アルミニウム(XAL/USD):供給ショック、エネルギー相関、そしてグリーントランジション

アルミニウム(XAL/USD):供給ショック、エネルギー相関、そしてグリーントランジション

目次

アルミニウム:断片化した市場

ロンドン金属取引所(LME)と受渡日の仕組み

HFE裁定取引と輸入採算

アルミニウムの供給と需要

アルミニウムの供給状況

需要を左右する要因

銅代替化の動向

マクロ経済との相関関係とコスト構造

ニュース動向

ロンドン金属取引所(LME)の日次在庫

Caixin(財新)中国製造業購買担当者景気指数(PMI)

国際アルミニウム協会(IAI)の生産量

CoTレポート(建玉明細)

地政学リスク

ロシアに対する制裁

CBAM:国境炭素税

まとめ

 

世界のアルミニウム市場は、単一の要因だけで動くものではありません。多様で複雑な要素が絡み合う、巨大なエコシステムといえます。

この市場には特有の価格変動パターンがあり、他の金融市場はもちろん、産業用金属(ベースメタル)と比べても際立った特徴を持っています。

本記事では、アルミニウム市場の構造的なメカニズムや注目すべきファンダメンタルズ要因、そして具体的な取引アプローチについて解説していきます。

📝 差金決済取引(CFD)による貴金属取引について

貴金属の具体的な取引内容に入る前に、CFDがどのように機能し、先物契約の売買とどう違うのかをしっかりと理解しておく必要があります。

CFD取引の主な特徴

🔷 CFDは、差金決済を行うデリバティブ(金融派生商品)です。 これは、トレーダーが商品を物理的に売買したり、受け取ったりすることがない、ということを意味します。現物の受け渡しは行われず、売買から生じた損益の差額のみを現金で決済する仕組みです。 つまり、トレーダーは主要市場における貴金属の先物価格に連動するように設計された契約の価格変動を予測して取引を行います。このようにCFDを用いることで、先物契約のロールオーバー(乗り換え)や現物の受け渡しといった手間を心配することなく、価格の変動のみを取引の対象とすることが可能になります。

🔷 CFDではレバレッジを利用でき、資本をより効率的に活用することが可能になります。 レバレッジを賢く利用することで、一つの資産に全ての資本を固定することなく、複数のポジションを同時に保有することもできます。また、ポジションサイズを大きくすることで、通常であればわずかな利益率にしかならないような日中の価格変動から、相応の利益を得られる可能性も生まれます。レバレッジはあくまでツールです。賢明に利用すれば潜在的なリターンを増幅させることができますが、理解せずに利用すると損失の額もまた大きくなる可能性があります。

🔷 現物投資とは異なり、CFDのポジションを日をまたいで保有する場合、通常はオーバーナイト・ファンディング・チャージ(スワップ手数料)が発生します。 このコストは、ポジションを長期間保有するほど利益を圧迫する要因となります。そのため、これから解説する取引戦略は、長期的な投資というよりは、短期から中期のトレードに適していると言えるでしょう。

アルミニウム:断片化した市場

ロンドン金属取引所(LME)と受渡日の仕組み

アルミニウム市場の中核にあるLMEは、世界の契約の約90%で使用される基準価格を決定しています。しかし、LMEはシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)やユーレックス(EUREX)といった一般的な先物取引所とは根本的に異なります。多くのコモディティ取引所が標準化された月次の決済日を採用しているのに対し、LMEは現物業界のニーズを反映した「日次」の受渡日(プロンプト・デート)構造を採用しています。この仕組みにより、3ヶ月先までは毎日、6ヶ月先までは毎週、最長10年先までは毎月の受渡日を設定できます。

多様な受渡日が設定されていますが、毎月第3水曜日が事実上の標準的な限月として機能し、建玉の大部分がここに集中します。実需のヘッジャー(現物を扱う業者)は自社の生産フローに合わせて日次の受渡日を利用する一方で、プロップファームやヘッジファンド、個人投資家などの投機的な市場参加者は、第3水曜日の限月に取引を集中させる傾向があります。これは流動性が最大化され、スリッページ(注文価格と約定価格のズレ)を最小限に抑えられるためです。

