長期金利上昇から米ドル買いに転じる

 

2022/01/10 6:40 JST投稿
 

【今週の見通し】(1月10日-1月14日)

先週は米長期金利が徐々に上昇し、1月5日に連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録が公開されると早期の利上げ観測が強まり、さらに長期金利の上昇が続いている。1月7日には長期金利がコロナウイルス感染拡大前の水準に上昇しており、このまま金利上昇が続くと株式は売られ、リスク回避の円買いが強まるリスクもはらんでいる。一方で、1月12日に発表される米・12月米消費者物価指数(CPI)が予想以上に上昇した場合は、3月に利上げが実施される観測がさらに強まり米ドルは堅調に推移する可能性が強い。

また、ウクライナ問題については、12日にロシアと北大西洋条約機構(NATO)、13日に米露や欧州諸国が加盟する全欧安保協力機構(OSCE)が協議を予定しており注目が高まる。

さらに、11日には米上院銀行委員会でパウエル連邦準備制度(FRB)議長の再任指名に関する公聴会が開催される。パウエル議長に関しては、連銀高官による資産取引問題で高官2名が辞任した上、2020年秋にトランプ米政権が追加経済対策の協議を中止する前に自身がインデックス投信を売却している。さらに、トランプ政権下で金融規制を緩和し過ぎたなどの批判もあり、指名公聴会が紛糾する可能性もあり注視したい。

予想レートは米ドル・円が114円後半から117円前半。ユーロ・米ドルが1.12ドル後半から1.14ドル前半。
 

【米国】

  • 為替(1月10日6時00分)

米ドル円(USDJPY) 115.53-115.54 (円)
ユーロ円(EURJPY) 131.19-131.34 (円)
ユーロ米ドル(EURUSD) 1.1360-1.1361 (米ドル)
ポンド円(GBPJPY) 156.90-157.10 (円)
ポンド米ドル(GBPUSD) 1.3585-1.3593 (米ドル)

1月7日のニューヨーク外国為替市場は、朝方に発表された米雇用統計で非農業部門雇用者数(前月比、結果:19.9万人、予想:40.0万人、前回:21.0万人)が、予想の半数以下となった。一方で失業率(結果:3.9%、予想:4.1%、前回:4.2%)が2020年2月以来で初めて4%を割り、平均時給(前月比、結果:0.6%、予想:0.4%、前回:0.3%)、前年同月比でも4.7%と予想を上回り好調な労働市場を裏付け、米連邦準備理事会(FRB)が早ければ3月に利上げを実施する可能性がさらに強まった。この結果を受け、国債売りが強まり長期金利が、2020年1月以来の1.801%と、コロナウイルスの感染拡大前の水準に上昇した。

米ドル・円(USDJPY)は、115円後半から半ばに徐々に値を下げた。朝方に米雇用統計が発表され、失業率や平均時給の良好な結果から115.91円まで米ドルが買われたが、非農業部門雇用者数が予想の半数以下となったことが意識され米ドルが売られると、この日の安値115.53円まで安くなった。その後、長期金利が大幅に上昇し、リスク回避の姿勢の強まりから円買いが優勢となり徐々に値を下げ115.56円で終えた。

ユーロ・米ドル(EURUSD)は、1.12ドル後半から1.13ドル半ばでの取引となった。雇用統計発表直後は米ドル買いが強まり、1.1298ドルまで安くなったが、一転して米ドル売りが優勢となると、この日の高値1.1365ドルまで買われた。その後は小幅に値を下げ、終値は1.1360ドルとなった。

ユーロ・円(EURJPY)は130円後半から131円前半での取引となった。ユーロ・米ドルの動きにつられ、朝方にこの日の安値130.82円を付けたが、徐々に値を上げ、この日の高値131.35円までユーロが買われた。その後は小幅に値を下げ、終値は131.29円だった。

ポンド・米ドル(GBPUSD)は、1.35台で取引された。英中銀が今年も利上げを続けるとの期待から、最近ポンド買いが強まっている。この日は、米雇用統計から米ドル売りが強まった影響を受け堅調に値を上げ、1.3588ドルで終えている。
 

  • 株式

NYダウ平均 USD 36,231.66 -4.81 (-0.01%)
NASDAQ総合  USD 14,935.902    -144.963 (-0.96%)
S&P500     USD 4,677.03 -19.02(-0.40%)

1月7日の米株式市場のダウ工業株30種平均は、3日連続で前日の終値を下回り、小幅に値を下げた。雇用統計で非農業部門雇用者数が予想の半数以下に下回り売りが優勢となったが、好調な雇用環境から景気回復の兆しから景気敏感株に買いが入り急激に値を上げ150ドル近くまで前日の終値を上回った。その後も堅調に推移したが、利益を確定したい投資家の売りが入りわずかに前日の終値を下回った。

