強い雇用統計結果受け、米長期金利が急上昇

2022/02/07 6:42 JST投稿

 

【今週の見通し】(2月7日-2月11日)

先週は、中国が旧正月の休暇が続き東京外国為替市場は値動きが出づらい状況だった。また、2月3日に行われた欧州中央銀行(ECB)理事会後のラガルド総裁の会見で、予想外に金融政策の正常化に向けた積極的なタカ派の姿勢が示されて以来ユーロが買われている。ユーロは今週も堅調に推移するものと思われるが、ウクライナ情勢によって急激に値を下げる可能性もあるため動向を注視したい。

さらに2月3日にイングランド銀行(英中央銀行)が2015年以来、約7年ぶりに2会合連続の利上げ決定を発表し、前回の0.25%から0.50%に政策金利を上げ、量的引き締め(QT)を3月から開始することになった。各国が金融政策の正常化に向かっている中で、日本銀行は方向性を示しておらず厳しい状況が続いており、日本のマーケットが閑散としている大きな要因となっている。

今週は、2月10日に米1月消費者物価指数(CPI)が発表予定となっているが、翌日が祝日で休場のため、結果は翌週に反映されるだろう。もし、大幅に予想を上回ると値動きが激しくなるため、注意が必要だ。

予想レートは米ドル・円が114円前半から115円半ば。ユーロ・米ドルが1.10ドル前半から1.13ドル半ばから1.16ドル前半。

なお、2月10日(木)は都合によりマーケットニュースの配信をお休みし、2月11日(金)に再開いたします。ご不便をおかけしますが、何卒ご理解くださいますようお願い申し上げます。
 

【米国】

  • 為替(2月7日6時00分)

 米ドル円(USDJPY)    115.19-115.21 (円)
 ユーロ円(EURJPY)    131.83-131.98 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 1.1450-1.1451 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY)    155.75-155.95 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.3526-1.3536 (米ドル)

2月4日のニューヨーク外国為替市場の主なトピックスは、朝方に1月の雇用統計が発表され、非農業部門雇用者数変化(前月比、結果:46.7万人、予想:15.0万人、前回:19.9万人)が、コロナウイルスの感染拡大やそれに伴う休業があったが予想を大幅に上回る結果となった。さらに平均時給(前月比、結果:0.7%、予想:0.5%、前回:0.6%)が2020年12月以来の大きな増加率となり、前年同月比では5.7%増で、いずれも市場予想を上回る伸びとなり、インフレ懸念がさらに高まっている。この影響により長期金利が1.813%から1.899%に急激に上昇し、2020年1月以来の高水準の1.936%まで上昇した。

米ドル・円(USDJPY)は、114円後半から115円半ばまで値を上げた。朝方は長期金利が1.8%台に低下し、この日の安値114.78円まで安くなったが、強い雇用統計結果に急激に米ドル買いが強まり急激に上昇し、この日の高値115.43円まで買われた。その後は、小幅に売られ115.26円で終えた。

ユーロ・米ドル(EURUSD)は、1.14ドル半ば中心の取引となった。朝方は欧州中央銀行(ECB)の金融政策正常化に向けたラガルド総裁の積極的なタカ派的な発言から、年内の利上げ実施観測が出てユーロ買いが強まり、昨年11月11日以来の高値1.1484ドルまで値を上げた。しかし、強い雇用統計結果を受けた米ドル買いが入り、この日の安値1.1412ドルまで安くなったが、再び買戻しが入り終値は1.1449ドルだった。

ユーロ・円(EURJPY)は、131円半ばから132円前半に値を上げた。米ドル・円と、ユーロ・米ドル両方の動きを受け、方向性が出にくい状況だったが、徐々に買戻しが入り昨年11月4日以来、3カ月ぶりの高値132.09円まで値を上げた。その後は、小幅に値を下げ終値は131.96円となった。
 

  • 株式

 NYダウ平均  USD 35,089.74 -21.42 (-0.06%)
 NASDAQ総合  USD 14,098.007  +219.189 (+1.57%)
 S&P500      USD 4,500.53  +23.09(+0.51%) 

2月4日の米株式市場のダウ工業株30種平均は、連日で前日の終値を下回った。朝方に発表された雇用統計を受け、早期の金融政策への正常化観測の強まりから長期金利が急激に上昇し、警戒感が高まり景気敏感株が売られた。また、前日に好決算を発表したアマゾンが米株式市場での1日当たりの増加幅として過去最大を記録し、午後に大手ハイテク株が買われたことが支えとなった。15時過ぎに220ドル超、前日の終値を上回ったが、急激な長期金利の上昇への警戒感が出て、上昇分を消し去り240ドル超値を下げ、マイナス圏で終えた。

なお、アマゾンの株価は前日比14%高の3,152.79ドルと、2015年4月以来、約7年ぶりに値を上げ終えている。
 

  • 債券

 米国債10年 1.912(+4.37%)
 