こうした市場構造は、市場に流動性を生み出します。「3ヶ月物」のローリング契約は、ニュースで目にする指標価格(ヘッドライン価格)のベンチマークである一方で、キャリートレードや長期のポジションを目的とした取引では、第3水曜日が満期となる契約に建玉(未決済のポジション)が集中する傾向があります。

毎日更新される3ヶ月物のローリング日と、固定された月次の受渡日との間にはズレが生じるため、調整取引は必然的に複雑になります。ポジションを保有し続けたいトレーダーは、常にポジションをロールオーバーする必要があり、その際には現物価格と3ヶ月先物価格の価格差(キャッシュ・スリーマンス・スプレッド)を考慮しなければなりません。このスプレッドこそが、短期的な現物需給の逼迫度を判断する主要な指標となります。

先物価格が現物価格より高い「順ザヤ(コンタンゴ)」の状態は、市場では通常とみなされ、直近の供給が十分であることを示します。逆に、スポット価格が先物価格を上回る「逆ザヤ(バックワーデーション)」は、直近の現物供給が逼迫しているサインとなります。

3ヶ月物契約と日次構造との間に生じる流動性のギャップを埋めるため、LMEは「インプライド・プライシング(流動性のある別の期限の価格から算出された合成価格)」という機能を導入しています。この仕組みは、注文を連結させることで3ヶ月物契約の流動性を活用し、第3水曜日の受渡日に合成的な流動性を生み出します。

一方、CFDでは、この複雑な概念が簡素化されており、期限切れのない単一の契約として扱われるため、はるかに使いやすい設計になっています。とはいえ、上記のプロセスを理解しておくことで裁定取引(アービトラージ)の機会を見つけられる場合もあり、依然として注目する価値があります。

HFE裁定取引と輸入採算

ロンドン金属取引所(LME)が世界のアルミニウム価格の基準を担う一方で、世界最大の生産国かつ消費国である中国の国内価格を決めるのは上海先物取引所(SHFE)です。取引単位、付加価値税(VAT)、為替レートなどを調整した後も、LMEとSHFEの間には価格差が生じるため、トレーダーはこの価格差を注視することがあります。

調整後のSHFE価格がLME価格を大きく上回ると、裁定取引の機会が生じます。中国の輸入業者は、LMEでアルミニウムを買い付けて中国へ輸入することで利益を得られるため、強いインセンティブが働きます。ここで重要なのは、LMEは世界各地に倉庫を持っており、LMEを通じて取引されるアルミニウムは必ずしも英国に保管されているわけではないという点です。

こうした裁定取引は、先回りして市場を読むことのできるトレーダーにとって有益な取引機会となり得ます。例えば、特定の価格差(プレミアム)が繰り返され、中国の輸入が誘発されるような状況である場合、LME価格をベンチマークとするアルミニウムCFDでロング(買い)ポジションを取ることを戦略の一つとして検討できることもあります。しかし、このアプローチには当然リスクも伴います。

LMEとSHFEの価格差が予想通り縮小しても、ドル建て価格自体が下落すれば、取引の根拠が正しくても損失を被る可能性があります。

アルミニウムの供給と需要

アルミニウムの供給状況

中国はアルミニウム生産において世界最大の生産国です。しかし、中国政府は過剰生産の抑制と自給率の維持を目的に生産制限を設けており、現在は年間4,500万トンの上限があります。

アルミニウム市場には、ほぼ自給自足で生産の大部分を国内消費に回す中国市場と、もう一方には、中国以外の生産能力に依存した上で成り立つグローバル市場という明確な二重構造が生まれています。2024年時点で中国の生産量は世界全体の約66%を占めており、この二重構造は世界全体の供給を大きく左右する重要な要因となっています。

