、10月12日の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録公表(9月開催分)やG20財務相・中央銀行総裁会議、13日の9月米消費者物価コア指数(CPI)結果の影響が大きい。特にCPIで市場予想を下回った場合、米連邦準備制度(FRB)の引き締め姿勢が緩和され長期金利が抑制されるだろう。また、14日に期限を迎える英国の緊急国債買い入れ措置にも注目が集まる。英国が緊急措置の延期を決めた場合、世界的な金利低下につながり米ドル売りに至るだろう。
 
また、11日からの海外からの入国制限の緩和による影響も注視したい。円安基調から、日本を訪れたい外国人は多数おり、日本経済への寄与は大きく期待が高まる。
 
合わせて、10日は日米とも祝日による休場のため、大きな動きは出にくい状況だ。
 
主なスケジュール
10月10日(月):スポーツの日(日本)による休場、コロンブスデー(新大陸発見の日)により米債券市場が休場、国際金融協会(IIF)年次会合(14日まで)、国際通貨基金(IMF)・世界銀行年次総会(16日まで)、シカゴ連銀総裁とブレイナードFRB副議長が講演
10月11日(火):景気ウォッチャー調査(9月)、入国者数の上限撤廃など新型コロナの水際対策緩和、IMF世界経済見通し(WEO)公表、ベイリー英中銀総裁講演、クリーブランド連銀総裁講演
10月12日(水):コア機械受注(8月)、工作機械受注(9月)、米生産者物価コア指数(9月)、FOMC議事要旨(9月20-21日会合分)、G20財務相・中央銀行総裁会議(13日まで)、ラガルドECB総裁講演、ボウマンFRB理事講演、ミネアポリス連銀総裁講演
10月13日(木):国内企業物価指数(9月)、米消費者物価コア指数(9月)
10月14日(金):中国消費者物価指数(9月)、米小売売上高(9月)、米ミシガン大学消費者信頼感指数(10月、速報値)
10月15日(土):ベイリー英中銀総裁講演、セントルイス連銀総裁講演
10月16日(日):中国共産党大会開幕
 
予想レートは米ドル・円が142円前半から146円後半。ユーロ・米ドルが0.95ドル後半から1.00ドル前半。

【米国】

為替(10月10日6時00分)
 米ドル円(USDJPY)    145.36-145.40 (円)
 ユーロ円(EURJPY)    141.59-141.66 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 0.9732-0.9737 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY)    161.18-161.38 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.1158-1.1164 (米ドル)
 
10月7日のニューヨーク外国為替市場では、9月米雇用統計の堅調な結果を受け米連邦準備理事会(FRB)での大幅な利上げが続く観測が強まった。
 
9月非農業部門雇用者数(前月比、結果:26.3万人、予想:26.4万人、前回:31.5万人)は鈍化したものの、失業率(結果:3.5%、予想:3.7%、前回:3. 7%)が予想外に低下し、約50年ぶりの低水準となり堅調な譲許が示された。この結果を受け、11月1、2日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で通常の3倍にあたる0.75%の利上げが実施される見込みが強まっている。
 
なお、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループが政策金利(FF金利)先物の動向に基づき算出する「フェドウォッチ」は、11月のFOMCで0.75%の利上げ確率が前日の約75%から約82%まで上昇した。さらに12月13、14日のFOMCでも0.75%の利上げを決める確率が前日の約7%から約24%に上がっている。
 
また、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、政策金利はいずれ4.5%付近に上昇する必要があると指摘。利上げのタイミングと、必要性においてはデータに左右され、現時点での重点はインフレ率を2%に戻すことだと述べた。
 
金融政策の影響を受けやすい2年債と10年債(長期金利)の利回りは、67日連続で逆転(逆イールド)しており、終値ベースでは2年債が4.312%、10年債が3.888%だった。
 
米ドル・円(USDJPY)では、雇用統計の堅調な結果から米長期金利が上昇し米ドル買いが強まり、この日の高値145.44円を付けた。ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁の発言が米ドル買いを後押ししたことも大きかったが、日本政府の円買い介入への警戒から9月22日に付けた年初来高値145.90円は超えられなかった。その後は、小幅に値を下げ145.25円で終えている。
 
ユーロ・米ドル(EURUSD)は、堅調な米雇用統計結果を受け、米長期金利が上昇し米ドル買いが強まった。0.9726ドルの安値を付け、その後は、ユーロが買い戻され0.9791ドルまで値を戻すも再び米ドル買いが強まり終値は0.9744ドルだった。
 
