4月CPI結果や長期金利低下から米ドル売りに

2022/05/12 7:28 JST投稿
 

【米国】

為替(5月12日6時00分)
 米ドル円(USDJPY)    129.96-129.98 (円)
 ユーロ円(EURJPY)    136.64-136.67 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 1.0511-1.0513 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY)    159.14-159.28 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.2247-1.2252 (米ドル)

5月11日のニューヨーク外国為替市場の主なトピックスは、今後の動きを占う指標の一つである4月の米消費者物価指数(CPI)が発表された。前年同期比(結果:8.3%、予想:8.1%、前回:8.5%)は、1981年12月以来、約40年ぶりの水準を更新した前月から縮小したが、予想を上回り高インフレの状況が示された。変動の大きい商品とエネルギーを除くコア指数では前月比(結果:0.6%、予想:0.4%、前回:0.3%)で前回、予想とも上回り、前年比(結果:6.2%、予想:6.0%、前回:6.5%)では予想を下回ったが、まだピークに達しておらずインフレの長期化が示唆された。

この結果発表後にイベントに登場した米アトランタ連銀のボスティック総裁は、「われわれは、もはや緩和策とはならない中立の領域にまで政策金利を引き上げていく」と言明した。「インフレが高過ぎる水準にとどまった場合、私はさらなる行動を支持するだろう。高過ぎる水準とは、当局目標の2%に向けて戻っていかないような状況だ」とも述べている。

また、ダドリー前ニューヨーク連銀総裁は、ブルームバーグ・サーベイランスのインタビューで複数の米金融当局者から経済を軟着陸させ、景気後退(リセッション)入りや失業率の急上昇を回避することは可能との発言が出ていることに対して警告した。「米金融当局は景気を減速させて失業率を押し上げるほど政策を十分に引き締めなければならない。それが求められていることであり、そのことをもっと率直に国民に説明すべきだ」と言及している。

米ドル・円(USDJPY)は、CPI発表直後は予想以上の結果に米ドル買いが強まり130.81円まで急激に値を上げた。長期金利が発表後3.076%に値を上げたが、米連邦準備理事会(FRB)の積極的な金融引き締めが続くと意識されると2.907%に低下した影響から米ドル売りに転じ、この日の安値129.45円まで売られた。その後は、小幅に買戻しが入り終値は129.97円となった。

ユーロ・米ドル(EURUSD)は、米CPIの予想を上回る結果から米ドル買いが強まり、この日の安値1.0502ドルを付けた。しかし、安値が意識されると、この日の高値1.0577ドルまで買い戻された。その後は、ウクライナ情勢の長期化や欧州景気回復への懸念から、再びユーロが売られ終値は1.0513ドルだった。

なお、ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁は講演で、最初の利上げが純資産購入終了の数週間後になるかもしれないと言及し、7月利上げの可能性を示唆している。足元では目標の2%の4倍に迫る高インフレが示されており、7月21日の会合での利上げ決定圧力が強まっている。さらに、ECBのシュナーベル理事は講演で、「インフレ率を過去最高の水準に押し上げた原因の性質が世界的なものだとしても、ECBは対応が必要だ」と主張している。

また、ECB理事会メンバーのナーゲル独連銀(中央銀行)総裁が、ドイツのインフレ率は今年中に7%近くまで上昇するとの見方を示した。

ユーロ・円(EURJPY)は、米CPIの結果を受け、この日の高値137.71円を付けたが、徐々に値を下げた。長期金利の低下や米国株の下落が投資家心理に影響を与えたことが大きく、リスク回避の円買いが入り、この日の安値136.18円を付けた。その後は、小幅に値を戻し136.63円で終えている。

株式
 NYダウ平均  USD 31,834.11 -326.63 (-1.01%)
 NASDAQ総合  USD 11,364.236  -373.435 (-3.18%)
 S&P500      USD  3,935.18  -65.87(-1.64%) 

5月11日の米株式市場のダウ工業株30種平均は、5日連続で前日の終値を下回った。午前中は堅調に推移していたが、CPIの発表を受け6月の連邦公開市場委員会(FOMC)での0.75%の利上げ観測が強まり徐々に売りが強まった。14時直前に300ドル超まで前日の終値を下回り、その後は小幅に買戻しが入り値を上げたが再び下落に転じ、終了直前にこの日の安値まで売られ連日で年初来安値を更新した。

債券
 米国債10年 2.925%(-0.068)

商品
 NY原油(WTI) 1バレル=USD 105.71 +5.95(+5.96%)(6月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,853.7  +12.70(+0.69%)(6月渡し)
 

【日本】CPIの発表控え様子見の姿勢強く

為替(17時)
5月11日の東京外国為替市場の主なトピックスは、4月の米消費者物価指数(CPI)を見極めたいとの思惑から、積極的な取引は控えられた。

米ドル・円は、あまり動きがない展開だった。欧州勢参加後に米長期金利が2.92%台に下落すると、米ドル売りが優勢となり、この日の安値129.89円まで値を下げた。その後は、再び様子見の姿勢となっている。17時時点では129.97円となった。

ユーロ・米ドルは、小動きで推移。大きな動きはなかったが、欧州勢参加後に米長期金利の低下から、米ドルが売られ小幅に値を上げた。17時時点では1.0552ドルだった。

ユーロ・円も、様子見の姿勢が強く小幅な動きにとどまった。米ドル・円の動きにつられ、欧州勢参加後は、徐々に値を下げ17時時点では137.14円となった。

債券
 国債先物・22年6月限  149.32(+0.13)
 10年長期金利  0.245%(変化なし) 

この記事をシェアする
アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


もっと読む
クッキー(Cookie)について: お客様が本ウェブサイトにアクセスする際、セキュリティの確保やお客様に関する情報を取得することを目的に、クッキー(Cookie)を使用する場合があります。 本ウェブサイトにお客様が継続的に訪問する場合、クッキーについて同意することと見なします。またクッキーはいつでも削除することが可能です。
FAQ お問合せ サポートデスク
月曜日-金曜日
9:00-24:00