この供給不足を補う重要な解決策として台頭しているのが、二次合金やリサイクルアルミニウムです。経済的なメリットが大きいことから、中国以外の市場では、リサイクル由来のアルミニウムが主要な供給源として広がりつつあります。

アルミニウムスクラップの再溶解は、鉱石からの精錬と比べてわずかなエネルギーしか必要としません。そのため、エネルギー価格が上昇するほど、リサイクルの経済的優位性は高まります。さらに、アルミニウムは理論上、品質を劣化させずに半永久的にリサイクル可能な金属であるため、新規生産に代わる有効な供給源として機能しています。

需要を左右する要因

アルミニウムは幅広い用途を持つ金属で、耐食性に優れ、熱や電気の良導体という特性がありますが、銅と比較すると熱伝導率は約2分の1、電気伝導率は約3分の2程度です。

今後のアルミニウム需要を左右する最大の要因が、世界的な「グリーン・トランジション(脱炭素社会への移行)」です。電気自動車(EV)は、従来のガソリン車と比べて1台あたり60〜80キロ多くのアルミニウムを必要とし、EVセクターだけで、2030年までの需要増加分の63%を牽引すると予測されています。

また、太陽光パネルや風力タービンなどのグリーンインフラにもアルミニウムは欠かせません。
さらに、取引量が多く不況時でも需要が安定する、包装・容器分野でもアルミニウムは広く使われています。加えて、環境意識の高まりにより「脱プラスチック」が進む中、アルミニウムはプラスチック包装に代わる現実的な選択肢として、安定した需要を維持しています。

銅代替化の動向

銅とアルミニウムには高い相関関係があります。両者は似た特性を持ち、導電性に優れグリーンエネルギー分野で広く使われています。性能面では銅が優れており、市場価格も常にアルミニウムより高く取引されている一方で、価格差がある一定の水準を超えると、性能は劣るものの、価格の安さからアルミニウムが経済的に合理的な代替品として選ばれるようになります。

こうした連動性は、トレーダーにとって直接取引・相対価値取引のいずれでも収益機会につながることがあります。アルミニウムが銅に比べて極端に割安になると、生産者はコスト削減のために銅からアルミニウムへ切り替えるようになり、その結果アルミニウムへの需要が大きく高まります。そして、両者の価格差が十分に縮まり、この代替のメリットが薄れる、あるいは完全に消える程度まで価格が収れんしていきます。

アルミニウム/銅の月足チャート

アルミニウムと銅の価格関係を把握するには、アルミニウム価格を銅価格で割った比率をモニタリングする方法が有効です。ロンドン金属取引所(LME)のアルミニウム契約とニューヨーク商品取引所(COMEX)の銅契約を比較した以下のチャートを見ると、500という水準が明確なサポートラインとして機能していることが分かります。

2025年には価格がこの水準を大きく下回ったものの、過去にはこのエリアが強力なサポートとして機能してきました。つまり、この水準はメーカーが銅からアルミニウムへ材料を切り替え始める可能性が高い価格帯といえます。トレーダーはこの価格相関を利用して、以下のアプローチを検討することができます。

🟣 アルミニウム価格が銅に対して割安になったタイミングで、XALUSD(アルミニウム)を直接ロング(買い)します。

🟣 アルミニウム価格が銅に対して割安になったタイミングで、XALUSD(アルミニウム)をロング(買い)し、同時にXCUUSD(銅)をショート(売り)のポジションをオープンします。

二つ目のアプローチの利点は、デルタニュートラル(市場全体の方向性リスクを排除する)戦略を構築できる店にあります。例えば、アルミニウムの対米ドル価格(XALUSD)自体が下落している局面であっても、アルミニウム対銅の比率が上昇していれば、市場価格全体の下落リスクをヘッジしながら利益を狙うことができます。

ただし、いくつか注意点もあります。まず、二つのポジションを同時に管理する必要があるため、単一の取引に比べて管理や執行が複雑になります。さらに、二つのポジションを保有する分、取引コストが二重に発生する点も考慮が必要です。

