強いPPIやミシガン大指標から長期金利上昇に

2022/12/12  6:57  JST投稿

【今週の見通し】(12月12日-12月18日)
先週は、米長期金利に左右される動きが中心だった。12月5日に発表された11月ISM非製造業景況指数が予想外に上昇し、弱まっていた米ドル買いへの回帰が見られた。中国のゼロコロナ政策が緩和したこともプラスとなっているため、米ドルの下落は限定的だった。9日に発表された経済指標の強い結果で、金利上昇の長期化観測がさらに強まり長期金利が上昇した。足元では、値動きが出やすい投機筋がユーロを買っているが、戦争の長期化や燃料高による欧州の景気悪化懸念の強まりは根強く、長期的には米ドル・円を中心にする動きに回帰するように思われる。

日本は良くも悪くも金融緩和を続けておりデフレ状態が続き、欧米ほど景気後退は出にくい状況だ。他国に比べ不安定要素も少ないことから安定的な米ドル・円を再びターゲットにすることは十分に考えられる。

今週は、12月14日に発表される米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ幅の縮小は織り込み済みだが、長期金融引き締め観測が強まっており米ドル選考は根強いだろう。もし、金融引き締めの方針を示唆した場合には米ドル売りの可能性が強まる。また、12月13日発表の11月消費者物価コア指数(CPI)で市場予想を下回るとインフレ緩和が意識され米ドル買いは抑制される可能性が強まるため注視したい。FOMC後は一気にクリスマス休暇に向かうことから、今週が今年の山場となるだろう。

主なスケジュール
FRB沈黙期間(ブラックアウト・3日~FOMCまで)

12月12日(月):法人企業景気予想調査(10-12月)、企業物価指数(11月)、EU外相理事会

12月13日(火):独ZEW期待指数(12月)、米消費者物価指数(11月)、FOMC開催(14日まで)、石油輸出国機構(OPEC)月報、英国全国鉄道海運運輸労働組合(RMT)ストライキ実施予定

12月14日(水):日銀短観(10-12月)、鉱工業生産(10月)、英消費者物価指数(11月)、FOMCが政策金利発表、FOMC終了後・パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が記者会見、EU東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議、英国全国鉄道海運運輸労働組合(RMT)ストライキ実施予定

12月15日(木):貿易収支(11月)、中国鉱工業生産指数(11月)、中国小売売上高(11月)、中国新築住宅価格(11月)、政策金利発表(スイス、英、欧州、メキシコ)、ニューヨーク連銀製造業景気指数(12月)、フィラデルフィア連銀製造業景況指数(12月)、米小売売上高(11月)、米鉱工業生産指数(11月)、英中銀・2023年第1四半期の国債売却日程発表、ラガルドECB総裁会見

12月16日(金):製造業/サービス業PMI(日・欧・英・独・米、12月)、ロシア中央銀行が政策金利発表、英国全国鉄道海運運輸労働組合(RMT)ストライキ実施予定

12月17日(土):英国全国鉄道海運運輸労働組合(RMT)ストライキ実施予定

12月18日(日):サッカーFIFAワールドカップ(カタール大会)最終日

予想レートは米ドル・円が132円前半から138円前半。ユーロ・米ドルが1.03ドル半ばから1.07ドル半ば。


【米国】

為替(12月12日6時21分)
 米ドル円(USDJPY)    136.57-136.61 (円)
 ユーロ円(EURJPY)    143.87-143.94 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 1.0532-1.0534 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY)    167.43-167.49 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.2265-1.2273 (米ドル)

12月9日のニューヨーク外国為替市場では、朝方に発表された経済指標で景気後退懸念が和らぎ、長期金利が上昇し米ドル買いが強まった。その後は、週末や来週の11月米消費者物価指数(CPI、13日)、米連邦公開市場委員会(FOMC、13・14日)を控え、様子見の姿勢が強まっている。