長期金利が大幅に上昇した影響から株価収益率(※)が高いハイテク株が売られ、ナスダック総合株価指数は4日続落し、前日から1%ほど下落した。CNBCによると、ゴールドマン・サックスが集計するヘッジファンドの取引状況で、2021年12月30日~2022年1月4日のハイテク株の売却額は同期間としてこの10年で最大規模となっている。

(※)株価収益率(PER)とは、企業の成長性を分析する指標の一つ。株価が1株ごとの当期純利益の何倍まで買われているかを表しており、値が大きいほど割安となる。今のような長期金利の指標とされる10年債の金利が上昇している時は、PERの値より金利の方が大きくなり割安感が減るため、ハイテク株を中心としたPERの高い株の魅力が減少し売られやすい。
 

  • 債券

米国債10年 1.771(+2.19%)
 

  • 商品

NY原油(WTI) 1バレル=USD 78.90 -0.56(-0.70%)(2月渡し)
NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,797.40 +8.20(+0.46%)(2月渡し)
 

【日本】雇用統計発表控え様子見の姿勢が強まる

  • 為替(17時)

1月7日の東京外国為替市場は、朝方は取引が活況だったが午後になると株価が低下し、3連休や、この後の雇用統計の発表を控え様子見の姿勢が強まった。

米ドル・円は、115円後半中心の取引。朝方は国内輸出企業の決済向けに米ドルが買われ、この日の高値116.05まで値を上げたが、徐々に値を下げその後は様子見の姿勢が強まり、17時時点では115.89円だった。

ユーロ・米ドルは1.12ドル後半から1.13ドル前半の取引となった。値動きは少ないものの、欧州勢が参加すると徐々に値を上げ17時時点では1.1305ドルとなった。

ユーロ・円は130円後半から131円前半に徐々に値を上げた。欧州勢参加後、ユーロ・米ドルの上昇につられ、この日の高値131.05に上昇し17時は131.02円。
 

  • 日本株式

日経平均株価 28,478.56円 -9.31(-0.03%)
安値28,293.70円  -  高値 28,813.09円
東証出来高 1,289,05万株
東証売買代金 3兆0128.23億円
 
1月7日の日経平均株価は連日で前日の終値を下回り、小幅に値を下げた。前日に大幅に値を下げた反動から買いが優勢となり9時20分に前日の終値より300円超値を上げたが、国内でのコロナウイルス感染拡大の懸念から買いは続かず値を下げた。業績が懸念される陸運やサービス、小売などが売られ11時前に前日の終値を下回り、その後マイナス圏での取引が続いたが、終了間際にマイナス幅を縮め終えた。1月10日は成人の日の祝日により休場。
 

  • 短期金融市場

無担保コール翌日物金利 -0.008%
 

  • 債券

国債先物・22年3月限 150.97 (-0.15)
10年長期金利 0.130%(+0.015)
 

【マーケットアナリティクス】ポンド・米ドルは弱気トレンド解除の方向へ(1月7日 12:35 CET)

ポンドは過去6ヶ月間、弱気(ベア)に留まっているが、そこから上方へ抜け出そうとしている兆しが出ており、中期的な弱気トレンドが解除される可能性が高くなっている。

米国の利回りが急上昇し、FRBがタカ派的な発言をしているにもかかわらず、米ドルはポンドに対して上昇することができず、弱気トレンドが解除されれば再び上昇に転じる可能性がある。

英国では12月ハリファックス住宅価格指数(前年比、結果:9.8、前回:8.2%)が、強い需要ながら少ない供給量を背景に2007年7月以来最も速いペースで年間上昇したが、2022年には減速すると予想されている。前月比では前月と同じ1.1%で、不動産平均価格は現在で276,091ポンドとなり、過去最高を更新している。

この後、米雇用統計の発表を控え、12月の非農業部門雇用者数の変化は40万人に倍増すると予想されており、失業率は4.1%と低下する見込みだ。そのため、データ後にボラティリティが上昇し価格変動が大きくなるだろう。

GBPUSD ペアが弱気を上抜けした場合、次の上値抵抗線(レジスタンス)は 1.36ドル となり、次のターゲットは1.3735ドルにある200日移動平均線(チャートの緑色の線※)となる。

また、下落の場合は1.34ドル付近の50日移動平均線(チャートの紫色の線※)が目安となるだろう。

(※)移動平均線:一定期間(この場合は200日間と50日間)の終値の平均値の推移を折れ線グラフで示したもの。相場が上昇傾向にあるのか、下落傾向にあるのかといったトレンドを把握しやすい。
GBPUSD about to cancel bearish trend
 
ポンド・米ドルデイリーチャート 1月7日(CET・中央ヨーロッパ時間)

引用元: “GBPUSD about to cancel bearish trend” (2022年1月7日, AXIORY Global Market News)

追記:1月10日、日本時間6:00のポンド・米ドルは、1.3585ドル-1.3593ドルで取引されている

 

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アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


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