マクロ経済との相関関係とコスト構造

コモディティ価格は一般的に限界費用(追加で1単位を生産するために必要なコスト)に回帰する傾向があり、アルミニウムの場合、生産コストの大半をエネルギー価格が占めています。

電力コストは全体の30〜40%にも達するため、アルミニウムはしばしば「電気の缶詰」と呼ばれます。ただし、使用されるエネルギー源は地域によって異なります。

世界最大の生産国である中国では、製錬工程の多くが石炭火力発電に依存しています。そのため、一般炭(サーマルコール)の価格は中国のアルミニウム価格の先行指標として機能します。石炭価格が急騰すると製錬所の利幅が圧迫され、減産を余儀なくされます。その結果、供給が制限されてアルミニウム価格が下支えされます。

一方、アルミニウムCFDを取引するトレーダーにとってより重要なのは、天然ガスとの相関関係です。ヨーロッパの製錬所は天然ガスに大きく依存しています。この関係が顕著に表れたのが2022年のことで、ヨーロッパのエネルギー価格が急騰した際に、アルミニウム価格はわずか4ヶ月で55%上昇しました。天然ガス価格はアルミニウム価格の先行指標になり得ますが、常に明確な関係が続くとは限らない点には注意が必要です。

天然ガス価格を重ね合わせた、週足アルミニウム価格

週足チャートでアルミニウム価格と天然ガス価格を重ねて比較してみると、一般的に言われる「天然ガスはアルミニウム価格の先行指標である」という通説とは異なる姿が見えてきます。一見すると、アルミニウム価格の方が天然ガス価格を先導しているように見えますが、実際には明確にどちらが主導しているかを断言することはできません。

このチャートから導き出せる最も妥当な結論は、両者の相関関係は、その時々の市場環境や需給バランスに大きく依存しているという点です。理論上、エネルギーコストの高いアルミニウムと天然ガスは直接的な相関関係にあるはずですが、実際にはそれぞれの価格には多くの独立した要因が影響しており、単純な相関モデルでは説明しきれない場面が多々あります。しかし、これら複数の要因を統合的に分析し市場の全体像を正しく掴むことで、価格の歪みから取引の機会を発見できる可能性があります。

さらに、エネルギー価格とアルミニウム価格の動的な関係は、アルミニウムと銅の価格比率(Al/Cuレシオ)を見ることで、より明確になります。アルミニウムは銅に比べて生産にはるかに多くのエネルギーを要するため、両者の関係は天然ガス価格の変動と非常に強い相関を示す傾向があります。

天然ガス価格を重ね合わせた、週足のアルミニウム/銅比率

2023年の天然ガス価格下落により、生産者にはアルミニウム生産を最大限稼働させる経済的インセンティブが生まれました。エネルギー価格の低下が生産コストを削減し、利益率(マージン)を拡大させたためです。しかし、生産拡大による供給増加は、その後のアルミニウム価格下落の要因となり、特に銅との比較において、アルミニウム価格の弱さが顕著に表れました。

ニュース動向

アルミニウム市場には、この市場特有でありながら、トレーダーが必ずチェックすべきニュースやレポートが数多く存在します。以下では、それぞれの内容と市場分析における重要性について順に解説していきます。

ロンドン金属取引所(LME)の日次在庫

LMEは毎日、2営業日遅れで「在庫内訳レポート(Stocks breakdown report)」を公表しています。これは指定倉庫における実際の在庫状況を示すものです。このレポートにはLMEで取り扱われているすべての金属が含まれているため、データを確認する際は「プライマリー・アルミニウム(Primary Aluminum)」の項目を参照してください。
 