まず、11月生産者物価指数(PPI前月比、結果:0.3%、予想:0.2%、前回:0.2%)は予想を上回り、インフレ圧力が根強いことを示した。食品とエネルギーを除くコアPPI(前月比、結果:0.4%、予想:0.2%、前回:0.0%)でも予想を上回り、8月以来で最大となっている。この結果から、米連邦準備理事会(FRB)による利上げが長期化するとの観測が、さらに強まった。また、12月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値(結果:59.1、予想:56.8、前回:56.8)は、予想以上に改善し、10月以来で最高となった。FRBがインフレ期待指標としている1年期待インフレ率速報値(結果:4.6%、予想:3.0%、前回:4.9%)は昨年9月以来の最低を記録し、5-10年期待インフレ率速報値(結果:3.0%、予想:3.0%、前回:3.0%)では、予想通り同じ水準を維持している。これらの結果から景気後退懸念が和らぎ、長期金利が3.55%まで上昇した。長期金利はその後も堅調に上昇し、最終的には3.595%まで上昇している。

金融政策の影響を受けやすい2年債と10年債(長期金利)の利回りは、108日連続で逆転(逆イールド)しており、終値ベースでは2年債が4.342%、10年債が3.586%だった。

米ドル・円(USDJPY)は、朝方は長期金利の低下から安値の135.61円まで値を下げたが、強い経済指標から長期金利が上昇し、高値136.90円まで値を伸ばした。その後は、利益確定売りや様子見の姿勢が強まり、136.56円で終えている。

ユーロ・米ドル(EURUSD)は、朝方は米ドル・円の下落から高値1.0588ドルを付けたが、5日の6月28日以来の高値1.0595ドルが上値抵抗線(レジスタンス)として意識され、利益確定売りに流れた。その後、好調な米経済指標に押されると、安値1.0507ドルまで値を下げるも、小幅に買い戻され終値は1.0540ドルとなった。

ユーロ・円(EURJPY)では、朝方に米ドル・円の下落につられ安値143.17円まで値を下げたが、ユーロ・米ドルと米ドル・円の上昇に押され徐々に値を上げ144.12円まで値を戻した。その後は様子見の姿勢が強まり、終値は143.85円だった。

株式
 NYダウ平均  USD 33,476.46 -305.02(-0.90%)
 NASDAQ総合  USD 11,004.617   -77.386 (-0.69%)
 S&P500      USD  3,934.38  -29.13(-0.73%) 

12月9日の米株式市場のダウ工業株30種平均は4日ぶりに前日の終値を下回った。朝方に発表されたPPIが予想を上回りFRBの利上げ長期化観測がさらに強まった。この影響から長期金利が上昇し、売りが優勢となっている。その後、ミシガン大学消費者信頼感指数の1年期待インフレ率が予想外に低下すると買い戻され、前日の終値を一時的に上回った。しかしながら、再び投資家心理が弱まり、来週発表されるCPIへの警戒も出て、売りに転じると前日の終値を下回り終えている。

債券
米国債10年 3.589%(+0.093)

商品
 NY原油(WTI) 1バレル=USD 71.02 -0.44(-0.62%)(1月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,810.70 +9.20(+0.51%)(2月渡し)
 

【日本】PPIやFOMC控え様子見強まる

為替(17時)
12月9日の東京外国為替市場は、米長期金利の動きに連動しつつ、この後発表されるPPIやFOMCを控え、積極的な取引は控えられた。

米ドル・円は、朝方に決済に向けた米ドル買いが強まり、高値の136.88円まで値を上げた。その後は米長期金利の動きに左右され、安値の135.77円から136.40円まで値を戻し、17時時点では136.35円となった。

ユーロ・米ドルでは、1.05ドル台の狭い値幅での推移となった。朝方に投機筋の買いが入り1.05ドル後半に値を上げた後は、小幅に売られるも再び値を戻し横ばいで推移した。欧州勢参加後に再びユーロが買われると高値の1.0588ドルまで値を戻したものの、買いは続かず小幅に値を下げ17時時点では1.0568ドルで取引されている。

ユーロ・円は、朝方に決済に向けた買いが入り高値144.47円を付けるも、利益確定売りに押され安値の143.66円まで値を下げたが、再び値を上げ17時時点では144.10円となった。

債券
 国債先物・23年3月限  148.43 (+0.25)
 10年長期金利  0.250%(変化なし)

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アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


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