ユーロ・円(EURJPY)は、米ドル・円につられ、朝方にこの日の安値141.20円を付けた。その後は、ユーロ・米ドルにつられユーロ買いが強まり142.13円まで値を戻したが、リスク回避の円買いに転じ141.59円で終えている。
 
株式
 NYダウ平均  USD 29,296.79 -630.15(-2.10%)
 NASDAQ総合  USD 10,652.405   -420.906 (-3.80%)
 S&P500      USD  3,639.66  -104.86(-2.80%) 
 
10月7日の米株式市場のダウ工業株30種平均は3日連続で前日の終値を下回り、連日で3万ドルを切った。朝方に発表された雇用統計で、堅調な内容が示されるとFRBの金融引き締め継続が嫌気され、幅広い銘柄が売られた。長期金利の上昇によるハイテク株の売りも影響が大きく、3指数揃って値を下げている。
 
債券
 米国債10年 3.888%(+0.064)
 
商品
 NY原油(WTI) 1バレル=USD 92.64 +4.19(+4.74%)(11月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,709.30 -11.50(-0.67%)(12月渡し)

【日本】米雇用統計や円買い介入への警戒強く値動きが限定

為替(17時)
10月7日の東京外国為替市場では、この後米雇用統計の発表を控えている上、日本政府の円買い介入への警戒感もあり値動きは限られた。
 
米ドル・円では、小幅な動きに留まった。10時前に米ドル売りが強まり144.85円まで値を下げたが、145円を挟んでの取引が続いた。17時時点で144.91円となった。
 
ユーロ・米ドルは、ユーロ買いが優勢だったが、欧州勢参加後にリスク回避のユーロ売りが強まり、この日の安値0.9766ドルまで値を下げた。その後は、徐々にユーロ買いに回帰し、17時時点では0.9798ドルとなった。
 
ユーロ・円は、ユーロ・米ドルにつられユーロ買いが優勢だったが、欧州勢参加後にリスク回避の円買いが強まった。この日の安値141.69円をつけたが、値を戻し17時時点では142.00円だった。
 
債券
 国債先物・22年12月限  148.62 (-0.23)
 10年長期金利  0.245%(変化なし)

【マーケットアナリティクス】米ドル・円 堅調な雇用統計を受け145円突破を試みる(10月7日)

米ドル・円は、数日前に日銀が介入した145と146の間の重要な上値抵抗線(レジスタンス)を攻めているところだ。本稿執筆時点では本日発表された米雇用統計に後押しされ、米ドルはやや高値で取引された。
 
米国の雇用市場は引き続き堅調
非農業部門雇用者数は26万2000人で、8月の31万5000人を下回り、市場予想の25万5000人をわずかに上回った。注目すべきは、9月の数値はひどいとまでは言えないものの、2021年4月以来の低水準となったことだ。
 
7月の非農業部門雇用者総数増減の修正値は+52.6万人から+53.7万人へと1.1万人増加し、8月の増減値は+31.5万人にとどまった。
 
平均時給は前年比5.0%増、8月比0.3%増で、僅差で予想を上回っている。前月比では8月の0.3%増と変わらず、前年比は1ヶ月前の前年同月比5.2%増から低下した。
 
失業率は意外にも3.7%から3.5%に低下し、予測されていた前月の横ばいを大きく下回る結果となった。これは、失業者数が25万人減少し、600万人強から5753万人に減少したためである。
 
慎重な取引
米ドルは多くの通貨に対して強く、米国利回りの上昇にも支えられており、今日は145のレジスタンスが破られる可能性がありそうだ。
 
これを突破した場合146まで一気に上昇し、日銀が再び介入しなければ150に向けてさらに数日間上昇が続く可能性がある。
 
もしくは日銀が介入意欲を示した場合、投資家心理が悪化し、強気(ブル)派が勇気を失い利益確定売りが出て、144円まで引き戻される可能性がある。

USDJPY Trying to Break 145 After Solid Jobs Data

米ドル・円、デイリーチャート 10月7日(CET・中央ヨーロッパ時間)
 
引用元: “USDJPY Trying to Break 145 After Solid Jobs Data” (2022年10月7日, AXIORY Global Market News)
           
追記:10月10日、日本時間6:00の米ドル・円は145.36-145.40円で取引されている

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アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


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