プライマリー・アルミニウム
国・地域 都市 期首在庫 入庫量 出庫量 期末在庫 有効在庫 キャンセル済み在庫
ベルギー アントワープ 0 0 0 0 0 0
ドイツ ハンブルク 0 0 0 0 0 0
香港 香港 0 0 0 0 0 0
イタリア ジェノヴァ 0 0 0 0 0 0
イタリア リボルノ 0 0 0 0 0 0
イタリア トリエステ 50 0 0 50 0 50
日本 名古屋 0 0 0 0 0 0
日本 横浜 0 0 0 0 0 0
韓国 釜山 0 0 0 0 0 0
韓国 光陽 140.775 0 0 140.775 140.775 0
韓国 仁川 0 0 0 0 0 0
マレーシア ジョホール 1.225 0 0 1.225 1.225 0
マレーシア ポート・クラン 357 0 2 355 300.75 54.25
オランダ アムステルダム 0 0 0 0 0 0
オランダ ムールデイク 0 0 0 0 0 0
オランダ ロッテルダム 3.45 0 0 3.45 2.45 1
オランダ フリッシンゲン 0 0 0 0 0 0
シンガポール シンガポール 275 0 0 275 275 0
スペイン バルセロナ 0 0 0 0 0 0
スペイン ビルバオ 0 0 0 0 0 0
スウェーデン ヘルシングボリ 0 0 0 0 0 0
台湾 高雄 45.3 0 0 45.3 45.3 0
イギリス キングストン・アポン・ハル 0 0 0 0 0 0
イギリス リヴァプール 0 0 0 0 0 0
アメリカ ボルチモア 0 0 0 0 0 0
アメリカ シカゴ 0 0 0 0 0 0
アメリカ デトロイト 0 0 0 0 0 0
アメリカ ロサンゼルス 0 0 0 0 0 0
アメリカ モビール 0 0 0 0 0 0
アメリカ ニューオリンズ 0 0 0 0 0 0
アメリカ オーエンズボロ 0 0 0 0 0 0
アメリカ トリード 0 0 0 0 0 0
               
合計   548.075 0 2 546.075 490.775 55.3
前日比   -2.125     -2    

2025年11月18日付 LMEによるプライマリー・アルミニウム日次レポート(実際のデータは英語で提供されています)

このレポートで最も重要な項目は前日比です。この数字は、在庫が前日からどれだけ増えたか・減ったかを示しています。ただし、この数字だけでは意味を掴みにくいため、長期的な平均値と比較する必要があります。そうすることで、現在の在庫水準が高いのか低いのかを判断でき、その分析結果をトレード戦略に組み込むことができます。

さらに高度な分析手法として、地域別の在庫分布に注目するアプローチがあります。例えば、中国の輸入業者がLME市場でアルミニウムの買い付けを開始するタイミングを判断する際には、中国沿岸部に位置するLME指定倉庫の在庫動向が有力な手がかりとなります。これらの倉庫に在庫が多く集まっている場合、輸送距離が短くなるため、輸入コストは相対的に低下します。

Caixin(財新)中国製造業購買担当者景気指数(PMI)

財新(Caixin)製造業PMIは、中国の工場稼働状況を捉える代表的な先行指標で、産業用金属(ベースメタル)の需給見通しや市場心理を判断するうえで欠かせません。CFD価格はLMEに連動しますが、世界最大のアルミニウム生産国・消費国である中国の景気が「拡大基調にあるのか」、「減速しているのか」を把握するために、PMIのモニタリングは非常に重要です。

PMIは「50」が拡大と縮小の分岐点で、50超なら景気拡大、50未満なら景気後退と判断します。また、注目すべきなのは数字そのものだけではありません。市場予想との差も短期的な価格変動(ボラティリティ)を生む重要な要因です。予想を上振れすればリスクオン、下振れすればリスクオフの反応が起きやすく、発表直後の相場に影響を与えます。尚、このレポートは、毎月1日に公表されます(営業日の関係で前後することがあります)。

国際アルミニウム協会(IAI)の生産量

供給動向を把握する上で欠かせないのが、国際アルミニウム協会(International Aluminium Institute)の生産報告レポートです。IAIは民間機関ですが、世界のアルミニウム生産トレンドを示す決定的な情報源として市場で広く認知されています。このレポートは毎月20日に公表され、月ごとの総生産量を確認することができます。その精度の高さから、市場参加者の間で非常に高い信頼を得ています。

