コリンズ総裁のタカ派的な発言から米ドル買い強まる

2022/11/21  6:39  JST投稿
 

【今週の見通し】(11月21日-11月27日)
先週は、11日に発表された10月米消費者物価指数(CPI)の鈍化から弱気な姿勢が強まっていた中、10月米生産者物価指数(PPI)が前年比での伸びが市場の予想以上に鈍化し、さらにインフレのピークアウトが意識された。米連邦準備理事会(FRB)が利上げペースを緩和するとの見方が強まったが、17日のセントルイス連銀のブラード総裁に続き、18日にボストン連銀のコリンズ総裁の利上げを推奨するタカ派的な発言から投資家心理が上向いている。

今週、11月23日に公表される連邦公開市場委員会(FOMC)議事録(11月1、2日開催分)でFRBが現在の引き締めサイクルにおける政策金利の最終到達水準(ターミナルレート)に関する議論で利上げ継続の姿勢が垣間見られた場合には米ドル買いが強まるだろう。さらに、同日に公表される10月米耐久財受注で厳しい結果となり、金融高官によるハト派的な発言が出た場合には特に米ドル売りが強まる可能性もあるため、注意したい。

また、日本、米国とも祝日が予定されており、23日が今週の山場だ。特に米国では24日が感謝祭による祝日のため金融市場が休みとなり、翌日は短縮取引となるため、合わせて留意したい。

主なスケジュール
11月21日(月):首都圏新築分譲マンション(10月)、FIFAサッカーW杯2022(12月18日まで)
11月22日(火):ユーロ圏消費者信頼感指数(11月)、経済協力開発機構(OECD)世界経済見通し、クリーブランド連銀総裁(同連銀主催イベントあいさつ)、セントルイス連銀総裁講演
11月23日(水):勤労感謝の日(休場)、ニュージーランド準備銀行(中央銀行)政策金利発表、独・欧・英・米PMI(11月・速報値)、米耐久財受注(10月)、米新築住宅販売件数(10月)、FOMC議事録(11月1、2日)
11月24日(木):製造業/サービス業PMI(11月)、全国百貨店売上高(10月)、ECB議事録(10月27日開催分)、独IFO企業景況感指数(11月)、トルコ中央銀行政策金利発表、南アフリカ準備銀行(中央銀行)政策金利発表、米・感謝祭(休場)
11月25日(金):東京都区部・消費者物価指数(11月)米・感謝祭(短縮取引)、米ブラックフライデー
11月26日(土):台湾統一地方選
11月27日(日):雨宮日銀副総裁講演(日本金融学会2022年度秋季大会)

予想レートは米ドル・円が138円半ばから142円前半。ユーロ・米ドルが1.02ドル前半から1.05ドル前半。

【米国】

為替(11月21日6時18分)
 米ドル円(USDJPY) 140.33-140.39 (円)
 ユーロ円(EURJPY) 144.87-144.99 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 1.0323-1.0326 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY) 166.74-166.91 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.1880-1.1888 (米ドル)

11月18日のニューヨーク外国為替市場では、前日のセントルイス連銀のブラード総裁に続き、ボストン連銀のコリンズ総裁の利上げを推奨するタカ派的な発言に支えられた。コリンズ総裁は12月米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ幅について、0.75%の利上げの可能性があると述べた。また、「現時点では、全体のインフレ率が低下しているという明白かつ一貫した証拠はまだない。われわれのやるべき仕事はまだある」と指摘している。この発言から米連邦準備理事会(FRB)による積極的な金融引き締めが長期化するとの観測が再認識され、金利が上昇している。

金融政策の影響を受けやすい2年債と10年債(長期金利)の利回りは、94日連続で逆転(逆イールド)しており、終値ベースでは2年債が4.531%、10年債が3.829%だった。

また、中古住宅販売件数(結果:443.0万件、予想:436.0万件、前回:471.0万件)は、住宅ローン金利の上昇が影響し、1999年の統計開始以降で最長の9ヵ月連続での減少となった。さらに、景気先行指数(前月比、結果:-0.8%、予想:-0.4%、前回:-0.4%)が8カ月連続で低下した。高インフレやFRBの金融指揮締めによる金利上昇やそれに伴う住宅市場環境の悪化から、厳しい状況に置かれていることが示されている。

米ドル・円(USDJPY)は、経済指標の悪化から低調だったが、ボストン連銀のコリンズ総裁のタカ派的な発言から、FRBの金融引き締めの長期観測が強まり米ドル買いにつながった。長期金利の上昇もプラスに作用し、この日の高値140.42円まで値を上げた。日本時間の高値140.50円が上値抵抗線として意識されると小幅に値を下げ、終値は140.37円だった。

ユーロ・米ドル(EURUSD)は、弱い米経済指標からユーロ買いが強まっていたが地政学リスクやコリンズ総裁のタカ派的な発言から、この日の安値1.0314ドルまで下落し、1.0325ドルで終えた。

ユーロ・円(EURJPY)は、ユーロ・米ドルの下落につられ、この日の安値144.56円まで値を下げた。その後は持ち直し、終値は144.92円となっている。

株式
 NYダウ平均 USD 33,745.69 +199.37(+0.59%)
 NASDAQ総合  USD 11,146.063   +1.105 (+0.00%)
 S&P500     USD  3,965.34 +18.78(+0.47%)

11月18日の米株式市場のダウ工業株30種平均は3日ぶりに前日の終値を上回った。小売企業の良好な決算から投資家心理が上向き買いが優勢だった。一方で、ボストン連銀のコリンズ総裁のタカ派的な発言から前日の終値をわずかに下回る場面があったが、クリスマスシーズン前に上昇が見込まれる銘柄の物色もあり持ち直し、堅調に値を上げ終えている。

債券
 米国債10年 3.829%(+0.056)

商品
 NY原油(WTI) 1バレル=USD 80.11 -1.29(-1.59%)(12月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,769.00 -8.80(-0.49%)(12月渡し)
 

【日本】米長期金利低下や地政学リスク受け軟調に

為替(17時)
11月18日の東京外国為替市場では、朝方は決済等に向けた買いが優勢となったが、一通り上昇すると利益確定売りに転じている。また、北朝鮮のミサイル発射を受け、地政学リスクも意識されている。

米ドル・円では、ニューヨーク外国為替市場で上昇した流れや実需の米ドル買いを受け、この日の高値140.50円まで値を上げた。しかしながら、利益確定売りに押された上、時間外の米長期金利の低下や地政学リスクが意識されると円が買われ、この日の安値139.64円を付け17時時点では139.82円となった。

ユーロ・米ドルは、米ドル・円の低下につられ小幅なユーロ買いが入りわずかに値を上げるも、長くは続かず売買が交錯し、17時時点では1.0375ドルとなった。

ユーロ・円は、朝方は決済に向けたユーロ買いが強まり、この日の高値145.55円まで値を上げたが、利益確定売りや地政学リスクを受けた円買いが強まり徐々に値を下げ、17時時点では145.08円だった。

債券
 国債先物・22年12月限 148.48 (+0.05)
 10年長期金利 0.250%(変化なし)

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アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


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