  • 商品

 NY原油(WTI) 1バレル=USD 92.31 +2.04(+2.26%)(3月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,807.8  +3.70(+0.21%)(4月渡し)

 

【日本】ラガルド総裁のタカ派的な発言からユーロ買い続く

  • 為替(17時)

2月4日の東京外国為替市場は、欧州中央銀行(ECB)の金融政策正常化に向けたラガルド総裁の積極的なタカ派的な発言からユーロ買いが強まっている。また、この後、米雇用統計の発表を控え、積極的な取引は控えられた。

米ドル・円は114円台後半で推移した。米長期金利が上昇し、この日の高値115.15円まで値を上げたが、雇用統計の発表を控え徐々に売りが優勢となった。その後は、小幅に持ち直し17時時点では115.10円だった。

ユーロ・円も値動きが少なく、131円前半から後半に値を上げた。ECBの早期利上げが見込まれユーロが積極的に買われ、昨年11月以来、約3カ月ぶりの高値132.01円に値を上げる場面もあり、17時時点では131.99円となった。足元では、ウクライナ情勢の懸念もあり、値動きが出やすい一日だった。

ユーロ・米ドルは1.14ドル半ばで推移した。ユーロ・円の動きにつられ、ユーロ買いが優勢だった。欧州勢参加後に、小幅に売られたが持ち直し、17時時点で1.1467ドルとなった。
 

  • 日本株式

 日経平均株価     27,439.99円  +198.68(+0.73%)
  安値27,075.99円  -  高値 27,455.98円
 東証出来高 1,357,65万株
 東証売買代金 3兆3078.33億円
 
2月4日の日経平均株価は終値を上回った。午前中は、米国主要3指数が揃って下落した動きを受け、前日の終値を下回ることが多かったが、午後になると徐々に値を上げた。山際新型コロナ対策担当大臣が国会答弁で水際対策の緩和措置に前向きな姿勢を示したことが好感され、空輸や鉄道株が買われた。決算が好調な企業の株式を買う動きも支えとなり、14時30分前に200円超値を上げ、堅調に推移し終えた。
 

  • 短期金融市場

 無担保コール翌日物金利  -0.018%
 

  • 債券

 国債先物・22年3月限  150.34 (-0.32)
 10年長期金利  0.195%(+0.020)

 

【マーケットアナリティクス】ポンド・米ドル、主要な上値抵抗線付近で失速、米雇用統計待ち(2月4日 12:55 CET)

金曜日にポンド・米ドルは、強気(ブル)が今週の上昇から利益を上げ、ポンドを200ピップスほど上昇させたため、さらに強まった。

木曜日、イングランド銀行(BOE)は事前の予想通り、主要金利を25ベーシスポイント引き上げ、0.5%(50ベーシスポイント)とした。しかし、その後の声明で、4人のBOE金融政策委員会(MPC)メンバーが、0.75%に引き上げる50ベーシスポイントの大幅な引き上げに賛成するという、強気なサプライズがあった。

この決定を受けポンドは上昇し、1.36ドルを上回ったものの、その上昇を維持することができず、金曜日には下落した。

この後、米国の雇用統計が発表されるが、市場関係者は新規雇用者数の著しい減少を予想しており、米ドルを下支えする可能性が高い。

1.36ドルより上に上昇した場合、ポンドが1月に大きく失敗した200日移動平均線(緑のライン※)に向かって上昇する可能性がある。このレベルを抜けた後は、中期的な強気(ブル)相場が復活する可能性もある。

一方、雇用統計の結果を受け米ドル買いになった場合は、下値支持線(サポート)は1.35ドル近辺になると見られる。最近の力強い上昇を考慮すると、短期チャートではポンドは買われすぎているように見える。

一方、日足チャートでは、MACD指標(※1)が強気(ブル)シグナルを発信しており、今後の上昇相場を支える可能性が高い。

(※)50日移動平均線:一定期間(この場合は50日間)の終値の平均値の推移を折れ線グラフで示したもの。相場が上昇傾向にあるのか、下落傾向にあるのかといったトレンドを把握しやすい。 

(※1)MACD(マックディ)指標:「Moving Average Convergence Divergence」の略。相場の分析において過去の値動きから将来の値動きを予想するテクニカル分析の手法の一つ。 一定期間の平均値を線でつなぎ合わせた移動平均線を用い、価格の推移をグラフ化し短期と中長期の移動平均線の動きから早期の売買タイミングを判断するのに用いられる。

GBPUSD Stalls Near Key Resistance, Awaits US Jobs Data

ポンド・米ドルデイリーチャート 2月4日(CET・中央ヨーロッパ時間)

引用元: “GBPUSD Stalls Near Key Resistance, Awaits US Jobs Data” (2022年2月4日, AXIORY Global Market News)

追記:2月7日、日本時間6:00のポンド・米ドルは1.3526-1.3536ドルで取引されている

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アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


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