CoTレポート(建玉明細)

LMEは、毎週「CoTレポート(建玉明細)」を公表しています。このレポートでは、先物契約における市場参加者のポジション状況を直接確認できます。本記事では、アルミニウム市場の分析への活用方法を解説しますが、CoTレポートの活用はアルミニウムに限定されません。先物契約が存在するあらゆる資産で利用でき、LMEのほか、CMEグループ(米国)やユーレックス(ドイツ)などの主要取引所も同様のレポートを発行しています。

  ポジション数量の表記 ポジション 数量
(LOTS)
投資企業または
信用機関
投資
ファンド
その他
金融機関
商業事業体 EU指令 2003/87/EC に基づき義務を負う事業者
      ロング ショート ロング ショート ロング ショート ロング ショート ロング ショート
ポジション数   商業活動に直接関連した削減リスク 68961,96 59441,85 314 6 4635 10647,15 93201,49 223677,66 0 0
    その他 509471,48 483970,64 193464,29 61589,47 42524,75 10305,3 128312,32 191799,56 0 0
    合計 578433,44 543412,49 193778,29 61595,47 47159,75 20952,45 221513,81 415477,22 0 0
前回レポートからの変化 (+/-)   商業活動に直接関連した削減リスク 4908,78 4810,43 0 0 232 -219,12 3869,04 5669,5 0 0
    その他 11692,39 -7971,52 -1790,43 -8335,45 1598,46 667,99 -28087,32 -2578,07 0 0
    合計 16601,17 -3161,09 -1790,43 -8335,45 1830,46 448,87 -24218,28 3091,43 0 0
総建玉に占める割合   商業活動に直接関連した削減リスク 6,63% 5,71% 0,03% 0,00% 0,45% 1,02% 8,95% 21,48% 0,00% 0,00%
  その他   48,95% 46,47% 18,59% 5,91% 4,09% 0,99% 12,33% 18,42% 0,00% 0,00%
  合計   55,58% 52,18% 18,62% 5,91% 4,54% 2,01% 21,28% 39,90% 0,00% 0,00%
各カテゴリーのポジション保有者数     統合集計   統合集計   統合集計   統合集計   統合集計  
  合計   40   315   19   51   .  

アルミニウムのCoTレポート(実際のデータは英語で提供されています)

上記の表は、アルミニウムのCoTレポートの構成例です。このレポートで最も注目すべきポイントは 「前回からどれだけ変動したか」 です。価格変動に対して、市場参加者がどのようにポジションを積み増し・手仕舞いしているかを、この変動幅から読み取ることができます。また、CoTレポートでは、市場参加者が以下の4つのカテゴリーに分類されます。

🟣 投資企業または信用機関
銀行やブローカーなど、主に顧客の取引を仲介・促進する企業です。彼らは、自らの相場観でディレクショナルなポジションを取るのではなく、マーケットメーカーとして流動性を提供したり、顧客に代わって投資銀行業務を行います。

🟣 投資ファンド
ヘッジファンドやミューチュアルファンドなどの機関投資家です。価格変動から利益を得ることを目的とし、「投機筋」として市場で投機的なポジションを構築します。

🟣 その他金融機関
保険会社や年金基金など、上記には当てはまらない金融機関です。収益を目的としますが、短期的な取引より長期的な投資スタイルをとる傾向があります。

🟣 商業事業体
いわゆる実需筋であり、アルミニウムを生産している企業、あるいはアルミニウムを使って製品を加工・製造している企業を指します。彼らのポジションは、相場の上げ下げで利益を狙うのではなく、価格変動リスクを抑えることが目的です。

これらのカテゴリーを理解することで、各参加者の目的を読み解き、ポジションの変化が価格推移とどう連動するかを理解できます。もちろん、CoTレポートに“唯一の正解”があるわけではありません。しかし、このレポートは市場分析の重要な材料であり、トレードアイデアに明確な根拠を与えてくれます。例えば、ある特定のカテゴリーのポジション変化が価格の先行指標として機能しやすいと分かった場合、その動きをトレード戦略の判断材料として活用できるようになります。

地政学リスク

ここまで解説してきた主要なファンダメンタルズ要因に加えて、さらに考慮すべき要素がいくつか存在します。アルミニウム市場での取引を行う上で、これらすべてを完璧に把握する必要はありません。しかし、これらのポイントも深く理解しておくことで、競争の激しい市場において一歩先を行く判断力を身につけることができます。

ロシアに対する制裁

ロシアは世界第3位のアルミニウム生産国ですが、EUはロシア産アルミニウムの輸入を禁止し、米国は200%の関税を課しています。この措置により、ロシア産アルミニウムは他国製品との価格競争力を失っています。

この状況は、欧州と米国のサプライチェーン分断を加速させています。中国が既に輸出を制限している中、ロシア産アルミニウムも西側市場から締め出されているため、欧米で利用可能な供給量はさらに圧迫されています。

CFD取引の価格基準となるLMEアルミニウム先物では、供給不足懸念が急激な価格上昇を引き起こす可能性があります。一方、地政学的リスクにより、上海市場の価格はLMEの価格より大幅に安く推移する場合があります。こうした地域間の価格差と供給不安は、アルミニウム相場に突発的な上昇ボラティリティをもたらすリスク要因となります。

CBAM:国境炭素税

欧州連合(EU)は、アルミニウム生産者に炭素排出量の削減を促すとともに、輸入品と欧州域内生産品との競争条件を公平にするための政策を導入しています。中国やインドでは、欧州に比べて環境規制がはるかに緩いため、これらの国で生産されたアルミニウムはコスト面で有利になります。

この不均衡を是正する目的とした政策の中核となるのが「炭素国境調整メカニズム(CBAM)」で、炭素排出量の多い輸入品(主に中国やインド製品)に対する関税として機能します。

この制度は2026年までに全面導入される予定で、EU域内におけるアルミニウムの炭素排出コストはトン当たり20〜50ドル上昇すると試算されています。これは、アルミニウム価格が2,500ポンドの場合、価格の約0.6〜1.5%のコスト増に相当します。この政策の狙いは、ノルウェーのノルスク・ハイドロのように再生可能エネルギーを活用した低炭素アルミニウム生産者の競争力を強化することにあります。

EUは低炭素生産への移行を成功させるため十分な期間を設けており、2026年から2033年までは炭素課税の水準は一定に保たれる見通しですが、2034年以降は段階的に引き上げられる計画です。

さらに、この政策により、通常のアルミニウムと低炭素アルミニウムの価格差(プレミアム)が拡大する可能性が高くなります。長期的には、厳しい環境基準が適用されるLMEの価格が、上海市場と比較して相対的に押し上げられると考えられ、市場構造そのものに変化が生じる見通しです。

まとめ

今後数年間でアルミニウム取引において成果を上げるには、「単一の価格」で市場を捉える従来の考え方から脱却し、ロンドン市場と上海市場の価格形成を明確に区別して分析する視点が重要です。

専門知識を持つトレーダーにとって、二つの市場間の裁定取引の機会に着目したり、テクニカル分析と各国の政策動向を組み合わせることで、CFD価格の基準となるロンドン価格をより高精度で予測できる可能性があります。また、価格の先行指標としてのリサイクルアルミニウムの役割やエネルギー価格の影響を理解することも不可欠です。

さらに、多くの契約が満期を迎え、特定の価格パターンが現れることもある「毎月第3水曜日」前後の価格動向にも注目が必要です。ポジション調整を迫られた参加者が、不利な価格でも取引せざるを得ない状況が生じることがあり、一部のトレーダーはこうした需給変化を予測して動く傾向があります。

AXIORYを通じて世界の産業用金属(ベースメタル)市場にアクセスし、アルミニウム市場を変革するトレンドを取引してみてはいかがでしょうか。

 

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